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【ロンドンダービー・プレビュー】アーセナルは"ギャップ"を埋めて転機を手繰り寄せられるか。 | アーセナル対チェルシー | プレミアリーグ

田島 大(フットメディア)
【ロンドンダービー・プレビュー】アーセナルは"ギャップ"を埋めて転機を手繰り寄せられるか。 | アーセナル対チェルシー | プレミアリーグ(C)Getty Images
【プレビュー】日本時間27日2時30分キックオフの『ロンドンダービー』直前展望だ。低調アーセナルに対し、上位チェルシーと、両者の"ギャップ"は大きい。"勝利"というクリスマスプレゼントを手にするのはーー。

12月26日、ボクシング・デー(編集部注:イギリスの休日。クリスマスプレゼント箱を開ける日)に開催されるアーセナルとチェルシーによる注目のロンドンダービーは、あまりにも差が開いてしまった両チームの“ギャップ”に注目したい。

片や上位を争い、片や残留争いに巻き込まれそうな危機にある。イングランド屈指の両クラブが対照的な状況に置かれているのだ。

アーセナルとチェルシー、両者の"ギャップ"は大きい

フランク・ランパード体制2年目のチェルシーが上位(※26日時点で5位)につける一方で、アーセナルはプレミアリーグ直近7試合で勝利がなく、現在15位と低迷している。データサイト『Opta』によると、開幕から14節を終えた時点で14ポイントはアーセナルにとって過去46年間での最低成績であり、15位でクリスマスを過ごすのは1982年以降でワースト記録だという。降格圏とはわずか4ポイント差のため、19位ウェストブロムのサム・アラダイス監督に“残留争いのライバル”と呼ばれてしまう始末だ。

そしてトップ4争いを演じるチェルシーとは実に「11ポイント」も差が開いている。これほど差がつくと思い出されるのがロンドンの“地下鉄のアナウンス”だ。

2006年の冬に両者がスタンフォードブリッジで対戦した際、筆者は試合観戦ついでにスタジアムツアーにも参加した。するとチェルシーの職員が、電車とホームの“隙間”を利用者に注意喚起する「Mind the gap(ギャップに気を付けて)」という地下鉄のアナウンスを持ち出して、「あれは我々と敵チームとの勝ち点の“ギャップ”だよ!」と冗談を飛ばしたのだ。その時でも両者の差は10ポイント。今回は既に11ポイントも差がついている……。

勝ち点11差は両者の実力差を表すか?

ポイント差だけを見れば今回のロンドンダービーにおいてアーセナルは劣勢にある。しかし、本当に両者には11ポイントもの実力差があるのだろうか?

チェルシーは前節のウェストハム戦に3-0で勝利して連敗を2で断ち切ったが、内容を考えると決して会心の勝利とは呼べなかった。開始6分にウェストハムのMFデクラン・ライスにネットを揺らされるも、“ちゃんと”VARがオフサイドを確認してくれて命拾い。その後も互角の展開だったが、得意のコーナーキックからDFチアゴ・シウヴァのヘディングで先制点を奪うと、後半には幸運な形で追加点が舞い込んだ。9試合ノーゴールと不振に喘ぐFWティモ・ヴェルナーの力のないシュートが、FWタミー・エイブラハムへの絶妙なラストパスになったのだ。

一方のアーセナルは、前節エヴァートン戦でDFダヴィド・ルイスのシュートがポストに嫌われる不運もあり1-2の惜敗。さらにミッドウィークのEFLカップ準々決勝のマンチェスター・シティ戦では、出場機会を与えられた控えGKアレックス・ルナルソンの致命的なミスによる失点のほか、VARが導入されていない大会のため不運にもオフサイドのゴールを決められ、最終的に1-4の大敗を喫した。

それだけではない。アーセナルはプレミア直近6試合で3名も退場者を出しており、深刻な規律問題を糾弾することもできるが、リーズ戦で敵に頭突きを食らわしたニコラ・ペペの退場以外は少し気の毒にも見えた。

アーセナル首脳陣、監督への疑問符も

無論、全てを“不運”の一言で片付けることはできない。

シティ戦でのGKルナルソンは、今季プレミアの選手として1試合で2つも直接失点に絡むミスを犯した初めて選手だという。その彼を獲得したのは、昨季からテクニカルダイレクターを務めるエドゥが率いる現体制だ。皮肉なことに、昨年2月にクラブ首脳陣との確執によりクラブを去った補強担当のスヴェン・ミスリンタートは母国ドイツでシュトゥットガルトを建て直した功労者として称えられ、先日同クラブとの契約を更新したばかりである。

クラブを去った者といえばウナイ・エメリもいる。昨年解任されたエメリは、現在スペインのビジャレアルを率いて公式戦19試合無敗というクラブ記録を打ち立てている(なかなか久保建英を起用してくれていないが!)。

だから首脳陣にも責任はあるのだが、これだけ結果が出なければミケル・アルテタ監督の手腕を疑問視する声が出るのは当然だ。今季アーセナルはクロス本数がリーグ4位の293本だが、味方に合わない「不正確なクロス」はリーズに次いで2番目に多いのだ。問題は供給側にもあるが、そもそもアーセナルにはクロスに合わせるストライカーがいないのである。

サイドを崩して中央で仕留める理想形に固執し、最短距離でゴールを目指す意識が薄れているように見える。サイド攻撃が得点のため「手段」ではなく「目的」にさえ感じてしまう。それでも敵陣ゴール前で制空権を支配できるストライカーがいれば良いのだが、そのタイプの選手は“今”のガナーズには見当たらない。3年前にFWオリヴィエ・ジルーがロンドンの青いチームへ移籍して以降は……。

11ポイント差=実力差ではない

そんなアーセナルでも、やはりチェルシーと11ポイントも実力差があるとは考えにくい。というのも5カ月前、アーセナルは実際にチェルシーを倒している。不振に陥る前のピエール=エメリク・オーバメヤンの2発でFAカップ決勝を制し、アルテタ政権における初タイトルを獲得したのだ。その後チェルシーが大型補強を敢行したとはいえ、半年も経たずにこれほどの差がつくのはおかしな話だ。

だから内容に関係なく、“転機”となる1勝さえ挙げることができればアーセナルは必ず何かが変わるはず。どんな監督にも“救われた1勝”というものがある。有名な話だが、マンチェスター・Uを26年半も率いた名将アレックス・ファーガソンだって就任4年目に解任の噂があったが、その時はFAカップ準決勝でのマーク・ロビンズの決勝点により首の皮一枚でつながったと言われている。

チェルシーだって第一期ジョゼ・モウリーニョ政権の初戦で、マンチェスター・ユナイテッドに試合を支配されながらもエイドゥル・グジョンセンの1点を守り切って勝利すると、そこから波に乗って半世紀ぶりのリーグ制覇を果たした。その試合にフル出場していたランパードも、昨季チェルシーの監督に就任したあとに一時は矢面に立たされた。昨冬にはリーグ戦5試合で4敗を喫して手腕を疑われることもあったが、クリスマス直前に恩師モウリーニョのトッテナムを敵地で撃破して周囲の雑音を黙らせた。

試合後に着ていたコートを観客席に投げ入れるほどランパードは歓喜、いや安堵した。もしその試合が“名将”を救った一戦として語られる日が来るなら、ランパードにとっての“マーク・ロビンズ”はスパーズ戦で全2ゴールを決めたブラジル人ウィンガーだろう。今季からアーセナルに所属しているウィリアンのことである。

アルテタが運命の人ならば転機は訪れる

そう考えると、アーセナルにだって――もしアルテタが運命の人ならば――必ず転機はやってくる。そして、それが今回の大一番になる可能性だって十分に考え得る。というのもアーセナルはボクシングデーのホームゲームには過去33年間負けておらず、現在9連勝中なのだ。

ミッドウィークのシティ戦のあとアルテタは「毎試合のように色々なハプニングが起きてしまう。次のチェルシー戦で何か変わることを願う」と『BBC』に吐露した。同指揮官の経験値や手腕については賛否あるかもしれないが、どんな苦境に立たされても真摯にメディア対応する姿勢は、四半世紀近くアーセナルを率いたフランス人指揮官を彷彿とさせる。

だからアーセナルは「何かが変わる」と信じてロンドンダービーに臨むだけだ。そして、"小さなスペース"にも飛び込んでくるクリスティアン・プリシッチやメイソン・マウントの仕掛け、さらには"間隙を縫うような"ジョルジーニョのピンポイントパスを封じ込めれば勝機はある。

やはり転機を手繰り寄せるには“ギャップ”を埋めるほかないようだ。

文・田島 大

「フットボール」と「メディア」ふたつの要素を併せ持つプロフェッショナル集団を目指し集まった『フットメディア』所属。英国在住歴を持つプレミアリーグのエキスパート。

DAZN番組表|直近の海外サッカー配信予定

12月27日(日)

配信日時リーグ試合実況・解説
深夜 0:00プレミアリーグアストンヴィラ vs クリスタルパレス 
深夜 0:00プレミアリーグフラム vs サウサンプトン 
深夜 1:00スュペル・リグトラブゾン vs ガラタサライ 
深夜 2:30プレミアリーグアーセナル vs チェルシー解:戸田和幸
実:安井成行
深夜 4:45ベルギーリーグリエージュ vs シント=トロイデン実:原大悟
深夜 5:00プレミアリーグマンチェスター・C vs ニューカッスル解:ベン・メイブリー
実:永田実
深夜 5:00プレミアリーグシェフィールド・U vs エヴァートン 
21:00プレミアリーグリーズ vs バーンリー 
21:30ベルギーリーグアントワープ vs シャルルロワ解:喜田拓也
実:喜谷知純
23:15プレミアリーグウェストハム vs ブライトン 
23:30-2020グローブ・サッカー・アウォーズ 
 
時刻番組名出演者
23:00やべっちスタジアム司:矢部浩之
解:中田浩二
ア:黒木ひかり

12月28日(月)

配信日時リーグ試合実況・解説
深夜 1:30プレミアリーグリヴァプール vs ウェストブロム解:水沼貴史
実:西岡明彦
深夜 2:15ベルギーリーグアンデルレヒト vs ベールスホット 
深夜 4:15プレミアリーグウォルヴァーハンプトン vs トッテナム解:渡邉一平
実:河村太朗

12月29日(火)

配信日時リーグ試合実況・解説
深夜 0:00プレミアリーグクリスタルパレス vs レスター 
深夜 2:30プレミアリーグチェルシー vs アストンヴィラ解:ベン・メイブリー
実:喜谷知純
深夜 5:00プレミアリーグエヴァートン vs マンチェスター・C解:川勝良一
実:下田恒幸

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