【開幕特集・シーズンプレビュー】3年ぶりにJ1へと帰ってきたジュビロ磐田が見据える険しき道のりへの序章 ｜ Jリーグ

この場所に帰ってきただけでは意味がない。舞い戻ったステージで“黄金期”と賞賛された輝かしい時代を再び実現することができるのか。険しき道のりへの序章となるシーズンがいよいよ幕を開ける。

ここ数年、どちらかと言うと輝かしい時間よりも苦心してきたシーズンの方が長かった。その中で、昨シーズンは一番乗りで昇格を果たすノルマを達成。さらにJ2とはいえ、長年遠ざかっていたタイトルという栄冠を手にすることもできた。クラブとしても久しぶりに浮上できたシーズンを過ごしたことで、ひとまず近年の嫌なサイクルを断ち切ることができたと言えるだろう。

ただ、ここからもう一段階這い上がっていくためには、これまでにない進化が必要だ。必要なプロセスを着実にクリアしていかなければならない。J2では圧倒できた戦力でも日本最高峰の舞台では、むしろ劣勢に立たされることも増えるだろう。さらにサッカー界全体で戦術面が急速に進歩している背景もあって、Jリーグの各クラブの戦術レベルも大きく変化している。組織対組織の攻防を繰り広げていく中で、最後にJ1を戦った19年シーズンと同じような感覚では、もちろん厳しい戦いを強いられてしまうことになる。

3年ぶりのJ1で迎える今シーズンは、ポジショナルプレーや可変システムといった戦術を志向する伊藤彰監督を招聘。昨季まで積み上げてきたポゼッションベースに、新指揮官のエッセンスを肉付けしていくことでバージョンアップを目指すことになる。

新たな戦術の落とし込みに多くの時間を割いてきたプレシーズンをMF遠藤保仁はこう振り返っている。

「監督の考えを理解することが1番重要でした。（監督が来てから）まだ時間は少ししか経っていませんし、不慣れなところもありますけど、少しずつ理解できてきていると思います。自然に体が動くようになってきているので、完全に理解するまではもう少し時間がかかると思うけど、ここまでは順調にきていると思います」。

思い返せば、昨年もシーズン序盤から100%の状態でスタートしたわけではない。むしろ前半戦は、しぶとく、我慢強く勝ち点を積み重ねてきた試合の方が圧倒的に多かった。監督、スタッフ、選手が一体となり、目標を達成するために目先の勝利に浮かれることなく、客観的に自分達のパフォーマンスを見つめることができていたからこそ徐々に完成度を向上させていった経験がある。それをシーズン通して持続できたことが19戦無敗といった圧倒的な強さにつながり、シーズン終盤にかけてグッと完成度を高めることができた。その成功経験が今はある。

新たなことにトライする以上、生みの苦しみを味わうことも多いシーズンになるだろう。ただ、目先の勝利を譲るつもりもない。まずは最低限のノルマと言えるJ1残留に向けて、そしてその先に待つAFCチャピオンズリーグ出場権やJ1優勝といった本当の歓喜を掴むために－－。いよいよサックスブルーがJ1での歩みを始める。

文・森亮太

1990年、静岡県出身。静岡県を拠点にフリーライターとして活動中。2018年からは、サッカー専門新聞「エルゴラッソ」にてジュビロ磐田、アスルクラロ沼津の番記者を担当している。

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