※エル・ゴラッソ提供:2022年2月15日発売 2572号 掲載 【聞き手:田中 直希 取材日:2月4日(金)】
今季は“スピード”を意識したい
―約2周間の沖縄キャンプを経て、開幕戦までの準備を続けます。その進行状況はいかがでしょうか?
「新しい選手も多いので、徐々にチームとしてやるべきことが浸透し始めているという状況です。既存選手であっても、長い期間のオフを過ごすとこれまでの感覚が抜け落ちる部分が多々ありますから、全員が確認作業の最中ではありますね」
―そして、チーム全体のブラッシュアップも行っている、と。
「今季は、『スピードを意識したい』と選手たちに話してきました。その意識は上がってきている印象です」
―「スピードアップ」というテーマに至ったきっかけについて教えていただけますか?
「昨季が終わってから考えたことではなくて、ずっと感じていたところでもあります。これまで、選手たちがたくさんの努力を続けて成長することができました。ただ、世界と比較したときには、まだまだ劣っている部分が多くあります。リーグのトップに立つことはできましたが、“よりいいもの”を目指すためには、その“スピードアップ”が必要です。世界にも、もちろん日本の中にもいいお手本がたくさんあります。そうした相手に打ち勝っていくためには、スピードを意識しないといけません。そう感じていたので、選手にも今季始動のタイミングから説明したというところです」
―たしかに、世界トップレベルの試合を見ると、ものすごいスピード感を感じます。
「まずは、単純なボールスピードですね。自分たちは“止める・蹴る”の技術で称賛されるところもありますが、単純なパススピードは世界のほうが上。強く蹴ることでいつもとは違う回転になるでしょうが、世界では、厳しいボールでも思うところにピタっと止めています。それを見て、より強いボールを蹴ること、そして止められるようにする技術がより必要だと感じました。それをスピード感のある中で連続して出していくことが、自分たちが追い求めていく姿だと思っています」
―「スピード感のある中での連続性」ですか。
「『正確性』もすごく大事なワードですが、それと同時に必要なのが『連続性』です。そうした高い基準をもっていきたいと思っています。ゲームには日常が出るので、日々の練習からどれだけ意識して変えていけるか。その意識が大事だということです」
―パススピードだけでなく、例えば判断も『スピード』の一つですよね。
「それについては、何から考えるかだと思っています。ゴールから逆算して考えられているかどうか。それを考えるためには、ボールや相手の状況を見ておかないといけません。では、プレーする前にそれを見ておくためにはどうするか。そうしたことを掘り下げていって、どの位置にいるべきかなど…、そうした状況については、(監督である)自分自身も把握しながらやっているつもりではいます」
結局のところ、スポーツはメンタル
―今季の川崎Fは、ACL制覇、そしてリーグ3連覇という大きなテーマがあります。その上で、昨季の後半戦で下がってしまった得点力を上げることもテーマの一つですか?
「得点はテーマというか、“取り続けたいもの”です。サッカーにおいて一番の目的はゴールですし、その考えはブレずにいきたい。数多くの得点を取ることで、シンプルに勝つ可能性が上がります。チームメート、スタッフ、サポーターと喜ぶためにも、ゴールが必要です。昨季の途中から、相手の対策や、自分たちのチーム事情で難しい部分もありました。ただ、そこで勝ち続けられたということを考えれば、チームとしての底力は間違いなく上がっていると思います。それをベースに、しっかりと今季もゴールを目指していければいいですね」
―「相手を見てサッカーをする」、「ポケットへの進入」、「ポジショナルプレー」といった、川崎Fが取り入れている考えを今では日本代表を含めて多くのチームが取り入れていますよね。
「どのチームも、それぞれの狙いがあると思います。自分たちはそういったものが有効だと思ってやり続けています。攻撃的な部分で言えば、代表に入っていけるような選手もこのチームにいると思いますが、まだまだ足りない部分もあります。先日のサウジアラビア戦における日本代表の守備強度はすごく高かったですよね。その強度を普段の練習から出せるような環境を作っていかないといけません。それができるようになれば、自分たちのチームからもっと代表に呼んでもらえるようになるでしょう」
―試合でのさまざまな相手の対策は、川崎Fの成長につながっていると思いますか?
「ここ数年は、その思いをもってやっています。いろいろなチームがさまざまな対策を練ってきますが、ポジティブに考えれば、トレーニングでは獲得できないものをゲームの中でやらさせてもらっているということ。ゲームの中でも『相手のこのやり方に対して我慢できるんだ』といった発見や、強気で戦うことで相手の対策うんぬんを超越するような力強さを感じることがあります。
今季も、さまざまな相手の対策に直面するでしょうが、これまでどおり自分たちのやるべきことは変わりません。大変な作業も多いですが、それを超えたときの楽しさや身につくエネルギーについては選手も感じています。また、メンタル的なタフさは徐々についてきています。自分としては“もっともっと”選手に求めますけどね(笑)」
―今季も過密日程ですから、メンタル的なタフさがないと乗り越えられないですよね。
「スポーツは、結局のところメンタルだと思ってやってきました。その考えは変わらないですね。メンタルの充実に加えて、そこに技術があったらどんどん強くなる。その芯のところは大事にしているつもりです」
―3連覇を狙うシーズンになりますが、例えば鹿島からはそれを絶対に阻止するぞという気持ちを感じます。
「鹿島だけではなく、そうした話は耳に入ってきます。でも、そういうものがあるからこそ、自分たちはより強くなれると思っています。簡単なことではないと思いますが、前回その3連覇にチャレンジした19年よりも、言い訳の材料を減らして戦いたい。それは自分自身も、選手に対しても。長いJリーグの歴史で1チームしか達成していないのが3連覇です。簡単ではないと思いますが、だからといってできないことではありません。達成したチームはありますので。そこから目を離さずに、できると信じて本気で獲りにいくことが大事だと思っています」
優勝を目指す上で大事な一戦
―昨季は開幕戦勝利、そしてスタートダッシュが優勝につながりました。今季の序盤戦、そして開幕戦についてどう考えていますか?
「開幕戦は、どのシーズンでも大事なものです。監督さんによって、どんなリーグ戦の試合でも34分の1であるとか、さまざまな考え方があると思います。自分の中では、(開幕戦は)優勝を目指していく上で大事な一戦という位置づけです。それに、今季もほかの試合に先んじて開催される金曜の試合です。今季のフロンターレのサッカーをしっかり見せるべき場所だと思っています。まだ100%の状態ではないですが、試合に向けて心も体も合わせていきたい。
自分たちがJリーグを盛り上げたいという思いに変わりはありません。いろいろな意味で先頭を走っていけるようなゲームを、また面白いサッカーをお見せしたいと思っています」
―開幕戦の相手はFC東京。多摩川クラシコです。
「当然、クラシコに対してのこだわりもあります。その上で、一つ勝つことの難しさは理解しています。開幕戦は簡単なものではありません。3連覇への思いと同じで、言い訳を作らずに自分たちがチャレンジする。大きなやりがいのある試合ですし、いつも本気ですが、しっかり力を込めてやっていきたいと思います」
―FC東京は監督交代がありスタイルが変わりそうです。一方で、前線にはディエゴ・オリヴェイラ、アダイウトン、永井謙佑…。彼らは変わらず在籍しています。
「どのチームにも志向するサッカーはあると思いますが、最終的にはそこにいる選手が誰なのかということになってくると思っています。FC東京には外国籍選手のタレントがいて、それに新戦力の選手も加わり、タレント性は間違いなく高い。そこはしっかりと自分たちがケアしないといけないところであると思います」
―新監督就任のチームに対しての考え方については?
「それについては、あまり考えていないですね。先入観を捨てて戦うことが大事だと思っています。『相手がこういうサッカーだろうな』と思うところまではいいですが、思い込みでプレーしてはいけません。しっかりとゲームの中での状況を把握することが必要です。監督になったときから、その場で何が起きているか考えることが一番大事だと思っています」
―お話を聞いている時点で、開幕まであと2週間あまり。どの部分をこれから高めていきたいですか?
「臨機応変に戦えるチームにしていかないといけないという思いと、もう一つはどんな相手にでも自分たちのサッカーで圧倒できるようにしたいということです。これらは矛盾しているようで、そうではない。そこを突き詰めていきたいと思っています。自分たちが勝てるように、より楽しんでもらえるように、しっかりとチームを作っていければいいかなと思います」
―「勝ったときの味を忘れるな」という鬼木家督の言葉が印象的で、それが積み重なっていまのフロンターレがあると思います。年々、優勝したときの味も変わっていますか?
「選手たちにしても、当然変わっていると思います。最初は喜びだけだったものが、それが重なるとプレッシャーにもなってきます。今度はそのプレッシャーを楽しみに変えていけるようになっていますし、そこにも成長がある。選手によく言うのが、『これをやったら勝てるというものはないが、これをやらないと勝てないというものがある』ということです。その空気感を感じながらやっていってほしいし、何度も言いますが3連覇を目指す上では今までと同じことをやっているだけではいけません。
ただ、それを意識しすぎて固くなるというのも違う話で、こうしたチャレンジができるチャンスを作り上げてきたのは自分たち。それに対してプレッシャーを感じるのは意味のないことです。望んでこういう場にいるので、むしろサポーターの皆さんも含めて、なかなかないこの状況を楽しみながら強い意思を持ってやっていければいいと思っています」
鬼木 達(おにき・とおる)
1974年4月20日生まれ、47歳。千葉県出身。坪井中→市立船橋高→鹿島→川崎F→鹿島を経て、00年に川崎Fに再加入。06年に引退したのちに育成兼U-12コーチに。07年からトップチームのコーチに就任。17年に監督へ就任すると、5年で4度のリーグ制覇を達成するなど結果を残し続けてきた。
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川崎フロンターレの試合日程
節 | 日時 | 対戦カード | スタジアム | 配信・放送予定 |
---|---|---|---|---|
1 | 2月18日(金)19:00 | FC東京 H | 等々力 | DAZN |
2 | 2月26日(土)15:00 | 鹿島アントラーズ A | カシマ | DAZN NHK水戸 |
3 | 3月6日(日)15:00 | ガンバ大阪 A | パナスタ | DAZN |
4 | 3月12日(土)17:00 | 名古屋グランパス H | 等々力 | DAZN |
5 | 3月19日(土)14:00 | サンフレッチェ広島 A | Eスタ | DAZN |
6 | 4月2日(土)15:00 | セレッソ大阪 H | 等々力 | DAZN |
7 | 4月6日(水)19:00 | ジュビロ磐田 A | ヤマハD | DAZN |
8 | 4月9日(土)19:00 | 柏レイソル H | 等々力 | DAZN |
9 | 2月23(水・祝)14:00 | 横浜F・マリノス A | 日産ス | DAZN |
10 | 3月2日(水)19:00 | 浦和レッズ H | 等々力 | DAZN |
11 | 5月18日(水)19:00 | ヴィッセル神戸 A | ノエスタ | DAZN |
12 | 5月7日(土)14:00 | 清水エスパルス A | アイスタ | DAZN 静岡放送 |
13 | 5月14日(土)16:00 | アビスパ福岡 H | 等々力 | DAZN |
14 | 5月21日(土)17:00 | サガン鳥栖 A | 駅スタ | DAZN |
15 | 5月25日(水)19:00 | 湘南ベルマーレ H | 等々力 | DAZN |
16 | 5月29日(日)13:05 or 14:00 | 京都サンガF.C. A | サンガS | DAZN |
17 | 6月18日(土)19:00 | 北海道コンサドーレ札幌 H | 等々力 | DAZN |
18 | 6月25日(土)19:00 | ジュビロ磐田 H | 等々力 | DAZN NHK BS1 |
19 | 7月2日(土)19:00 | セレッソ大阪 A | ヨドコウ | DAZN |
20 | 7月6日(水)19:00 | サガン鳥栖 H | 等々力 | DAZN |
21 | 7月9日(土)19:00 | ガンバ大阪 H | 等々力 | DAZN |
22 | 7月16日(土)19:00 | 名古屋グランパス A | 豊田ス | DAZN NHK BS1 |
23 | 7月30日(土)19:00 | 浦和レッズ A | 埼玉 | DAZN |
24 | 8月7日(日)19:00 | 横浜F・マリノス H | 等々力 | DAZN |
25 | 8月13日(土)19:00 | 京都サンガF.C. H | 等々力 | DAZN |
26 | 9月14日(水)未定 (※1) | アビスパ福岡 A | ベススタ | DAZN |
27 | 10月12日(水)未定 (※2) | 鹿島アントラーズ H | 等々力 | DAZN |
28 | 9月3日(土)or 9月4日(日) | 湘南ベルマーレ A | レモンS | DAZN |
29 | 9月10日(土)or 9月11日(日) | サンフレッチェ広島 H | 等々力 | DAZN |
30 | 9月17日(土)or 9月18日(日) | 柏レイソル A | 三協F柏 | DAZN |
31 | 10月1日(土)or 10月2日(日) | 北海道コンサドーレ札幌 A | 札幌厚別 | DAZN |
32 | 10月8日(土) | 清水エスパルス H | 等々力 | DAZN |
33 | 10月29日(土) | ヴィッセル神戸 H | 等々力 | DAZN |
34 | 11月5日(土) | FC東京 A | 味スタ | DAZN |
(※1)川崎FがAFCチャンピオンズリーグ2022においてグループステージで敗退した場合、開催日が8月20日(土)19:00KO@ベススタに変更となる可能性あり。
(※2)川崎FがAFCチャンピオンズリーグ2022においてグループステージで敗退した場合、開催日が8月27日(土)19:00KO@等々力に変更となる可能性あり。