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サッカー

【第3回】冨安健洋や鎌田大地、鈴木優磨はどのように成功を収めたのか?| シント=トロイデンCEOが語る海外移籍の最新事情

【第3回】冨安健洋や鎌田大地、鈴木優磨はどのように成功を収めたのか?| シント=トロイデンCEOが語る海外移籍の最新事情(C)STVV
【連載インタビュー】昨今、若くして海外挑戦する日本人選手が増えている。そのトレンド、注目すべきポイントを、日本人選手の主要受け入れ先になっているシント=トロイデン(ベルギー)の立石敬之CEOに聞いた。

若くして欧州に活躍の場を移す日本人選手が増えている。いまやヨーロッパでプレーするサムライは当たり前になった。

欧州を目指す日本人選手たちにとって、いま有力な選択肢の一つになっているのがベルギーのシント=トロイデン(STVV)だ。日本企業(DMM)がオーナーシップを持ち、過去には遠藤航、冨安健洋、鎌田大地といった日本代表選手がこのクラブから羽ばたいていった。

現在はシュミット・ダニエル、松原后、橋岡大樹、伊藤達哉、鈴木優磨、林大地、原大智の計7人が所属。日本人選手のいわば受け皿となっているSTVVの立石敬之CEOに、冨安や鎌田、鈴木の成長過程から新戦力である原への期待まで話を聞いた。

――STVVから旅立って欧州で立場を確立した選手たちについて聞かせてください。彼らを獲得する際、前回(欧州移籍の最適なタイミングとは?)挙げていただいた「Jリーグで継続してレギュラーポジションをつかんでいる選手」という条件に照らし合わせましたか。

例えば冨安健洋選手は、19歳でSTVVにやってきましたが、すでにJリーグで2シーズンしっかりと試合経験を積んでいました。やはり大事なのは年齢よりも経験や自信ですよね。具体的な試合数を示すのは難しいですが、少なくともJリーグで2シーズン続けてレギュラーとしてプレーしていると、欧州で成功する確率はグッと高まると考えています。

ベルギーに来た時の冨安選手はチームの最年少で、周りがミスをした際に全部「トミのせい」とされていました。加入から半年間は彼もすごく悩んでいましたが、継続して努力を続けていくなかで当時のマーク・ブライス監督に見出されたんです。試合出場のチャンスをもらってからは自信もついて、日本代表に選ばれるなど、後からいろいろなものがついてきました。トレーニングを積んで、身体もどんどん大きくなっていきましたしね。

――鎌田大地選手も高卒1年目から2年半にわたってサガン鳥栖で主力を担って、ドイツへ渡りました。その後、出場機会がきわめて限られていたフランクフルトからSTVVに加入しています。彼はその後、どのように成長していきましたか。

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STVV加入当時を振り返ると、フランクフルトで競争に敗れて自信を失っているように見えたのが印象的でした。

それでもSTVVで中心選手になって自信もついてきたときには、チームの結果に責任を持つようになりました。「今日は俺が点を取って勝つ」「今日負けたのは俺があそこで外したからだ」「このチームは勝つも負けるも俺次第」という意識になったのです。

ミスをしないように、先輩がいるから周りに合わせなければいけないというのではなく、欧州の舞台で「自分がこのチームを勝たせる」「あのチームを負けさせたのは自分だ」というメンタリティに変わっていったのは大きいと思います。過去の例で言えば、VVVフェンロ時代の本田圭佑選手みたいですよね。

急に身体が大きくなったり、強くなったりしたわけではありません。それでも鎌田選手はフランクフルトに帰って「こいつらよりも自分のほうが強くて上手い」ということに気づいて、「見える景色が変わった」と話していたそうです。やはり選手が伸びる瞬間は自信がついたときなんですよね。

日本人は特にサッカーに限らず、あまり自信がない。一般社会でも自信をつけさせるのが一番難しいんです。サッカーにおいて自信を生み出すのは試合経験かもしれませんし、あるいは「この組織は自分がいないと回らない」という一種の傲慢さが自信につながっていくのかもしれません。

ただ、自信のつけ方は人それぞれです。例えば遠藤航選手は欧州だと身体がそれほど大きい方ではないので、アフリカ系の選手やサイズの大きな選手と戦う荒々しいサッカーの中で、相手からどうボールを奪うのか、あるいは自分の武器を使ってどう戦っていくか、単純に個のスキルの向上に向き合って自信を身につけていきました。

――鈴木優磨選手は加入2年目の昨シーズン、エースストライカーとして自信たっぷりに躍動していました。今夏はステップアップの噂が絶えませんでした。

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おっしゃる通り、昨シーズンの彼は本当にチームの中心でした。しかし、1年目は「いつ監督に外されるんだろう」という感じで、自信がなかったんです。試合に使ってもらっていて、リーグ戦では7得点を挙げました。守備にも献身的でしたし、頑張ってはいましたが、それ以上にはなれませんでした。

ところがパートナーだったヨハン・ボリ選手が2020年1月にカタールに移籍し、STVVで2年目を迎えてからは、チームの得点源が鈴木選手しかいなくなりました。そして、「自分がチームを勝たせなければいけない」「俺にボールを集めろ」という意識が出てきてからはゴール量産です。

チームメイトも彼に驚くほどボールを集めましたが、そうなるまでには2シーズンかかりました。でも、自信というのは本当に怖いですよ。

――冨安選手や遠藤選手、鎌田選手などSTVVを足がかりに成功をつかみ、日本代表の主力にまで上り詰めた成功例がある一方で、なかなか結果を出せない選手もいました。とりわけ大きな期待を背負っていたのは、中村敬斗選手です。久保建英選手の1歳上であり、彼らの世代では日本トップクラスの逸材と見られていました。

中村選手にはものすごい才能があると、そばで見ていて感じていました。今後もまだまだ伸びると思っていますし、当時の監督も「悪くない」と言ってくれてはいましたが、やはりすぐに試合に出られるかというと、決してそうではない。我慢をしなければいけません。

彼もサッカー選手ですから、試合に出たいと思うのは当たり前です。試合に出ることが選手としての成長につながります。間違いなくそうです。ただ、試合に出るためには、それにふさわしい実力を示さなければなりません。

サッカーでも仕事でも、他人に自分を認めさせる時間は必要ですよね。もちろんいい上司に巡りあうことも大事かもしれませんが、その上司に認めてもらうための努力をしなければ伸びていかない。1年か2年かわかりませんが、試合に出られない期間があったとしても、後になって考えたら無駄ではないんです。

中村選手は、半年間オーストリア2部で我慢して試合に出て信頼を勝ち取った結果、LASKリンツへの移籍を果たしました。これからオーストリアの強豪クラブでまた腰を据えて戦う姿を楽しみにしています。

――試合に出られないからといって移籍を繰り返すのにはリスクも伴うということですね。もちろん移籍先で試合に使ってもらえる保証はなく、本来成長に使えるはずだった時間を失ってしまう可能性もあります。

もちろん「ここで評価してもらえなければ、次のチームで評価してもらえればいい」という考え方も理解できます。J1やJ2でも似たような事例は見受けられますが、繰り返しているのはよくないと思います。

Jリーグでも周りから一定の評価を得た選手たちというのは、何かしら「自分」の表現の仕方を持っているとも感じますね。これはJリーグに限った話ではありませんが、STVVとしても新たに獲得する選手を見定めるときに、まずは母国でしっかりとプレーできていることが必要だと考えています。日本人選手にしても、J1でもJ2でもJ3でもカテゴリーは関係なく、Jリーグで実績のない選手は獲りにくいとは思っています。

――STVVは先日、スペイン1部のデポルティーボ・アラベスから原大智選手の獲得を発表しました。1シーズンの期限付き移籍加入です。彼をどのように評価していますか。そして、どのようなキャリアを歩んで欲しいとお考えですか?

原選手はユース年代からFC東京に所属していましたので、(元FC東京GMの)私もよく知っていました。サイズがあるにもかかわらず、ディフェンスライン裏への抜け出しや両足のキックを得意としています。すでに欧州での実績があります(2021年1月からクロアチアのイストラでプレー)し、ベルギーリーグでもフィジカル面などを含めて十分に通用すると思います。

STVVで切磋琢磨して飛躍すれば、今後日本を代表するストライカーになれる。それだけのポテンシャルを持っていると考えています。スペイン1部でポジションを勝ち取るにはさらに成長しなくてはいけませんが、ベルギーでゴールを決めて、しっかり準備をすれば、来シーズン以降スペインでやれる能力を持ち合わせていると思います。

立石敬之 シント=トロイデンVV CEO

高校時代に国体で優勝、海外留学の後、ECノロエスチ、ベルマーレ平塚、東京ガスFC、大分FC/トリニータなどで選手として活躍。その後、エラス・ヴェローナや大分トリニータ、FC東京にてコーチ、強化部長などを歴任し、2015年からFC東京GMとしてチームの強化に尽力。 2018年よりベルギー1部のシント=トロイデンVVのCEOに就任。

取材・文  舩木渉

1994年生まれ、神奈川県出身。早稲田大学スポーツ科学部卒業。大学1年次から取材・執筆を開始し、現在はフリーランスとして活動する。単なるスポーツにとどまらないサッカーの力を世間に伝えるべく、国内を中心に海外まで幅広くカバーする。

シント=トロイデンCEOが語る海外移籍の最新事情

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