ユヴェントスはクラブの将来を描く中で、またしてもフィオレンティーナの選手に触手を伸ばそうとしているように見える。ロベルト・バッジョやフェリペ・メロ、ジョルジョ・キエッリーニやネトなど、ヴィオラ(フィオレンティーナの愛称)の愛を“裏切り”、トリノへと移籍した選手は近年、これだけにとどまらない。
フェデリコ・ベルナルデスキやフェデリコ・キエーザの移籍に至っては、ヴィオラファンたちの傷口もまだ開いたままのはずだ。
そんな中、ビアンコネーリ(ユヴェントスの愛称)はヴラホヴィッチを新たなターゲットに定めた。ユーヴェはかねてより、将来のチーム構想の中心に据えるべきエースストライカーを模索してきた。偉大な目標を志すため、ゴールへの貪欲さを持ち、将来性豊かな若きFWを投資の対象としていたユーヴェにとって、セルビア人FWのプロフィールはまさに理想的であると言える。
宿命を背負った者
ヴラホヴィッチはわずか15歳にして、パルチザン・ベオグラードと初めてのプロ契約を結んだ。2016年2月21日にデビューを飾り、クラブ史上最年少出場記録を更新したほか、2016年4月2日のラドニク・スルドゥリツァ戦では、最年少ゴール記録をマークした。
パルチザンで公式戦27試合に出場、UEFAヨーロッパリーグ(UEL)においてもデビューを飾ったのち、仮契約を経て18歳を迎えた2018年冬にフィオレンティーナへ移籍した。手続きの都合上、ピッチでのデビューは翌シーズンとなった。
2020年10月11日のUEFAネーションズリーグのハンガリー戦において、弱冠20歳でセルビア代表デビューも飾った。11月18日のロシア戦では先発デビューを果たすとゴールも決め、5-0での勝利に貢献した。
ユヴェントス戦で奪ったゴール
ユヴェントスはこれまでに、ヴラホヴィッチに2得点を奪われ、そのとてつもなく強力なフィジカルおよびテクニックを目の当たりにしている。
初得点は、2020年12月22日。ヴラホヴィッチは試合開始直後の3分、フランク・リベリのアシストを受けると先制点をマーク。これで勢いづいたフィオレンティーナは、アンドレア・ピルロのチームを3-0で葬り去った。また、昨シーズン後半戦の同カード(1-1)では、39分に極めて冷静にPKを沈めた。
ヴラホヴィッチがヴォイチェフ・シュチェスニーを欺いて決めたクッキアイオは、フィオレンティーナのファンにとって現在でも忘れられない瞬間だ。
今シーズンのヴラホヴィッチのパフォーマンス
ヴィオラのセンターフォワードによる最近のパフォーマンスを振り返ってみよう。
ヴェネツィア対フィオレンティーナ
ヴラホヴィッチの真の価値を理解するためには、ヴェネツィア戦(フィオレンティーナは0-1で敗北)のパフォーマンスが指標となるかもしれない。フィオレンティーナFWはこの試合で無得点に終わり、ほとんどのメディア各紙が軒並み「不合格」との評価を下した。
ヴィオラにとって本当に複雑な試合ではあった。だが実際、セルビア人FWはチームの中で最も長い走行距離(11.1キロ)を記録している。また、ヴェネツィアの注意は彼ひとりに集中していたため、プレスを受けた回数もチーム内で最も多かった。同時にプレスを最も多くかわすことができたのも彼だった。セルビア人FWは、ボールタッチも27回を記録するなど、ゲームのビルドアップやチームメートとの連携にも貢献した。
つまりドゥシャンはゴールを決めなくとも、チームにとって不可欠なのだ。
スペツィア戦でのハットトリック
フィオレンティーナのエースストライカーは、スペツィア戦においてすぐさま堂々たるパフォーマンスを示した。44分、まずPKを沈めて先制点を挙げると、62分に2点目をマーク。そして74分にハットトリックを記録して試合の決着をつけた。
この3ゴールの活躍により、ヨーロッパを代表するビッグクラブへのステップアップも見え始めた。
2021年の年間ゴール記録
ここまで順調に得点を刻み続けるヴラホヴィッチにとって、2021年は夢のような年かもしれない。アタランタ戦でドッピエッタ(1試合2得点)を記録して、“ヨーロッパレベルのストライカー”の仲間入りを果たすと、スペツィア戦では3ゴールをマークし、さらなる進化を見せた。
2021年1月以降、実に25得点を叩き出してきたヴラホヴィッチ。ヨーロッパ5大リーグにおいて、その記録を上回るのは、36ゴールを記録しているロベルト・レヴァンドフスキただ1人。リオネル・メッシ(23得点)およびアーリング・ハーランド(26得点)らにも肩を並べる存在となっている。その“1年間の記録”を締めくくるまで、まだ時間も残されている。
フィオレンティーナにおけるドゥシャン
ヴラホヴィッチはフィオレンティーナにおいて、すでにセリエA35得点をマーク。さらにコッパ・イタリアで4ゴールを記録している。
フィオレンティーナでの公式戦 | 出場数 | 得点 |
セリエA | 88 | 35 |
コッパ・イタリア | 8 | 4 |
契約延長問題とユヴェントスの影
フィオレンティーナのロッコ・コミッソ会長は数週間前、セルビア人FWの契約延長に関して、「我々のあらゆる努力は実を結ばなかった。この新たな熱狂のシーズンを最高の形で進めていくために、まもなく適切で実現可能な解決策を見出したい」と述べた。フィオレンティーナは選手に対し、年俸400万ユーロ(約5.2億円)、契約解除金8000万ユーロ(約105億円)、担当代理人へのボーナス250万ユーロ(約3.3億円)の新契約を提示していたが、白旗を上げる格好となった。
ヴラホヴィッチは現在、ヴィオラサポーターの標的ともなっており、クラブは、選手がいかにして家庭内離婚のような複雑な状況を乗り切ることができるかを検討しなければならない。来年6月には、2023年までの契約期間が残り1年を切ることになる。来年1月の移籍期間における退団も可能性として残されている。
今夏の移籍市場において、アトレティコ・マドリーからの6000万ユーロ(約79億円)におよぶオファーを拒否したヴィオラ。今後、評価額を明らかに下回る金額でクラブの宝石を失うことにはならないか、警戒を強めている。
ユーヴェはそんな中、新たなキエーザ式ビッグディールの実現へ準備を進めている。輝かしいクラブの未来のために、現時点で世界有数の才能をフィオレンティーナから引き抜こうとしている。
文・ルカ・フェオレ
放送・配信予定
- ユヴェントス対フィオレンティーナ
- 配信:DAZN
- キックオフ:2021年11月07日(日)日本時間02:00
- 実況:北川義隆
- 会場:アリアンツ・スタジアム
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