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合理性よりも感情。究極のロマンチスト、インテル元会長マッシモ・モラッティが愛されるわけ | セリエA

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合理性よりも感情。究極のロマンチスト、インテル元会長マッシモ・モラッティが愛されるわけ | セリエA(C)Getty Images
【欧州・海外サッカー】マッシモ・モラッティはなぜ人々を引き付けてやまなかったのか。ビジネスライクに物事が進むサッカー界において、ロマンを追ったインテル元会長の素顔に迫る。

あらゆるサッカーファンの憧れ

愛だよ、愛――。

グローバル化が進み、合理性が優先されてビジネスライクに物事が進んでいくのは、もはやサッカー界でも当然の流れなのかもしれない。

だが、そんな現代だからこそ、圧倒的なロマンチストにこそ心惹かれるというもの。その代表格とも言える存在が、1995年2月~2004年1月、そして06年9月~13年11月と二度に渡ってインテルのオーナー会長(04年1月~06年8月はオーナーに専念)を務めたマッシモ・モラッティだ。

モラッティを一言で表すなら、あらゆるサッカーファンの憧れと言えるかもしれない。自分が愛するクラブのオーナー兼会長となり、私財を投じながら一流の選手や指導者をかき集め、チームを強化する。圧倒的大多数のファンにとって、ゲームの中でしか実現しない夢を現実世界で叶え、そしてクラブと今も崩れない相思相愛の関係を築き上げたのだ。

イタリアを代表するクラブの名実ともにトップ。18年に及んだオーナー時代に注ぎ込んだ金額は15億ユーロともいわれる。ともすれば、傲慢になってもおかしくないだろう。だが、モラッティはいつもピュアで繊細だったイメージが強い。決して偉ぶることはなく、その語り口は穏やかで温かい。

それを裏付けるような証言をするのは、04年夏から5シーズンに渡って、インテルでプレーした元アルゼンチン代表DFのニコラス・ブルディッソだ。DAZNで配信中の特集『愛しのインテル:元オーナー会長 マッシモ・モラッティ』でこう語っている。

「会長はサポーターから敬愛される存在でした。『モラッティ愛している』と書かれた旗を覚えています。会長の魅力は少年の心を失わないところです。純真なままなのです」

嘲笑されたことは一度や二度では

2006-09-06-Massimo Moratti-Inter

時に少年のような顔を覗かせたモラッティは筋金入りのインテリスタだ。実父のアンジェロも元会長(1955~68年)で、マッシモ少年は当然ながらネラッズーロ(青と黒)に傾倒していった。95年にクラブを買収してから追いかけ続けたのは、亡き父が築き上げた“グランデ・インテル”を復活させるという夢だ。

グランデ・インテルとは1963-64シーズンからチャンピオンズカップ(チャンピオンズリーグの前身)を連覇した伝説のチーム。セリエA3回、カップウィナーズ・カップ2回の優勝という実績も残した。その黄金期を再現すべく、モラッティは改革に乗り出したのだ。

自身が会長に就任する直前のシーズンに、セリエA13位に終わるなど低迷していたクラブを復権させるのは容易ではない。だが、モラッティは元ブラジル代表のロナウドなどスターを獲得し、就任4年目の97-98シーズンにセリエA2位、UEFAカップ優勝の結果を残す。

しかし、その後が続かなかった。悲願のスクデットには手が届かず、ピッチでちょっとうまくいかないと、まるで子供がおもちゃを投げ捨てるように監督を更迭した。目先の結果を追っては迷走を繰り返し、ライバルに嘲笑されたことは一度や二度ではなかった。

この頃はモラッティのインテル愛を知り尽くし、彼の信念に同調していたインテリスタもさすがにお冠だった。04年1月、当時セリエA最弱といわれたエンポリに敗れると、モラッティは一部ティフォージ(熱狂的なファン)の要求に従うようにして会長職を辞した。

それでもモラッティはクラブオーナーとしてインテルに留まった。ジャチント・ファケッティ副会長を後任に据え、グランデ・インテルを復活させる夢を追い続けたのだ。

合理性よりロマンを優先

2005-09-28-alvaro recoba-inter

当時のモラッティを語るうえで、絶対に欠かせないのが選手との蜜月関係だろう。ブルディッソは「アドリアーノやサネッティ、レコバがお気に入りだった」と証言する。なかでも元ウルグアイ代表のアルバロ・レコバに対する肩入れは半端ではなかった。

レコバは正真正銘のファンタジスタだった。常人には思いつかないアイデアを具現化する左足の崇高な技術を持ち、好調時はそれこそ不可能を可能にした。

しかし、いかんせん怪我が多く、パフォーマンスの波も大きかった。戦術的な制約を設けようものなら、翼をもぎ取られた鳥のように大人しくなる。自由を与えてこそなんぼのアタッカーである。

モラッティはそんなレフティに魅了されていた。チーム強化の可能性を高めたいなら、プレーの継続性に欠ける選手は使いにくいもの。だが、モラッティはレコバの才能を信じ続けた。目先の結果が求められるなかで、それこそ合理性よりロマンを優先していたのだ。

「レコバのプレーは美しく、気品に富んでいた。シュートもドリブルも自由自在。理想の選手だったよ。見たこともないプレーで勝利に導くんだ」

そう語っている時のモラッティは76歳の老紳士から、サッカーがとことん好きな少年に変貌する。ブルディッソの言う通りだ。こうした人柄が選手、そしてインテリスタの琴線に触れたのではないか。

注がれた愛情を返していく

2010-05-22-Jose Mourinho-Massimo Moratti-inter

08年6月からインテルを率いたジョゼ・モウリーニョも元会長に惚れ込んだ一人だ。パリにあるモラッティ邸で、ひざを突き合わせて交渉した時の第一印象をこう振り返っている。

「会長の家を訪ねて、玄関で迎えられるとすぐに感じたよ。一緒にいて心が安らぐような素晴らしい人に出会えたとね。君らしくあれ。会長に言われたのはそれだけだ」

そのモウリーニョ体制下で重要な役割を担い、モラッティの夢を実現させた(09-10シーズンのイタリア史上初となる3冠だ)功労者のサミュエル・エトーが詳しく説明する。

「会長という雰囲気を感じさせない人でした。むしろ父親のようで、助言を与えてくれる。つらい時に寄り添ってくれる存在でした。皆、そう感じていたはずですよ」

ちなみに、モウリーニョとの最初の会談は秘密裏に進めていた。しかし、すぐに白日の下に晒される。メディアにリークしたのは使用人だ。悪態をつくでもなく、その思い出を笑い飛ばせるのも、モラッティの人柄をよく表している。

自分自身はロマンチストか? 特集の最後に問われたモラッティはこう答えている。

「ロマンチストの定義次第だろう。決断の際に、感情を重視する人とするなら、私もその一人。本当に幸せなことに、私はたくさんの人から愛情を注いでもらった。神の導きのおかげで、素晴らしい人生を歩めていると思う。でも、人間というのは常に上を目指せるもの。現状に満足したら、新たな次元へ飛び立てなくなる」

感情を重視する――。ビジネス色の濃い現代のサッカー界において、そう言い切れるメガクラブの会長がどれだけいるだろうか。

配信情報

愛しのインテル:元オーナー会長 マッシモ・モラッティ

  • 配信: DAZN
  • 配信期間:~2022年12月31日
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