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【連載】ユヴェントスのサッカーはまるで10年前のような時代遅れのもの | 元日本代表監督アルベルト・ザッケローニのセリエA探究 第26回

【連載】ユヴェントスのサッカーはまるで10年前のような時代遅れのもの | 元日本代表監督アルベルト・ザッケローニのセリエA探究 第26回(C)Getty images
【欧州・海外サッカー】元日本代表監督のアルベルト・ザッケローニ氏がセリエAを掘り下げるインタビュー連載。今回はナポリ、ミラン、インテル、そして首位争いに絡めないユヴェントスの今に迫る。

ゴールゲッター離脱の心配はない

セリエAの首位を争うナポリとミランが前節(第13節)、ともに今季初黒星を喫しましたね。両チームは12節も勝点3をつかめなかった(引き分け)ので、3位インテルとの差がグッと縮まりました。その差、わずか4ポイントです。

「ナポリ、ミランは失速傾向にあるのでは?」

早くもそんな声がちらほら聞こえてきますが、決してそうは思いません。今後のスクデット争いもナポリ、ミランを中心に繰り広げられていくのではないか。ここまでの両チームの戦いぶり、そして他チームとの比較からも、私はそう確信しています。

もちろん、今シーズンのセリエAはまだ13節が終わったばかり。先は長いです。シーズンの幕が下りる来年5月まで、まだまだいろんなドラマが待ち受けているでしょう。

では、勝点で並ぶナポリとミランの最近の戦いぶりはどうか。順に見ていきましょう。

まずは得失点差で首位に立つナポリから。初黒星を喫した相手は、ジワジワと差を詰めてきていたインテルでしたね。舞台は相手の本拠地サン・シーロ(ジュゼッペ・メアッツァ)。そういった条件からも、敗戦に大きな驚きはありませんでした。

むしろ試合後に心配されたのは、2-3というスコア。それまでの12試合でわずか4失点だったDF陣が、90分間で3度もゴールを割られたわけですから。

ただ、それも長いシーズンでは起こり得ること。私が考えるナポリの問題点は、他にあります。チームが首位に居続けることに慣れていない点です。

ここ数シーズン、必ず上位争いを繰り広げてきたナポリ。ですが、序盤から首位を走る今シーズンのような状況は、それこそディエゴ・マラドーナがいた1990年代前半以来になります。

ファンが熱狂的で有名な地元ナポリでの期待はもちろん、首位に立っていることで、イタリア全土での注目度も増しています。選手たちがかつてない重圧がのしかかっていても、なんら不思議ではありません。

もっとも、決してプレー内容が悪いわけではありませんから、心配はないですね。なによりベンチには、ルチアーノ・スパレッティという素晴らしい監督が座っています。そんな彼に率いられたチームは、しっかりと機能していますよ。

繰り返しになりますが、今もっとも重要なことは首位にいるプレッシャーに慣れること。強いて問題点を挙げれば、インテル戦で負傷し、しばらくの戦線離脱が予想されるヴィクター・オシムヘンの穴をどう埋めるか。

ただ、さほど心配はないでしょう。ナポリ最大の強みは何と言っても中盤、そして強固な最終ラインですから。ナイジェリア人のゴールゲッター不在も、それほど大きな問題にはならないはずです。

ミランはトップ下の補強が急務

2021-09-21-Brahim Diaz-Milan

さて、ミランを見ていきましょう。彼らが初黒星を喫した相手は、フィオレンティーナでした。敵地アルテミオ・フランキで3-4という壮絶な打ち合い末に敗れました。

そのスコアから見ても、ナポリ同様に「問題点は守備?」と推測される方は多いでしょう。たしかに、それも1つの要因です。ミランのDF陣は今、半数近い選手が負傷離脱中ですからね。

ステファノ・ピオリ監督はそんななか、なんとかやり繰りしています。

最終ラインというものは、精密に設計された時計のように機能しなければいけないセクションです。毎試合、顔ぶれが変わっていては機能するものもしません。それでも持ち堪えているピオリは、本当に良くやっていると思いますよ。ケガ人が戻ってくればある程度、改善されるでしょう。

ミランの抱えている問題は、実は守備ではありません。トップ下です。現在ブライム・ディアスが務めているポジションですね。

レアル・マドリードからのレンタルを延長して残留した今シーズン、ブライムは背番号10を託されました。22歳のスペイン人MFで、技術は申し分がない。聞こえてくる評判も決して悪くありません。ただ個人的には、今のミランのトップ下にはもう少しフィジカルに優れたタイプが適切、いや必要だと考えています。

というのもブライムは試合中、消えている時間があまりにも多い。プレーに継続性がまったくないんです。おそらく運動量が足りないのでしょう。攻撃の軸となるべきトップ下が消える。当然、大問題です。

本気でスクデットを獲得したければ、ミランはトップ下の補強を急ぐべきでしょうね。

ナポリ、ミランの2チームに加え、連覇を狙う王者にも優勝のチャンスがあります。そのインテルには他チームにない、ある武器がありますしね。

それは昨シーズンで得た「自信」です。たしかに、チームを11年ぶりのリーグ優勝に導いた指揮官のアントニオ・コンテ(現トッテナム監督)はチームを去りました。

ただ、DFラインの顔ぶれは昨シーズンのまま。中盤もしかり。アタッカー陣に関しても、ロメル・ルカク(現チェルシー)の退団で生じた穴を、ローマから加入したエディン・ジェコがしっかり埋めています。

ラツィオから加入したホアキン・コレアも徐々にフィットしてきましたね。27歳のこのアルゼンチン人は、攻撃にさらなるバリエーションを加えています。

シモーネ・インザーギ監督には、連覇を狙えるだけの手駒が十分に揃っている。間違いなくそう言えますよ。

攻撃の引き出しが少なすぎる

2021-0926-Massimiliano-Allegri

優勝争いはナポリ、ミラン、そしてインテルの三つ巴になる。これが現時点での私の予想です。他に候補は見当たりません。

「あれ、ユヴェントスは?」

そう疑問に思う方もいるはずです。残念ながら、ユーヴェは今シーズンも最後まで厳しい戦いを強いられるでしょう。13節終了時で首位との勝点差11。このビハインドも大きいですが、理由は決してそれだけではありません。

なによりの問題は、ユーヴェの試合内容。相手に読まれやすいプレーばかりしているのです。つまり、対戦相手は分析と対策さえ怠らなければ、勝つチャンスが十分にあるということ。

なにより攻撃の引き出しが少なすぎます。従って勝点3を奪うには少ないチャンスをものにして、守り切る。言ってしまえば、それしかないんです。

実際、今のチームは自陣に引いて4-5-1を形成し、後ろを固めてカウンターを繰り出す堅守速攻が主体。いわゆるカテナチオ(カテナッチョ)です。

厳しい言い方になりますが、マックス(マッシミリアーノ・アッレグリ監督の愛称)のサッカーはまるで10年前のような時代遅れのもの。チームの骨組みがしっかりするまでは、このような戦い方で勝点を拾っていく算段でしょう。

決定力不足が指摘されている攻撃陣は、本当に深刻な状態ですよ。試合を観れば、一目瞭然です。攻撃時にボックス内に入り込んでくる選手がほとんどいないんですから。ゴール前で構えているのは1トップのアルバロ・モラタだけ。そういったシーンがほとんどです。

本来なら、近距離でモラタをサポートすべきパウロ・ディバラは、ボールを受けに低い位置に下がってしまう。それでモラタに確実にボールが供給されればいいです。ただ、そう簡単にはいきませんね。

モラタが相手のDF陣に囲まれていたら、ディバラは誰にパスを供給すれば良いのか。私が言わんとすることはもうお分かりですね。

ユーヴェの総得点はわずか18。ボローニャ、エンポリ、サッスオーロでさえ、より多くの得点を決めているんですよ。こんな状況、過去にも記憶がありませんよ。

このチーム状況を踏まえ、ユーヴェは1月に再開する移籍マーケットでどういった動きを見せるのか。巻き返しへの大きなポイントとなりそうですね。

インタビュー:アルベルト・コスタ
翻訳・構成: 垣内一之

訳者プロフィール/1998年にイタリアに移住し、約8年間、中田英寿、中村俊輔、柳沢敦ら日本人選手を中心にセリエAを取材。2006年のドイツ・ワールドカップ後に帰国し、現在は日本代表、Jリーグを中心に取材を続けている。

配信情報

セリエA第14節
ユヴェントス対アタランタ

  • 配信: DAZN
  • 配信開始:11月28日(日)2:00
  • 実況:中村義昭
  • 会場:アリアンツ・スタジアム

アルベルト・ザッケローニのセリエA探究

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