【1位】スフェン・ボトマン(リール|20歳)
2020-2021シーズンからリーグアンでプレーするオランダ代表CB。9歳からアヤックスのアカデミーで育ち、昨季はローン先のヘーレンフェーンで経験を積んだ。
同胞である フィルジル・ファン・ダイク ( リヴァプール )の大ファンで、193cmの上背と堂々たるフィジカルは、その憧れの存在にもひけを取らない。
大型選手ゆえのアジリティ不足は否めないが、空中戦と対人守備の強さは抜群。リールのゴール前に大きな壁を築き、昨年12月のパリ・サンジェルマン(PSG)戦で完封に貢献した。
リールを率いるクリストフ・ガルティエ監督は教え子をこう称している。
「他のアヤックスアカデミー出身選手と同様に、非常にいいフットボール教育を受けている。言葉の壁があるにもかかわらず、すぐにフィットした」
ボトマンを語るうえで、もう一つ触れておくべきは元ポルトガル代表のCBジョゼ・フォンテの存在だ。リールの主将を務めるこの37歳は、若手CBを育てるコーチの役割も担っている。
『The Ligue1 Show』で「フォンテは試合でも、ピッチ外でも、僕を大いに助けてくれる。とても重要な存在なんだ」と語ったボトマンは、大ベテランの危機察知能力やカバーリングから多くを学んでいることだろう。
フォンテと昨季CBを組んだ ガブリエウ・マガリャンイス は アーセナル へとステップアップ移籍した。その後釜として十分すぎる働きを見せているボトマンの未来は明るい。
【2位】モハメド・シマカン(ストラスブール|20歳)
ストラスブールアカデミー出身のフランスU-20代表で、右SBとCBをこなす守備のマルチロール。ギニアにルーツを持つ。
2019年7月のUEFAヨーロッパリーグ予選2回戦マッカビ・ハイファ戦でトップデビューし、抜群の身体能力を駆使した守備力で話題になった。
いわゆる無理が利くタイプで、スプリントや跳躍のひと伸びを活かし、周囲が諦めかけたシーンを救ってみせる。ストラスブールは昨年末のPSG戦で4失点を喫したが、シマカンの守る右サイドに大きな破綻はなかった。
見応えがあったのはキリアン・エンバペとのデュエル。そのフランス代表FWがスピードで振り切ろうとしても、切り返しで破ろうとしても、シマカンはついて行った。エンバペはベストコンディションではなかったが、超逸材を完全に封じたシマカンの株はさらに上がったと言っていい。
実はこのシマカンを巡り、ストラスブールとミランの交渉がかなり進んでいる。昨夏こそディール成立に至らなかったが、今冬も水面下で接触しており、イタリア方面から「あとは移籍金の額だ」という報道が出ている。
シマカン自身のポテンシャルに疑いの余地はないが、ストラスブールはチームとしての守備組織の整備ができていない印象がある。セリエAに移った時、組織的な部分をいかに消化するかが大きな飛躍のカギとなるだろう。
【3位】アルノー・カリミュアンド・ムアンガ(RCランス|18歳)
パリ近郊生まれだが、コンゴ系の血を引くFWだ。PSGアカデミーで育ち、2019年のU-17ワールドカップで7試合5得点を挙げ、UEFAユースリーグでの実績も持つ。
受け手にも出し手にもなれる万能型で、特筆すべきは裏抜けの技術だ。後方からのスルーパスに対し、DFを背負いながら自分の身体を上手く使ってターンする。さらにはクロスに点で合わせるのも上手く、シュートの精度も高い。
将来性を高く買われ、2020年10月にPSGと4年契約を結んだ。しかし、分厚い攻撃陣を誇るフランス王者で多くの出場機会を得るのは容易ではなく、契約直後にRCランスへのローン移籍(1シーズン)を決断した。「出場時間を求めてこの選択をした」とは本人の言葉だ。
そして、その選択は「吉」と出た。フランク・エーズ監督が志向する攻撃的なサッカーが機能し、リーグアンの台風の目となっているRCランスで存在感を示せているからだ。
13節レンヌ戦で決めた先制点は、元チェルシーのガエル・カクタからのスルーパスに抜け出す、カリミュアンドらしさが詰まったゴール。手元の資料では右利きだが、左足のシュート精度も高く、そのゴールシーンでも正確にファーポストを打ち抜いていた。
質の高い動き出しと多彩なフィニッシュパターンを誇り、DFにとっては厄介極まりない。
【4位】ソフィアヌ・ディオプ(モナコ|20歳)
セネガル人の父とモロッコ人の母を持ち、レンヌのアカデミーで研鑽を積んだ。2018年夏からモナコに在籍し、生まれ育ったフランスの年代別代表に継続招集されている。
主に2列目でプレーするこの攻撃的MFの長所は右足のパスセンス。柔らかいボールと鋭いスルーパスを駆使し、狭いエリアをこじ開けて決定機を作る。
昨季はリーグドゥ(2部)のソショーで武者修行を積み、モナコ復帰1年目の今シーズンに大きく飛躍。小柄で華奢な若者が、モネガスクの心をがっちりつかんでいる。
175cm・65kgのサイズを補う武器は2つある。1つはプレーの緩急。傑出したスプリント力を備えるわけではないが、相手が寄せるタイミングを見極め、その瞬間一気に加速するのが上手い。リーグアンの屈強な守備陣をチェンジオブペースで翻弄するのだ。
その能力は守備でも発揮され、ボールホルダーのトラップが少しでも乱れると、そこで一気に寄せて奪い切る。小柄だが、球際はむしろ強い。守備の貢献度も高く、プレスからカウンターの起点になる。
もう1つはプロ向きの性格。2018-19シーズンのクープ・ドゥ・ラ・リーグ(レンヌ戦)で、なんとパネンカを成功させたのだ。当時のディオプにトップ出場経験はほとんどなかった。
PSG戦で相手に食ってかかるなど、スター軍団を相手にも物怖じしない。その迷いのなさが球際の強さや仕掛けの鋭さにもプラスになっている。
フィジカル面に課題があるのは確かだが、それを補う能力は十分。見ていて爽快な選手だ。
【5位】ミッチェル・バッカー( PSG |20歳)
父エドウィンも元オランダU-21代表というフットボール一家に生まれ、アヤックスのアカデミーで育った左SB。185cm・74kgという恵まれた体格と、プレースキッカーを務めるほどの左足の精度、さらに思い切りの良さやスピードも兼ね備える。
PSGに加入した2019-20シーズンは主にBチームで過ごしたが、今季はトップチームでの出番が増加。左膝前十字靭帯断裂で長期離脱中の フアン・ベルナト の穴を埋め、PSGで最初にリーグ戦の出場時間が1000分に達した。「若手登竜門」とも称されるゴールデンボーイ賞(伊紙『トゥットスポルト』主催のアウォーズ)の最終候補20人に残ったのは偶然ではない。
今季のPSGがクロスを多用しているのもバッカーの存在があればこそ。右に人数をかけて作ってから、左で幅を取るバッカーにサイドチェンジ。そして彼のクロスに中で合わせるという形が、チームの攻撃パターンの1つになっている。
ネイマール など左ウイングを務める選手が大外に張らずに自由に動き回るため、バッカーの前方には大抵の場合でスペースが広がっている。相手SBに走り勝てる走力を持つ彼にとっては、理想的な環境だ。
また、クロスも様々なタイミングで上げることができ、中で待つFWモイーズ・キーンとの関係も良好。もう1つの強みであるサイズの大きさは守備時(とくに中に絞った時)のプラスとなっており、攻守の安定感が芽生えている。
いまや実績で上を行くレイヴィン・クルザワを上回り、左SB(ウイングバック)の2番手となったバッカー。内側のレーンで攻撃に絡むベルナトとはタイプが違うだけに、その先達の復帰後もオプションとして重用されるはず。順調に伸びて欲しい若手だ。
【その他のブレイク候補】
アクセル・ディザシ(モナコ|21歳)
リーグ最少失点を記録した昨季のスタッド・ランスで台頭したCB。高さ、強さ、広いカバー範囲が魅力で、対角線に通す精度の高いフィードも見逃せない。
マクサンス・カクレ(リヨン|20歳)
リヨンアカデミー出身。技術力と判断力の高さに加え、無尽蔵のスタミナで相手に食らいつく守備も光るMF。勝ち気な性格で昨季のUEFAチャンピオンズリーグでも存在感を放った。
イブライマ・ニアンヌ(メス|21歳)
優れた加速力と足技、ヘディングが特長のセネガル人CF。4節からの3試合で6点を荒稼ぎした。しかし直後に前十字靭帯を断裂。復帰が待たれる。
ケフレン・テュラム(ニース|19歳)
あのリリアン・テュラムの息子であり、マルキュス(ボルシアMG)の弟。リーチの長さと展開力が非凡な守備的MFだが、現在はプロの壁に悩む。巻き返したい。
ジェレミー・ドク(レンヌ|18歳)
16歳でプロデビューし、18歳でベルギー代表デビューしたウイングの有望株。狭い局面を破る足技と爆発的なスピードが武器。点が取れればブレイクも。
アディル・アウシーシュ(サンテティエンヌ|18歳)
左右両足から繊細で多彩なキックを放ち、対面した相手を剥がす足下の技術が光るファンタジスタ。特にファーポストの選手に合わせるプレースキックの質は素晴らしい。
メフディ・ゼルカンヌ(ボルドー|21歳)
立ち姿とキック精度が素晴らしいレフティだが、汗をかける。積極的なボール奪取で中盤にエナジーをもたらせる現代型の攻撃的MF。
※年齢などデータはすべて2020年1月4日時点。
文・西 達彦
ボイスワークス所属(局アナ経験なし)。Jリーグ・リーグアン(DAZN)ONE(abemaTV)なでしこリーグ(YouTube)マリーンズナイター・高校野球(チバテレ)西武ファームなど実況。趣味は乗り物全般、渋谷系音楽。
DAZNについて
DAZNなら好きなスポーツをいつでも、どこでもライブ中継&見逃し配信!今すぐ下の記事をチェックしよう。