不安をパフォーマンスではねのけたバックライン
右ではフィジカル勝負で相手のボールを掻っさらった酒井宏樹が吠え、左では粘り強い対応でボールを奪った長友佑都が魂の叫びを発する。中央では吉田麻也と冨安健洋が不在のなかでピッチに立った板倉滉と谷口彰悟が、常に声を掛け合いながら冷静に相手の攻撃を跳ね返して周りを盛り上げる。
グループリーグで首位を走るサウジアラビアを相手に、最後まで水を漏らさぬ鉄壁を形成してクリーンシート。前回の中国戦で初めて組むことになった4バックは、W杯の出場権を得るために負けられなかった強敵との試合で見事にチームに勝利をもたらした。
今年最初となったカタールW杯アジア最終予選。注視されていたのは、主力の吉田と冨安の不在だけではなかった。
昨年の11月遠征では酒井が怪我のために出場しておらず、近年、左サイドバックを務める長友のパフォーマンスも低調。今年一発目の公式戦で最終ラインに不安要素があったことは間違いない。
それでもサウジアラビア戦は、周囲の不安を一蹴する会心の出来を見せることになった。右サイドでは酒井が持ち前の守備力を遺憾なく発揮しただけでなく、伊東純也を生かすための献身的なプレーを披露。先制点につながる伊東へのパスは、チームの狙いだった素早い攻撃を発動させるための起点となった。
左サイドでは「攻撃を停滞させている」と批判の目を向けられていた長友が奮闘した。粘り強い守備からの果敢なオーバーラップ、2点目の起点になるパスなど、前線に多く関わることで攻撃に厚みをもたらすことに成功し、“これぞ長友”の真髄を伝えるようなパフォーマンスだった。試合後、長友は熱い思いを口にしている。
「W杯の時の緊張感と興奮を思い出しました。今日は生きるか死ぬかだなと。今日できなければ、代表に僕自身がいる意味がないなと思っていたので、本当に魂を込めて戦いました。ここまでいろいろな経験をしてきて自分の中で慢心もあったのかなと。一回叩かれて、たくさんの批判をいただいて、もう一回お尻に火をつけてもらった。魂に火をつけてもらった。これをベースにやらないと僕はW杯で勝利に導けないと思いました」
競争の激化で守備陣はより強固に
特に不安視されたCBは、周囲の心配をよそに安定感あるプレーを終始続けた。ビルドアップに長ける二人は、周りの選手との距離感が抜群で、GKやサイドバック、アンカー、インサイドハーフの選手たちと巧みに三角形を作り出して相手のプレッシングを回避。時には鋭い縦パスを入れ、攻撃にスイッチを入れた。
守備に目を向ければ、縦に入ったボールにガツンと体を当ててボールを奪うシーンもあれば、相手のストロングポイントであったサイド攻撃に対してクロスをことごとく跳ね返してピンチを作らせず。ラインが下がってしまった時間帯もあったが、しっかりと声かけをして徐々にラインを押し上げることで終盤は、攻撃の機会すら簡単に与えなかった。
「とにかく集中して、当たり前のことをやり続けようと。声かけのところもそうです。1本でチャンスをものにされる怖さはあった。そこはやられないように常に意識していた」とは板倉の言葉。長友も「彼らの落ち着きに支えられた」と話していたが、最後まで二人が集中を途切らせなかったからこそ、パーフェクトで落ち着いた試合運びを実現させたと言っていい。
もちろん今回の4人だけではなく、中国戦でアシストした中山雄太、今回は出場のなかった山根視来など、レギュラー争いに向けてアピールを続ける選手たちもいる。今回、不在だった吉田と冨安を含め、さらなる競争が生まれたことは間違いない。
次なる3月の遠征ではどんなメンバーが起用されるのか。守備陣の高いレベルでの競争がチームを強くしていく。
文・ 林遼平
埼玉県出身の1987年生まれ。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、フリーランスに転身。サッカー専門新聞「エルゴラッソ」の番記者を経て、現在は様々な媒体で現場の今を伝えている。
W杯アジア最終予選|試合日程・配信/放送予定
W杯アジア最終予選では、日本代表のホームは地上波(テレビ朝日)とDAZNが同時に中継・配信を行うが、アウェイではDAZNが独占配信する。
- 男子FIFAランキング
- 女子FIFAランキング
- サッカー日本代表・U24・女子 | 試合日程・結果・放送予定
- W杯カタール2022アジア最終予選 | 日程・順位・組み合わせ
- W杯カタール2022欧州予選 | 日程結果・順位表・放送予定
DAZNについて
DAZNなら好きなスポーツをいつでも、どこでもライブ中継&見逃し配信!今すぐ下の記事をチェックしよう。