笹生優花が見事な1オンに成功した終盤16番(パー4)。大きなフックのラインを描く下りのイーグルパットを放った笹生の姿を、1組後ろで優勝を争った渋野日向子は、16番のティーグランドから付近のモニターを通して見ていた。
この時点で通算4アンダーの笹生に対して、渋野は通算1アンダーにいた。優勝候補の本命と言われたミンジー・リー(オーストラリア)がバックナインで大崩れをし、優勝争いをリードした笹生を米国のアンドレア・リーと渋野が追いかけるという構図だった。
残り3ホールで3打差。奇跡の逆転劇へ可能性はあったが、笹生のこのイーグルパットが決まれば、勝負は事実上決する。慎重にラインに乗せた笹生のパッティングは、カップへ向かって転がったが、勢いが足りない。するとティーグランド上で「もっとカップに寄れ」と言わんばかりに右腕を何度も振る渋野の姿があった。
中継するアナウンサーが「渋野選手も日本勢ということで笹生を応援する…まあ笹生選手が伸ばせば自分がタイトルに届かなくなるという」と言葉にした。解説の岡本綾子も、思わず笑って反応した。背中越しに撮影された自らの腕を振る姿が、モニターに映ると渋野は大笑いした。笹生が2パット目となるバーディーパットをしっかり沈め、渋野がドライバーで1オンを狙う直前の光景だった。
個人種目であるゴルフは、相手選手と直接対峙するわけではない。自らのベストを尽くした末に相手が上回ったスコアを出せば、それを称えるだけ。ましてや過酷なセッティングを戦い抜いた者たちにしかわからない気持ちがあるだろう。
タイガー・ウッズはかつて「相手のパットを『入れ』と思うようにしている。『入るな』と思うと、そこからマイナスの戦いが始まってしまう」という趣旨の発言をしていた。もちろん渋野以外の多くのプロゴルファーが、プレー中に相手選手の好プレーを喜び、ラウンド後に互いの健闘を称えている。
ただ渋野のそのようなシーンが多くクローズアップされるのは、彼女が心の底から相手をリスペクトしているのが伝わるからではないだろうか。自らが優勝した2019年大会で最終日最終組で一緒に回ったアシュリー・ブハイ(南アフリカ)がプレーオフに末に22年大会で優勝した際には、グリーン周りで祝福した。渋野自身も同大会で優勝争いを演じており、プレーオフに進めずに悔しい思いをしていた。ブハイのキャディーを務めていた夫は、渋野のその言動に感動したという。きっとそんな潔く硬派な姿勢が多くの共感を呼ぶのだ。
しばし練習ラウンドをともにし、可愛がる後輩の日本人初となる2度目のメジャー制覇になった。ホールアウト後に笹生のもとに駆け寄った渋野が、笑顔で声をかけた。「マージで強い。おめでとう」。過酷のセッティングをアンダーパーで戦い抜いたのは、この2人だけ。嬉しそうに抱擁した。
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