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【連載】古巣ミランへの提言「ジルーとイブラヒモヴィッチの共存は可能だ」| 元日本代表監督アルベルト・ザッケローニのセリエA探究 第20回

【連載】古巣ミランへの提言「ジルーとイブラヒモヴィッチの共存は可能だ」| 元日本代表監督アルベルト・ザッケローニのセリエA探究 第20回(C)Getty Images
【欧州・海外サッカー インタビュー】アルベルト・ザッケローニ氏が2021-22シーズンに臨むミランを徹底分析。同じCFのオリヴィエ・ジルーとズラタン・イブラヒモヴィッチの「共存は可能」と主張する。

前回の当連載では、王座奪還を目指すユヴェントスの新シーズンを展望しました。今回はそのユーヴェとスクデット(リーグ優勝)を争いそうな昨季の2位チーム。ミランの先行きを占ってみましょう。

まずは戦力分析から。開幕が目前に迫った現時点でも、カルチョメルカートでさほど大きな動きを見せていません。陣容はほぼ昨シーズンのまま。その観点では、選手の連係向上による上積みが十分に期待できるでしょう。

もちろん、把握していますよ。ジャンルイジ・ドンナルンマ、ハカン・チャルハノールという主軸2人がチームを去ったことは。

フリーでパリ・サンジェルマンに移籍したドンナルンマは、アッズーリを頂点へと導いたEURO2020で大会MVPに輝いた世界屈指のゴールキーパー。まだ22歳と若く、言うなればミランは大きな財産を失った形です。

とはいえ、彼と遜色のない国際レベルの守護神が後釜としてやって来たのもまた事実。リーグアン王者リールから獲得したマイク・メニャンです。今年11月に26歳になる彼は、フランス代表にも名前を連ねる実力者。ドンナルンマの抜けた穴をしっかりカバーしてくれるでしょう。

またインテルに移籍したチャルハノールの穴埋めも、まったく問題ないと見ています。そもそも、このトルコ人が務めていたトップ下の戦力は豊富ですからね。

真っ先に浮かぶ名前が、ブライム・ディアスです。22歳のこのスペイン人は昨シーズン、レアル・マドリードから期限付きで加入しましたが、21-22シーズンもレンタル延長で残留することが決まっています。

そんな彼にクラブが託した背番号は、昨シーズンまでチャルハノールが付けていた10。メッセージ性がこもっていますし、期待の高さがうかがえます。

私なら3-4-1-2にトライ

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戦略的に必要となれば、普段1トップを務めるズラタン・イブラヒモヴィッチをトップ下に配置転換することも可能でしょう。

そもそもイブラのプレーエリアは、相手センターバックと激しい駆け引きを展開するペナルティーエリア内だけではありません。ボールをもらうため、しばしば低い位置まで下りてきます。

では、そのイブラをトップ下で起用した場合、誰を1トップで起用するのか。私が注目しているのは、チェルシーから加入したオリヴィエ・ジルーです。

このフランス人の獲得は、かなり価値のある補強になりそうです。ステファノ・ピオリ監督に複数の攻撃オプションをもたらすことの出来るプレーヤー。私はジルーをそう評価していますよ。

昨シーズンまでのベースである4-2-3-1に当てはめれば、先にも触れたように、イブラを1列下げたポジションに配し、1トップにジルーを起用することも可能。あるいはイブラとジルーの2トップ、トップ下にブライム・ディアスを入れる組み合わせだって十分にありえます。

イブラとジルーは似たタイプのフォワード。それが世間一般のイメージでしょう。「共存は難しい」という声もちらほら聞かれます。

しかし、私の意見は違います。前述のとおり、イブラは攻撃の組み立てにも積極的に参加するタイプ。一方のジルーは、エリア内でどっしり構え、主にボックスの中で力を発揮する典型的なセンターフォワードです。

長身で強靱なフィジカルを誇る両者。背格好こそ似ていますが、プレースタイルはまったく別。共存は十分に可能ですよ。

基本システムは引き続き4-2-3-1になるでしょう。むしろ手を加える必要はまったくありません。昨シーズンもこのシステムはしっかりと機能していましたから。仮に私がミランの新監督だったとしても、そこにメスを入れるようなことは絶対にしないでしょう。

さらなる上積みを図るには、オプションを加えることが必須になります。ジルーの加入が大きいと主張するのも、まさにそれゆえです。私ならジルーとイブラの2トップに、ブラヒム・ディアスをトップ下に据えた攻撃的な布陣、3-4-1-2システムにトライします。

私の経験上、2トップ+トップ下という攻撃的な布陣を採用した場合、何より重要となるのが攻守のバランスです。それを見出しやすい最適なシステムが3-4-1-2だと考えています。

3-4-1-2を採用すれば、より厚みのある攻撃を繰り出すことが可能です。例えば、ビハインドで試合終盤を迎えた時などに、かなり有効なオプションになるのではないでしょうか。

ケアにはリーダーの役割も期待

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もちろん、前がかりになるこのシステムを機能させるためには、後ろで支える守備の安定も必須です。とくに守備範囲が広がる3枚のディフェンス陣の重要度は高くなります。

ただ、心配はありませんよ。ミランには、フィカヨ・トモリという素晴らしいディフェンダーがいますから。昨シーズン途中にチェルシーからレンタルで加入した彼は23歳と若いですが、その実力が買われ、このオフに完全移籍を果たしました。

カバーリング能力に長け、なにより身体能力が抜群。守備範囲も広いので、3バックにも難なく対応できるでしょう。

4バックでトモリとコンビを組むもう1人のセンターバック、シモン・ケアも3バックに適応できるだけの能力はあります。

問題はもう1枚ですが、私なら右サイドバックのダヴィデ・カラブリア、またはディオゴ・ダロートにトライさせます。ともに本職ではありませんが、テストする価値はありますよ。

ケアに関しては、リーダー的な役割も期待しています。長丁場のシーズンを勝ち抜くには、ピッチに絶対的な存在が不可欠です。

私が率いていた頃のミランにも、パオロ・マルディーニ、アレッサンドロ・コスタクルタという2人の素晴らしいお手本がいました。彼らは練習場に一番に来て、トレーニングを終えてクラブハウスを後にするのは最後。そんな模範的なプレーヤーでした。

私が就任1年目(1998-99シーズン)にスクデットを獲得できたのも、彼ら2人がいたからこそ。存在感は絶大でした。

理想を言えば、そういったリーダー的な存在はイタリア人であればうれしいです。ただ、これだけグローバル化が進んでいるサッカー界。イタリア人がいなければ、外国人の中で「存在感」を見つければ良い。それだけの話しです。

ケアからはミランへの強い愛着も感じます。デンマーク代表の主将を務める彼のこと。国際経験も豊富ですから、リーダーの資質は十分と言えます。

トナーリのような若手が活躍すれば…

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最後に私が期待する若手を紹介しましょう。昨シーズン、ブレッシャから鳴り物入りで加入したサンドロ・トナーリです。21歳の若き司令塔で、すでにイタリア代表にもデビューしています。将来を嘱望される逸材ですよ。

昨シーズンは世間の評判ほど目立った活躍はできませんでしたが、その才能は誰もが認めるところ。加入2年目の今シーズンは、ピオリからもかなり期待されているのではないでしょうか。

トナーリの問題はメンタル面だけでしょう。まだ自信なさげにプレーする姿が見受けられます。監督、チームメートからの信頼をまだ勝ち得ていない、そう感じている印象を受けます。

そのあたりは、マルディーニなどがしっかりケアしてあげるべきでしょう。マルディーニは現在、強化部門のトップを務めていますが、カリスマ性で言えばクラブ内でも図抜けた存在です。

そんなマルディーニから「お前には期待している」などと直接言われたら。トナーリもきっと意気に感じるはず。プレー面でもプラス効果が期待できます。

彼のような若手が活躍すれば、チームも勢いづくことでしょう。システムや連係面だけでなく、そういった戦力的な上積みも今シーズンのミランには期待したいところ。

もしそれが実現すれば、2010-11シーズンから遠ざかっているリーグ優勝も決して夢ではないでしょうね。

インタビュー:アルベルト・コスタ
翻訳・構成:垣内一之

訳者プロフィール/1998年にイタリアに移住し、約8年間、中田英寿、中村俊輔、柳沢敦ら日本人選手を中心にセリエAを取材。2006年のドイツ・ワールドカップ後に帰国し、現在は日本代表、Jリーグを中心に取材を続けている。

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