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もう勝てないで終わるかも…中堅選手の初Vを励みに | JLPGAツアー

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もう勝てないで終わるかも…中堅選手の初Vを励みに | JLPGAツアーDAZN
【JLPGAツアー】前週に涙の初優勝を挙げた蛭田みな美。プロ入りから8年目のタイトルは、若手が台頭する女子ゴルフ界で、未勝利の多くの選手らの励みになったはずだ。
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前週の「CAT Ladies2023」でツアー史上254人目の優勝者が誕生した。26歳の蛭田みな美。アマチュア時代に数多くのタイトルを獲得してきたが、プロ入りから8年間で勝利は疎か、シード権を獲得したこともなかった。

試合展開は白熱していた。西郷真央と首位で並んで迎えた最終ラウンドで前半に1打のリードを築く。一進一退のサンデーバックナインで後半16番のバーディーで2打差をつけて勝利目前に迫った。しかし17番で西郷が意地のバーディーを奪い1打差に詰められると、最終18番(パー5)で蛭田が1.5mからまさかの3パット。パーパットは50cm弱だった。

素質はあるのに優勝に届かない。最大の理由はメンタル。観ているギャラリーの大半がそう思っただろう。本人も試合後に「どう打っていいかわからなくなった。平常心で打てなかった」と振り返る。1m以内のクラッチパットが入らないと、勝負を制すのは厳しい。しかし、この日の蛭田はその後に自らのメンタルを立て直した。

プレーオフ1ホール目でティーショットを右ラフへ。嫌な流れは続いたように見えたが、右ラフからの第3打を1mにつける見事なリカバリーショットを放った。バーディーを奪い、勝負を決めると、涙が溢れ出た。試合後「もう勝てないで終わるかもと思った時期もあった」と明かした。

永井花奈や川岸史果と同期になる2016年のプロテスト合格組。一学年下には黄金世代がいる。14年の「日本女子アマチュア選手権」と15年の「日本ジュニア選手権」を制した蛭田は、勝みなみや畑岡奈紗らと日本ゴルフ協会(JGA)のナショナルチームに所属していた。実績は十分でプロに入ったのに、なぜそんな選手がここまで苦しんだのだろうか。

蛭田の歯車が狂ったのはツアールーキーとして戦っていた2017年だという。飛距離アップを図ろうとトレーニングを重ねた結果、身体とスイングのバランスが合わなくなった。アマチュアとプロの最大の違いは、試合間隔の短さだ。毎週のように試合のあるプロは、試合をやりながら修正をしていかないといけず、当時の蛭田も苦悩を明かしていた。

メンタルが左右するゴルフにおいて、ひとたび不調に陥るとそれが焦りとなる。悪循環を生むケースは多い。期待される若手で勝ち星を重ねる選手と、なかなか勝てない選手の違いは何か。かつて、ツアーに帯同するプロコーチは「若い時期に調子が上向きのときにまず勝てるかどうかは大きな分岐点」と語っていた。

もともと繊細で優しい心の持ち主である蛭田の場合は17年に狂った歯車がなかなか噛み合わず、21年にはパターイップスにも苦しんでいたそうだ。前2シーズンの平均パット数は全体で90位前後。ショットは昨季からトレーナーと契約し、飛距離アップに成功した。今年の3月には同期の山内日菜子がQT181位から下剋上優勝を果たした。刺激を十分受け、試行錯誤した結果、このタイトルが獲れたのだろう。

優勝目前に迫りながらタイトルを未だに獲れていない選手はいる。ここ数年で言えば、蛭田の同学年である松田鈴英がそうだ。2度目のプロテストでトップ合格した松田は黄金世代と同期になるが、ツアールーキーの18年シーズンは「いつ優勝してもおかしくない」状態だった。

250ydほどの平均飛距離は魅力でアイアンショットもキレが抜群。グリーン上では不安があったが、それを補っても余りあるほどの力強いショット力を持っていた。夏場から徐々に優勝争いに顔を出した。秋口の「富士通レディース」から3試合連続でトップ5。勝みなみがプロ初優勝を挙げた「大王製紙エリエールレディス」では2位。その前週も首位で出た最終ラウンドで逆転負けを喫していた。

初優勝を挙げれば、19年シーズンは女王争いをするのでは、と思えるほどの快進撃だった。しかし19年は優勝争いから遠ざかり、20年にシード落ち。ドライバーショットが左右に散り、レギュラーツアーの出場権を失った。前出のコーチの言葉通り「調子が上向きのときまず勝てていれば」と思う。

安田祐香も初優勝が待たれる選手だ。22歳と他の競技から見ればまだまだ若いが、山下美夢有や西郷、櫻井心那ら年下選手がツアーをけん引する。今季はキャリアハイとなる安定したシーズンを送っているだけに、待望の初優勝の瞬間を期待しているファンは多いだろう。

松田や安田だけではなく、勝てない時期が続くと焦る気持ちが出てくるものだろう。若手が台頭する女子ゴルフ界は、厳しく過酷な競技となっている。しかし同時に競技生活が長いのもゴルフの特徴だ。期待されても勝てなかった蛭田に26歳で初優勝が訪れたり、無名だった山内が下剋上優勝を果たしたりする。中堅選手である蛭田の初優勝が励みになる選手は、きっと多いはずだ。

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