「メッシが来たってなにも変わらない」
「リヴァプールがチアゴ・アルカンタラ(現バイエルン・ミュンヘン)を獲得できれば、昨シーズンと同じ結果になるんじゃないかな。仮にバルセロナからリオネル・メッシがマンチェスター・シティにやって来たってなにも変わらないさ。リヴァプールは強いよ」
マンチェスター・ユナイテッドで一世を風靡したウェイン・ルーニーが、2020-21シーズンのプレミアリーグに少しだけ触った。あのメッシをもってしても勢力分布図を書き換えるのは難しい。なぜならリヴァプールのスカッドは、世界でもトップクラスの実力者揃いだからだ。
したがってルーニーが指摘したように、選手の質に若干の不安を抱える中盤インサイドにチアゴのようなタレントを手に入れさえすれば、シティがメッシを、マンチェスター・ユナイテッドがジェイドン・サンチョ(現ドルトムント)を補強したとしても、その差が簡単に縮まるとは思えない。
ティモ・ヴェルナー、ベン・チルウェル、チアゴ・シウヴァといった即戦力候補を手中に収めたチェルシーも、リヴァプールのような練度を身に着けるには1~2年ほどかかるだろう。優勝候補の一角には推しがたい。
コミュニティシールドで問題は見当たらず
現地時間8月29日に行われたアーセナルとのコミュニティシールドでも、リヴァプールに大きな問題は見当たらなかった。PK戦の末に4-5で敗れたとはいえ、試合内容では圧倒していた。
ユルゲン・クロップ監督が指摘した「ファイナルサードの運動量が不足していた」も、プレミアリーグ開幕を2週間後に控えた時点の動きとしては及第点といって差し支えない。
ロベルト・フィルミーノ、フィルジル・ファン・ダイク、サディオ・マネ、モハメド・サラーが揃って年齢的ピークを迎える。
集中力の高さで同点ゴールを決め、PK戦ではど真ん中に蹴る度胸を見せた南野拓実は、激しい生存競争で大きく一歩前に出た。フィルミーノのバックアップか、中盤左インサイドのレギュラーか、いずれにせよ、昨シーズンよりも出番は増えるに違いない。
いま、リヴァプールは非常に充実している。今シーズンも優勝候補筆頭だ。
シティにプラスアルファがなければ…
FAカップに続いてコミュニティシールドも制したとはいえ、アーセナルは選手の質に大きすぎる不安がある。トッテナムは最終ラインが質量ともに不足しており、ユナイテッドのオーレ・グンナー・スールシャール監督は、試合の流れがまったく読めないド素人だ。そしてチェルシーは、前述したように1~2年後の本命だ。
やはり二番手はシティだろう。とはいえ、噂のメッシではなく、アイメリク・ラポルトの相棒(センターバック)と左サイドバックに即戦力を獲得できれば、の話である。
この2つのポジションは計算できない。CBナタン・アケをボーンマスから手に入れたが、ジョゼップ・グアルディオラ監督の高度なポゼッションに即フィットできるとは考えにくいからだ。
CBのジョン・ストーンズとニコラス・オタメンディ、左SBのバンジャマン・メンディとオレクサンデル・ジンチェンコはグアルディオラ監督の信頼を著しく損ね、安定感にも乏しい。彼らを使わらざるをえない状況に追い込まれると、リヴァプールとの差を縮めるのは至難の業だ。
昨シーズン、シティはリヴァプールに18ポイント差の2位に終わっている。敗因の1つとして、左SBとCBの低質が挙げられた。本稿執筆時点で、一線級の獲得、いやいや、交渉の事実すら存在しない。
仮にシティにプラスアルファがもたらされなかったとしよう。今シーズンもリヴァプールが走る。それはそれは走りまくる。
まさか一強の時代? 冗談じゃないし、面白くもない。
文・粕谷秀樹
1994年、日本スポーツ企画出版社刊の『ワールドサッカーダイジェスト』編集長に就任。その後、同社の編集局次長を務め、01年に独立。以降、プレミアリーグやチャンピオンズリーグ、情報番組、さらに月平均15本のコラムでも、エッジの利いた発信を続ける。東京・下北沢生まれ。
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