「もっと深みを取るようなプレーを見せてほしい。ゴール前、最後の数メートルで大胆になってほしいんだ」
マジョルカ監督のルイス・ガルシア・プラサが久保建英に求めるものは明確だ。
次の金曜(日本時間28日3:00)に行われるエスパニョール戦、日本人選手は彼の要求に応えるための新たなチャンスを手にする。自分がチームの攻撃を引っ張れるだけの存在であると示すためのチャンスを。
スペインでよく言う「違いをつくる選手」は、中小クラブであれば大抵1~2選手を擁しているくらいだ。
マジョルカは久保がその役割を果たすことを期待して、彼がレアル・マドリーで受け取る200万ユーロという高額な年俸を負担する覚悟を固めた。同年俸はもちろん、マジョルカ内では最も高い額となる。
この日本人はまだ20歳で、結果を求めるのは尚早という意見も少なからずあるが、しかし言い訳ができる状況にもない。
ガルシア・プラサから攻撃の中心になることを期待される久保は、これまでにも示してきた才能と意思の強さでもって、その役割を見事に務め上げなければならない。来季、レアル・マドリーでプレーすることを目標としているならば、当たり前の試練だろう。
第2節アラベス戦、初先発を果たした久保は1トップのアブドン・プラッツの後方でプレー。ガルシア・プラサは2年前にマジョルカを率いていたビセンテ・モレノとは異なり、彼をサイドハーフではなくトップ下で起用していく考えを示した。
その狙いは相手ペナルティーエリアの近くで、できる限り多くの攻撃的選手と連係させること、またサイドハーフよりもアップダウンを減らして守備の負担を軽減させることにある。試合終盤、ボールを持った久保の決断が鈍らないようにするためにも、賢明な判断かもしれない。
対戦相手を指揮するのは久保の恩師
今回のマジョルカ対エスパニョールは多く見所がある。
まず挙げられるのは、昨季ラ・リーガ2部で優勝を争った2チームの対戦ということ。最終節でポンフェラディーナと対戦したマジョルカはその手でトロフィーに触れていたが、試合終了間際に2-2とされて勝ち点82で並んだエスパニョールに得失点差で優勝を許してしまった。
加えて現在エスパニョールを指揮するのは、マジョルカ前監督のビセンテ・モレノである。
彼はマジョルカをラ・リーガ2部Bから1部まで導いてサポーターのアイドルとなったが、わずか1シーズンで2部に降格すると契約を残したまま裏口から出ていき、そのままエスパニョールの監督になった。マジョルカのサポーターは彼に見捨てられた、裏切られたと感じており、今回の一戦ではブーイングを浴びせるだろう。どん底にあったクラブを救った人物であるのは間違いないのだが……、フットボールはやはり、今、この時にしかないのだ。
モレノはマジョルカ本拠地ソン・モッシュで行われるこの試合で、多くの戦友と再開することになる。
レイナ、ヴァルイェント、サルバ・セビージャ、そして久保……。モレノはラ・リーガ1部に初めて挑戦した当時18歳の彼を主力とするまで、ずいぶんと時間をかけている。
久保はサイドを主戦場としてサイドバックをサポートする義務を背負ったが、いつも相手ゴールを意識していたために完全に遂行していたとは言い難かった。しかしマジョルカのほか、ビジャレアル、ヘタフェで積んできた経験は今季に生きるはずであり、トップ下に位置することで攻撃面でのさらなる貢献も期待される。
久保はマジョルカ島、クラブのサポーター、チームメート、スタジアム、練習場のすべてを見知っており、適応するための時間は必要ない。ただボールのこと、最高のタケ・クボを引き出すことだけを考えればいい。
モレノ率いるエスパニョールとの試合は、自分がマジョルカを引っ張り、今度こそ1部残留を果たさせる存在になると示す良い機会になるだろう。
文/セバスティア・アドロベル(Sebastia Adrover)、マジョルカ地方紙『ディアリオ・デ・マジョルカ』
翻訳・加筆・構成/ 江間慎一郎
1983年生まれ。東京出身。携帯サッカーサイトの編集職を務めた後にフリーのサッカージャーナリスト・翻訳家となり、スペインのマドリードを拠点に活動する。 寄稿する媒体は「GOAL」「フットボール批評」「フットボールチャンネル」「スポニチ」「Number」など。文学的アプローチを特徴とする独創性が際立つ記事を執筆、翻訳している。
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