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国際親善試合

【コラム】 ブラジル戦で見えた日本代表の現在地。攻撃のカギは“掛け算”にあり | キリンチャレンジカップ2022

【コラム】 ブラジル戦で見えた日本代表の現在地。攻撃のカギは“掛け算”にあり | キリンチャレンジカップ2022DAZN
【サッカー日本代表・コラム】6日、日本はキリンチャレンジカップ2022でブラジルと対戦し、0-1の敗戦を喫した。ただ、その敗戦の中でも見えたのは日本代表の現在地。カタールワールドカップで史上初のベスト8進出に向け、攻撃の改善が必要とされる中、“掛け算”が1つのキーワードになりそうだ。
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個を活かしながらユニットで勝っていく

2022_06_09_daihyo_itojyunya_mitomakoruGetty Images

ワールドカップ、ベスト8進出からの逆算。アジア最終予選を突破した時点で日本代表が考えるべきこと、見るべきものは、本大会で目標を達成するためのポイントに切り替わった。この目標達成のために、ここからの日本代表には何が求められるのだろうか。

ブラジル戦で現実を見た。森保ジャパンはFIFAランク1位のブラジルを相手にあえて無理なテストはせず、積み上げてきたものを出すべくトライ。正面から堂々と向き合って、しっかりと現在地を見極めることに成功した。主将・吉田麻也の言葉を借りれば、日本代表には「本当に宿題が多い」。世界トップとの対戦で見えた現在地を考えながら、宿題をピックアップしていきたい。

言わずもがな、日本代表の前に積み上がっている課題は攻撃面である。森保監督も課題は「攻撃力」と明言している。ブラジル戦では最終ラインからビルドアップしても、肝心のアタッキングサードで怖さや変化を出せなかった。アジア相手に無双した伊東純也、三笘薫も独力突破では完封され、古橋亨梧と前田大然のスピード系アタッカーの武器も活かせず、最終的に枠内シュートはゼロ。ゲームの大半で自陣に押し込まれ、出ていくパワーを削がれてしまった。

その一方で、後半に伊東と長友佑都が連携しながら右サイドを崩した場面、三笘がカットインしながらワンツーで縦に抜け出した場面には可能性が感じられた。1対1で勝てなければ、個を活かしながらユニットで勝っていく。そこに世界に対しての活路がある。

キーワードは「勇気と謙虚のバランス」

2021_9_8_japan_yoshida(C)2021 Asian Football Confederation (AFC)

実際、攻撃が機能しないシーンは本大会でも起こりうる。手を変え品を変え、崩しどころを探っていくしかない。守備をベースにしながら、どこでどれだけリスクをかけ、どう崩していくか。吉田は「勇気と謙虚のバランス」というキーワードを使いながら、臨機応変な戦い方の重要さを説き、「崩し方はいくつか持っていたほうがいい」とも提言した。

攻撃のプションについて柴崎岳は「誰かが出たら違う戦い方になるという考え方でなければ、変化が生まれない」と持論を展開している。

いまの日本代表は、誰がピッチに立っても遜色ないレベルに到達しつつある。だが、重要なのは、誰が出ても同じレベルのサッカーを展開することではなく、柴崎の言うとおり、選手たちの特長をどう組み合わせて強みを出していくか。そこがポイントになる。

試合展開を踏まえた臨機応変さが求められる中で、個の力を掛け合わせたユニットを構築し、連動して崩すパターンをどれだけ持てるか。ここは分析チームや森保監督を始めとするコーチングスタッフの判断に委ねられる部分でもある。長らく課題とされてきたセットプレーもデザインされたものが準備しておきたい。残された期間は短いが、一つでも多く計算できる攻撃オプションを多く持っておけるかが命運を左右する。

ブラジル戦で見えた課題の一つに、世界基準のスピードと精度の両立がある。森保ジャパンはハイプレスに来る相手に対してボールを回していくトライを施したが、余裕を持って楽しそうにボールを回していたブラジルとは対照的に、日本はギリギリでつないでいるシーンが散見された。確かにつなぐことはできていたが、本大会では少しのズレが致命的になる。あえて地上戦に挑んだことで何度か危ないシーンを作られたのは、「勇気とバランス」の現在地を知るためのテスト。今後に向けてチームとしての目線合わせ、意思統一をチェックしていきたい。

また、世界レベルのプレー精度を求めていくためには、パススピードや物理的な足の速さに加えて、攻守両面でいかに次のプレーを予測して早く動き出せるかもポイントになる。山根視来は「トップスピードでも技術が落ちない。狭いところでもちょっと浮かして中に入って行ったりする。そのあたりの差はある」と分析していた。ハイレベルな個人戦術の上に高度なグループ戦術、そしてチーム戦術が積み上がる。その最たる存在であるブラジル相手に感じたことを本大会までの取り組みに活かさない手はない。ここは選手個々に日々の努力と意識改革が必要となる部分だ。

日本代表に課された多くの宿題の中に、いくつかの“掛け算”がある。臨機応変さをもたらす「勇気とバランス」の掛け算、攻撃で違いを生み出すための「選手が持つ特長の組み合わせ」、そして全体のクオリティアップにつながる「プレースピードと判断スピードへの技術の掛け合わせ」である。

森保監督はブラジル戦を振り返って「未来の勝点、未来の勝利に向けて積み上げていくものがあった。最後のところで攻められている中でも粘り強く止める部分、強豪相手にやらなければいけないところは見せてくれていた。そこを継続しつつ、攻撃力を上げていけるようにトライしていきたい」とポジティブな見方を示した。6月シリーズは残り2試合。試合間隔が短い中で修正を求められるのはW杯と同じだ。本大会までの残り5カ月半だけでなく、直後に控えるキリンカップで、“宿題”の答えが見えるような戦いを期待したい。

2001年よりJリーグやJクラブの各種オフィシャル案件で編集やライターを歴任。月刊誌『Jリーグサッカーキング』で編集長も務めた。関係各所に太いパイプを持ち、現在はDAZNでコンテンツ制作に従事しながらJリーグ、日本代表の取材を継続中。

日本代表 招集メンバー

ポジション名前生年月日所属クラブ
GK川島 永嗣1983.03.20RCストラスブール
GK権田 修一1989.03.03清水エスパルス
GKシュミット・ダニエル1992.02.03シントトロイデンVV
GK大迫 敬介1999.07.28サンフレッチェ広島
DF長友 佑都1986.09.12FC東京
DF吉田 麻也1988.08.24サンプドリア
DF谷口 彰悟1991.07.15川崎フロンターレ
DF山根 視来1993.12.22川崎フロンターレ
DF板倉 滉1997.01.27シャルケ04
DF中山 雄太1997.02.16PECズヴォレ
DF冨安 健洋1998.11.05アーセナル
DF伊藤 洋輝1999.05.12VfBシュツットガルト
DF菅原 由勢2000.06.28AZアルクマール
MF/FW原口 元気1991.05.091.FCウニオン・ベルリン
MF/FW柴崎 岳1992.05.28CDレガネス
MF/FW遠藤 航1993.02.09VfBシュツットガルト
MF/FW伊東 純也1993.03.09KRCヘンク
MF/FW浅野 拓磨1994.11.10VfLボーフム
MF/FW南野 拓実1995.01.16リヴァプールFC
MF/FW古橋 亨梧1995.01.20セルティック
MF/FW守田 英正1995.05.10CDサンタ・クララ
MF/FW鎌田 大地1996.08.05アイントラハト・フランクフルト
MF/FW三笘 薫1997.05.20ユニオン・サンジロワーズ
MF/FW前田 大然1997.10.20セルティック
MF/FW堂安 律1998.06.16PSVアイントホーフェン
MF/FW上田 綺世1998.08.28鹿島アントラーズ
MF/FW田中 碧1998.09.10フォルトゥナ・デュッセルドルフ 
MF/FW久保 建英2001.06.04RCDマジョルカ

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