山下美夢有と岩井明愛と岩井千怜の双子姉妹。ツアーを牽引する3選手は今季たびたび優勝争いで火花を散らしている。
ライバル関係の始まりは、山下が今季初優勝した4月の「富士フイルム・スタジオアリス女子オープン」だ。36ホール短縮競技は首位で最終日を迎えた山下と1打差を追う岩井千怜の激しいマッチレースになった。最終18番、首位に並ぶ2人が残した池越えのセカンドショットの距離は、ほぼ同じ170yd。先に山下が5UTで1.5mにつけたプレッシャーに負けたのか、岩井はバンカーに入れるミスでボギー。山下に軍配が上がり、岩井は「やっぱりスキがない」と脱帽した。
3人を交えた優勝争いは5月の「RKB×三井松島レディス」。母の日と重なる最終日に岩井千怜が7打伸ばすと、山下は6打伸ばす好プレーで応戦した。2人が首位タイで出た岩井明愛に並ぶと、史上初となる双子によるプレーオフも実現した。最終的には岩井千怜が山下にリベンジを達成。母の日に敗れて大会連覇を逃した山下は涙を流した。
しかし山下は惜敗の悔しさをバネにすぐに結果を出した。翌週からの「ブリヂストンレディスオープン」、「リゾートトラストレディス」で連勝。「ブリヂストン」では3日目に首位の岩井明愛をとらえ最終日に独走した。7打差をつける圧勝劇を見せ「リゾートトラスト」も最終日最終組に岩井千怜と入り、山下が完勝した。
しのぎの削り合いは続いた。6月の「宮里藍サントリーレディス」は岩井千怜が初日から首位を守り、山下に5打差をつけ最終日最終組で同組に。72ホールプレーを緩めず、大会記録になる通算23アンダーで優勝した。最終日最終組に山下、岩井明愛、岩井千怜が入ったその翌週の「ニチレイレディス」では今度は山下が競り勝った。母の日に敗れた悔しさを父の日で返した。
彼女ら3選手がしばし優勝争いで激突するが、年間タイトル争いでは開幕戦や最高額大会「アース・モンダミンカップ」を制した元世界ランキング1位の申ジエ(韓国)を加えた4強レースの様相だ。賞金・ポイントランクはともに山下が1位、申が2位、岩井千怜が3位で岩井明愛が4位となっている。
優勝争いの顔ぶれが固定化されている印象のある女子ツアーのシーズン中盤戦だが、プロスポーツが盛り上がるために必要なのがライバル関係だろう。特に個人競技であるゴルフでは、ライバルたちとの”構図”がツアーを盛り上げる。
思えば宮里藍さんの前に立ちはだかったのは、絶対女王として君臨した不動裕理だった。彗星のごとく現れたヒロインに、簡単に勝たせるわけにはいかないというトッププロの矜持がぶつかった。10代で数々の金字塔を打ち立ててきた宮里さんも、不動の牙城を崩せず、ついに賞金女王の夢は叶わなかった。
2009年は横峯さくらと諸見里しのぶの争いが最終戦までもつれた。同年6勝をマークした諸見里が540万円差をつけて賞金ランクトップにいた。有利な状況で迎えた最終戦「リコーカップ」は残酷そのもの。横峯が最終日に5打差を逆転しクラブハウスリーダーに。1打ビハインドで迎えた諸見里の最終18番のバーディトライはわずかにショートした。優勝した横峯に賞金ランクでも逆転を許し、勝敗が決した。
森田理香子と横峯が争った2013年は最終戦を終え、たった130万3411円差で森田が女王に輝いた。
2015年に記録的な強さで女王に輝いたイ・ボミ(韓国)にもライバルがいた。テレサ・ルー(台湾)や申が、最後まで年間タイトルの座を脅かした。シーズン終盤に連勝を飾り、圧倒的に女王に輝いたという印象もあるが、10月の「スタンレーレディス」で優勝した際に、テレサの存在が女王争いの脅威だと母に相談していたと明かした。
イギリスで渋野日向子が海外メジャー制覇を成し遂げた2019年、ライバルとなった鈴木愛は賞金女王の座を譲らなかった。シーズン終盤に鈴木が歴史的な3連勝を成し遂げ、賞金ランクで逆転。史上初となる4連勝を狙った「大王製紙エリエールレディース」で渋野が4連勝を阻み、最終戦まで逆転女王の可能性を残した展開は、多くのファンを魅了したはずだ。
歴史を振り返るとわかるのが、ライバル関係という構図の重要性。次週、山下や岩井姉妹は「全米女子オープン」に乗り込む。海外メジャーでの活躍、さらにシーズン終盤にかけてのバチバチの火花が今シーズンを面白くしてくれそうだ。
関連記事
●父へ涙の感謝 山下美夢有が岩井姉妹に果たしたリベンジV| ニチレイレディス
DAZNについて
DAZNなら好きなスポーツをいつでも、どこでもライブ中継&見逃し配信!今すぐ下の記事をチェックしよう。