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セリエA

【連載】ジュゼッペ・ベルゴミが厳選「2020-21シーズンのサプライズ選手」| イタリアサッカー界の重鎮が登壇「カルチョS級講座」第15回

【連載】ジュゼッペ・ベルゴミが厳選「2020-21シーズンのサプライズ選手」| イタリアサッカー界の重鎮が登壇「カルチョS級講座」第15回(C)Getty Images
【インタビュー】元イタリア代表DFにして、インテルのバンティエラとして知られるジュゼッペ・ベルゴミ氏が再登壇。2020-21シーズンのセリエAで良い驚きを提供した5人のプレーヤーを選出する。

インテルのバンディエラとして鳴らした元イタリア代表DFが再登壇。以前「CB考察」で熱弁を振るったジュゼッペ・ベルゴミだ。

57歳となった現在は、主にテレビ中継の解説者として活躍。現役時代と変わらぬ鋭い視点と分析で、目の肥えた視聴者からも高い評価を得ている。

そんなイタリアサッカー史に燦然と輝くレジェンドが、終盤戦に差し掛かった今シーズンのセリエAを振り返る。試みたのは「サプライズ」を起こした成長株5人の選出だ。

身のこなしが軽やかな長身CF

サプライズを起こした選手の選出。これは、正直いってなかなか悩ましい作業だよ。今シーズン台頭した選手は、何も若手に限った話ではない、と私は思っている。

ということで、まずは29歳と決して若くない選手を選んでみた。

クロトーネの"シミー"ことシメオン・トクチュ・ヌワンコ。ナイジェリア代表歴のあるセンターフォワードだ。

クロトーネに加入したのは2016年7月で、最初の2シーズンはセリエAでプレーした。当時はそれほど目立った活躍ができなかったが、今シーズンは見違えるような選手に変貌を遂げている。

彼のプレーを観てまず驚くのは、2メートル近い身長(公称198cm)がありながら、身のこなしがとても軽やかな点だ。

実際、フィジカルというよりテクニックを全面に押し出したプレーが彼の特徴で、高さを生かしたヘディングより、足下の技術の方が優れている。そんな印象さえ受けるほどだ。

足下の優れた技術を生かし、しっかりボールを収める。前線でタメを作れる彼の存在は、クロトーネにとって大きいよ。

ここまですでに19得点と、今シーズンは決定力にも一段と磨きがかかったね。

セリエB降格がほぼ確実なチームにあって、これほどの数字を残すのは決して容易ではない。クロトーネが降格しても、彼自身はセリエAの舞台にとどまるんじゃないかな。

そう、どこか重要なチームに引き抜かれることになるだろうね。今シーズンの活躍を考えれば、少なくとも私はそう断言できるな。

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インテルの絶対不可欠な存在

2人目はミッドフィルダーから選出したい。というのも、今シーズンはミッドフィルダーの台頭がとくに目立ったからだ。

なかでも際立っていたのが、ニコロ・バレッラ。11シーズンぶりのスクデット獲得へ首位を走るインテルのキープレーヤーだね。

「バレッラ? 昨シーズンも活躍していたでしょ?」

そんな声も聞こえてくるね。ごもっともな突っ込みだが、私個人の感想では、バレッラは今シーズン、さらに一皮むけた印象だ。

昨シーズンまでは「良い選手」止まりだった。だが今シーズンは「インターナショナルレベル」へともう一段階グレードを高めた。

以前までカッとなってイエローカードをもらうラフプレーが散見されたが、今はそういった無駄なプレーも払しょくされたね。

そういった気性面でも、成長の一途をうかがい知れることができるよ。

自分の中でプレッシャーをうまく消化できるようになったんだろう。今は本当に落ち着き払ったプレーを見せている。

インテルにとってもはや絶対不可欠な存在となった。あえて注文を付けるとすれば、もっとゴール数を増やして欲しい。それくらいかな。

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3人目はフィオレンティーナのドゥシャン・ヴラホヴィッチだ。21歳のこのセルビア代表フォワードは今シーズン、真のプレーヤーへと成長した。

真価を発揮しはじめた理由としては、昨年11月に監督に就任した(チェーザレ)プランデッリの存在が大きかったのではないかな。

プランデッリは3月に辞任してすでにチームを離れたが、在籍時はヴラホヴィッチを不動のレギュラーとして起用していた。

それまでのヴラホヴィッチと言えば、スタメンとベンチを繰り返す日々。継続的にプレーできない苦しい時期を過ごしていた。

もともと能力の高さには定評があった彼だが、スタメンに定着できていなかった頃は当然ながら、チームからの信頼を感じられなかっただろう。

ところがプランデッリに全幅の信頼を寄せられ、継続的にプレーするチャンスを得た。そのことで一気にブレークを果たしたね。

彼は強靱なフィジカルとテクニックを生かし、ゴールを量産できるタイプのアタッカー。空中戦に強く、闘争心も素晴らしい。そして何より強烈な左足を持っている。

すでにミランなど多くのビッグクラブが獲得に興味を示していると聞いているよ。将来が楽しみなプレーヤーの1人だ。

デストロには思い入れがある

4人目には、アタランタのマッテオ・ペッシーナを。バレッラと同じ1997年生まれの24歳で、ポジションも同じミッドフィルダーだ。

私が彼を選出した理由はシンプルだ。周知のとおり、アタランタはこの1月、キャプテン経験のあるアレハンドロ・ゴメスをセビージャに手放した。

原因は監督であるジャンピエロ・ガスペリーニとの確執だったと言われている。

ただその大胆な放出劇の裏には、成長著しいペッシーナの存在があったからだとも感じている。

おそらくだが、クラブはペッシーナにプレーする機会をより多く与えたかったのだろう。

ペッシーナはゴメスと同じトップ下の選手。前線にもタイミング良く走り込め、さらに守備でもカバーリングを決して怠らない。

まさに現代サッカーに適したモダンプレーヤーだ。今やアタランタで攻守のバランサーとして大きな存在感を見せているね。

面識はないが、ロッカールームでも重要な役割を果たしていると聞いているよ。

想像するに、強いパーソナリティーの持ち主なんだろう。彼も将来が楽しみな選手の1人だ。

最後の1人として、ジェノアのマッティア・デストロを挙げたい。イタリア代表歴もある30歳のストライカーだ。

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実は、彼のことは14歳のときから知っている。私の古巣であるインテルの下部組織に所属していたからね。

彼はその頃、将来を嘱望されるタレントだった。ただ残念なことに、プロとなってからはなかなか芽が出なかった。

決して悪いキャリアを過ごしてきたわけではない。ローマ、ミランといったビッグクラブでプレーした経験も持っているわけだからね。

それでも真価を発揮することはかなわず、徐々に道を踏み外してしまった。正直に言うと、私も「あ、もう無理かな。このまま消えてしまうのかな」とさえ思ったよ。

ところが這い上がってきたね。今シーズンのジェノアで、彼は再び脚光を浴びる存在になったんだ。

インテル出身ということもあり、個人的に思い入れのある選手だ。だから、ようやく真価を発揮し始めた彼のプレーを見ると、うれしさがこみ上げてくるね。

また今の時代、そんな彼の姿に勇気をもらう人も多いのではないだろうか。

今シーズンはここまで11ゴール。年齢的にもまだまだいける年だし、彼にはさらに上を目指してもらいたい、と心から願っているよ。

インタビュー:アルベルト・コスタ
翻訳・構成:垣内一之

訳者プロフィール/1998年にイタリアに移住し、約8年間、中田英寿、中村俊輔、柳沢敦ら日本人選手を中心にセリエAを取材。2006年のドイツ・ワールドカップ後に帰国し、現在は日本代表、Jリーグを中心に取材を続けている。

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