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【トッテナム対リヴァプール展望】深刻な決定力不足の王者と期待値を上回るケイン | プレミアリーグ

田島大
【トッテナム対リヴァプール展望】深刻な決定力不足の王者と期待値を上回るケイン | プレミアリーグ(C)Getty Images
【コラム】1月29日5時キックオフ予定のプレミアリーグ第20節トッテナム対リヴァプール。どちらもトップ4への生き残りを懸けた苦しい状況だが、より厳しいのは深刻な決定力不足に陥っている王者の方か。スパーズには常に期待を上回るストライカーがいる。

ちょうど6週間前、リヴァプールとトッテナムがアンフィールドで激突した大一番は“頂上決戦”だった。

12試合を終えて勝ち点25で首位に並ぶ両者の対戦は、連覇を狙うホームチームが押し込むなか、ジョゼ・モウリーニョ率いるスパーズが必殺カウンターで好機をうかがう名勝負となった。緑の芝に映える鮮やかなユニフォームも相まって、さながら一足早い“紅白歌合戦”のような特別なイベントに思えた。

結局、その大一番を制したリヴァプールが首位でクリスマスを迎え、連覇に向けて視界良好……のはずだった。

あれからわずか6週間、今シーズン2度目の対戦は頂上決戦から一転、トップ4の“サバイバルマッチ”と化している。一体、この6週間で何が起きたというのか?

最近5試合の決定率は「1.1%」

アンフィールドで終了間際に決勝点を奪われたスパーズは、好調レスターにも敗れて連敗を喫すると、その後も取りこぼしがあって消化試合数が少ないとはいえトップ4から転落している。だが、彼らより深刻な状況にあるのがリヴァプールだ。

12月19日に行われた第14節のクリスタルパレス戦で7-0という大勝を収めて首位でクリスマスを過ごして以降、考えられないような不振に陥っている。クリスマス以降、リーグ戦最近5試合に勝利がなく(3分け2敗)、その5試合で1ゴールしか奪えてないのだ。

英放送局『Sky Sports』によると、最近5試合の決定率はリーグワースト。リヴァプールは最近5試合で89本のシュートを放ちながら、決まったのはウェストブロム戦でのサディオ・マネの1点だけ。決定率は見るに堪えない「1.1%」。これでは勝てるはずがない。

例えば、同期間にリーグ3位の「14.6%」という決定率を誇ったスパーズならば、89本のシュートで13点を奪えた計算になる。リヴァプールの不振の原因が決定力不足にあるのは火を見るより明らかだ。

主将ジョーダン・ヘンダーソンは「攻撃陣だけでなくチーム全体の話」と前節のバーンリー戦のマッチデープログラムに記したが、自慢の3トップが計40本もシュートを放ちながら1得点という急ブレーキになっているのは事実だ。

加えて、バーンリー戦では今季プレミアリーグ初先発となったFWディヴォック・オリギが、前半終了間際のゴールキーパーとの一対一を外してしまった。さらにエースのモハメド・サラーも渾身の左足シュートをGKニック・ポープに指先で止められてしまい、ホームでのリーグ戦で69試合ぶりに敗戦を喫したのだ。

しかし、チャンスのレベルを示す「xG(ゴール期待値)」は違う結果を予想していた。バーンリー戦を含め、未勝利が続く最近5試合でも「xG」では対戦相手を上回っており、5連勝は難しくても3~4勝はできたはずなのだ。

今のリヴァプールには僅かなズレが

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無論、彼らが期待値を“裏切る”のは今に始まったことではない。

前述のパレス戦でリヴァプールの「xG」は2.87に過ぎなかったが、南野拓実のゴールを皮切りに7得点した。それどころか昨シーズン、リヴァプールは2位マンチェスター・シティに18ポイント差をつけて30年ぶりのリーグ制覇を果たしたが、「ゴール期待値」を基準にした成績ではシティより12ポイントも劣っていたのだ。

「xG」はチャンスを数値化した参考データに過ぎないが、それでも現実と30ポイントもの差がついたことについて、データ専門家は英紙『The Guardian』で3つの理由を挙げた。リヴァプールは「ミスが少なく」、シティと違って「攻撃の手を緩める時間帯があり」、さらに違いを生み出せる「特別なタレントがいる」そうだ。

たしかに昨季はGKアリソンが神がかり的なセーブでチームを救う場面が何度もあった。前線ではサラーやマネが難しいチャンスを仕留めただけでなく、現在離脱中のフィルジル・ファン・ダイクがセットプレーから5ゴールを奪ったし、オリギのような控え選手も「xG」を超えるゴール数(4点)を決めた。

全てが上手く噛み合ったことで「ゴール期待値」の予想を大きく覆し、見事にリーグ優勝を遂げたのだ。

だが今のリヴァプールには僅かなズレが生じている。バーンリー戦でPKを献上したGKアリソンは少し飛び出しが遅れたように見えるし、前半にはクロスに対して不用意に飛び出してキャッチミスからピンチを招いた。絶対的なDFリーダーであるファン・ダイクの不在がもたらす影響と推察できる。

攻撃面での逸機に関しては、疲労や自信低下のほか、サポーターの重圧がないため敵DFが余裕を持って対応しているといった要因も考えられるだろう。

2シーズン連続で二桁アシストを記録していた右SBトレント・アレクサンダー=アーノルドもクロス精度の低下により今季ここまで2アシストに留まっているが、それだって受け手の問題かもしれない。昨季の優勝がそうだったように、今のスランプも様々な要因が重なった結果なのだ。

先週末に行われたFAカップのマンチェスター・ユナイテッド戦でリヴァプールは約1ヶ月ぶりに複数得点をマークしたが、サラーの1点目がGKディーン・ヘンダーソンの頭部をかすめてネットに吸い込まれるか枠外に飛ぶかは「xG」では計り知れないことだ。そんな数ミリの差だからこそ「攻撃は水物」と呼ばれるのだ。

調子の波とは“ほぼ”無縁のストライカー

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しかし、世の中には調子の波とは“ほぼ”無縁のストライカーもいる。それが2014-15シーズンから数えてプレミアリーグで最多ゴール(152)を決めているスパーズのハリー・ケインである。

シーズン別にゴール期待値を見るとサラーやセルヒオ・アグエロでさえ期待値を下回るシーズンはあるが、ケインに関しては過去7シーズン、一度も「xG」を下回っていないのだ。試合に出続けているストライカーとして唯一無二の快挙である。それは磨き抜かれたキック技術の賜物だし、彼のためにスペースを作り出すソン・フンミンやチームメイトのおかげなのだろう。

「ゴール期待値」はあくまで参考データだが、やはり今回の試合ではそれが気になる。というのも、今季リヴァプールが「xG」で対戦相手を下回った4試合のうち、唯一勝利したのが12月のスパーズ戦(2-1)なのだ。

前回のアンフィールドでの対戦で、終了間際のコーナーキックからフィルミーノに決勝点を許したモウリーニョ監督は「強かったチームが負けた」と言い放った。

負け惜しみに聞こえたが、たしかにサラーの先制弾はDFに当たってコースが変わったゴールだし、スパーズはFWステーフェン・ベルフワインのシュートがポストに嫌われるシーンもあった。そのため「ゴール期待値」はモウリーニョの主張通り、1.22対1.52でスパーズが勝っていたのだ。

今回のトッテナム・ホットスパー・スタジアムでの対戦は、果たしてどんな結果になるのか。

リヴァプールがリーグ戦5試合ぶりにネットを揺らして6試合ぶりの勝利を収めるのか、それともリーグ戦3戦連発中のケインが火を噴くのか。何より、またしても「ゴール期待値」を裏切る結果となるのだろうか。

文・田島 大

「フットボール」と「メディア」ふたつの要素を併せ持つプロフェッショナル集団を目指し集まった『フットメディア』所属。英国在住歴を持つプレミアリーグのエキスパート。

直近のプレミアリーグ試合日程

第20節

開催日キックオフ
(日本時間)
試合
1/27(水)3:00クリスタルパレス vs ウェストハム
1/27(水)3:00ニューカッスル vs リーズ
1/27(水)5:15サウサンプトン vs アーセナル
1/27(水)5:15ウェストブロム vs マンチェスター・シティ
1/28(木)3:00バーンリー vs アストンヴィラ
1/28(木)3:00チェルシー vs ウォルヴァーハンプトン
1/28(木)4:30ブライトン vs フラム
1/28(木)5:15エヴァートン vs レスター
1/28(木)5:15マンチェスター・U vs シェフィールド・U
1/29(金)5:00トッテナム vs リヴァプール

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