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【連載】伝説の名将アリゴ・サッキがCL出場権獲得のミランを称賛「大健闘、いや奇跡に近い」|カルチョS級講座 第19回 | セリエA

【連載】伝説の名将アリゴ・サッキがCL出場権獲得のミランを称賛「大健闘、いや奇跡に近い」|カルチョS級講座 第19回 | セリエA(C)Getty Images
【インタビュー】セリエAの2位に入り、8シーズンぶりにチャンピオンズリーグ出場権を獲得したミラン。復活の狼煙を上げたその名門に、稀代の戦術家アリゴ・サッキが「大健闘」と賛辞を贈った。

イタリアサッカー界の重鎮中の重鎮が『カルチョS級講座』に初登壇。1987年から率いたミランで「ゾーンプレス」戦術を導入し、世界のサッカーシーンを席巻した稀代の名将アリゴ・サッキだ。

サッカーの本質を突く的確な批評は健在で、75歳になった現在もメディアに引っ張りだこ。そんなイタリアきっての戦術家に、古巣ミランの戦いぶりはどう映っているのか。近未来まで見通す大ベテランならではの見解をご堪能いただきたい。

※インタビューはセリエA37節終了後に実施。

  ◇   ◇   ◇

サッキ:ミランにとっては激動のシーズンだったね。前半戦は下馬評を覆すかのような快進撃を見せ、首位ターンを果たした。

後半戦は一転して不安定になり、徐々に失速。気がつけば、上位4チームが得られるCL(チャンピオンズリーグ)出場権も最終節を前に確保できていない(※最終節でアタランタに勝利し、2位でシーズンを終えた)。

とはいえ、今シーズンのミランは大健闘したと私は思う。そう主張する理由は、シンプルかつ明確。チーム作りに要したコストパフォーマンスの高さだ。

ミランがここ数年で補強に注ぎ込んだ額は、インテル、ユヴェントス、ローマ、ナポリをはるかに下回るもの。その投資額を順位に置き換えるなら、ミランは5位相当のチームだ。

今のサッカー界は、セリエAに限らず資金力が戦力に直結する時代。そんなトレンドに逆らうかのように、ミランはコストをかけずに優秀な若手を発掘し、上位争いを演じるまでに成長した。

その意味で、今シーズンの成績は大健闘、いや奇跡に近いとも言える。

今のミランはとにかく若い選手が多い。強みとなっているのも、その若手たちが一致団結して織りなすコレクティブなプレーだ。

私に言わせれば、サッカーなどの団体スポーツではそもそも、組織力がベースにあってしかるべき。ジャンルは違うが、それは映画にも当てはまる。

優秀な演者をたくさん集めたとする。それでも骨格となるストーリーが凡庸だったら? おそらく、いや間違いなく良い映画を作れないだろう。サッカーもそれと一緒だ。

若手育成に力を注ぐ指針に大賛成だ

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ミランはここ数年、資金力の問題もあり、大枚をはたいて即戦力を獲得する旧来のスタイルから、若手中心のチーム作りに舵を切った。

この指針には私も大賛成だ。なぜかって? 考えてみてほしい。イタリアのクラブが最後に国外のタイトルを獲得したのはいつだったか、と。

そう、ジョゼ・モウリーニョ率いるインテルがCLを制覇した11年前だ。その間、国際大会ではEL(ヨーロッパリーグ)と言った"マイナー"なタイトルでさえ1つも手にできていない。

代表レベルで言えば、2018年ワールドカップ・ロシア大会では60年ぶりに本大会出場を逃した。われわれイタリア人は今、サッカーの世界で借金生活を送っているようなものだよ。こんな酷い状況に一刻も早く終止符を打たなければいけない。

私の考えでは、この悪い流れを打破する方法はたったの1つ。ミランのように積極的に若手育成に力を注ぐことだ。

決して簡単なことではない。若手の積極起用にはリスクが伴うからだ。今シーズンのミランがまさにそうだったようにね。

象徴的だったゲームが、つい先日の0-0で引き分けた37節のカリアリ戦だ。

ミランはトリノでの連戦となった35節ユヴェントス戦、36節トリノ戦で計10得点を奪い、見事な連勝を飾った。

そしてこのカリアリ戦に勝ちさえずれば、4位以内を確定させCL出場権を手中に収めることができるところまでこぎ着けたんだ。

しかもカリアリは試合前にセリエA残留が確定しており、勝利へのモチベーションはそこまでではない。さらに舞台はミランホームのサンシーロという、絶好のチャンス。

なのにだ、結果はスコアレスドロー。8シーズンぶりとなるCL行きの命運は最終節に委ねられることになった。

有利な条件が揃いながら、なぜカリアリに勝てなかったのか?

「若い選手たちがユヴェントス、トリノに連勝して図に乗ってしまったから?」。十分にありうる。

「集中力が欠けていた?」。それも考えられる1つの理由だ。

理由はどうであれ、若いチームにはこういった考えられないことが得てして起こりえるものだ。

勘違いした瞬間に成長は止まる

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ミランの若手の中には、過大評価されている者もいる。そうなって欲しくはないが、今後、消えてしまう選手も出てくるだろう。

「オレはもうトップレベルに達した」

今シーズンの成績でそう勘違いする若手がいても、なんら不思議ではないからだ。そう感じた瞬間、残念ながら選手としての成長は止まる。

1つ分かりやすいエピソードをお話ししよう。私がイタリアサッカー連盟で育成年代を取り仕切る統括コーディネーターを務めていたときのことだ。

U-17欧州選手権を控えた代表チームで、当時ミランユースに所属していたマヌエル・ロカテッリ(上写真)の招集を巡って意見がわかれたんだ。

監督としては当然、主軸を担うロカテッリの招集を強く望んでいた。だが、私は彼が天狗になっていると感じていた。故に、最終的に招集を拒んだ。

その予感は的中したよ。案の定、ロカテッリはそれからしばらくの間は第一線から姿を消した。

周知のとおり、ロカテッリは今、サッスオーロで安定したパフォーマンスを見せている。A代表にも選出されるほどの選手に成長した。一回底まで落ちて、自力で這い上がってきたんだ。

それが実現したのは過ちを素直に認め、彼自身が態度を改めたからにほかならない。まだ23歳と若いが、ロカテッリは頭も切れる青年だと言えるね。

あのときの招集外が、ロカテッリにとって良い教訓になっていたなら私もうれしいが、若手の誰もが彼のように発想を転換できるとは限らない。

それこそ生まれながらにして非凡な才能を持ちながら、自省できずに消えてしまった若手が何人いたことか。

若いミランにはズラタンがまだまだ必要

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少し逸れてしまったので、話を戻そう。メンタル的に成熟しきっていない若手を積極的に起用し、成長を促しながら「勝てる」チームを作り上げる。それには多大なる忍耐力が必要であり、大きなリスクも伴う。

そんなチームに欠かせないのが、ベテランの存在だ。もちろん、年齢を重ねていれば誰でも良いというわけではない。鍵となるのは、若手のような向上心とメンタリティを持ちつつ、経験も豊富なプレーヤーだ。

その意味で、ズラタン・イブラヒモヴィッチは今のミランに多大なる貢献を果たしていると言えるだろう。

今年の10月で40歳にもかかわらず、ズラタンは今も若手のような野心を持ち続け、日々上達のためのトレーニングに励んでいる。

ズラタンはチーム全体に大きな勇気を与えたよ。その功績は実に大きいね。

ミランはズラタンとの契約を来シーズンまで1年延長した。なかには「イブラヒモヴィッチの存在により、成長を妨げられる若手FWもいるのでは?」と疑問を投げかける者もいる。

それも一理あるが、繰り返し言おう。どんな決断を下すにしても伴うのがリスクだ。リスクを負わなければ、それが習慣となって、過去の栄光にすがってしまうことにもつながりかねない。

高齢のイブラに頼るのは、無論リスクがある。ただ若い選手が多いミランには、彼のような存在がまだまだ必要だ。

今の若い選手たちがこのまま順調に成長を遂げることができたら、その時はズラタンの後継者となりうる優秀な若いアタッカーを採用すればいい。ただそれだけの話しさ。チームというものは、そうやって作り上げていくものだよ。

若手とベテランの歯車がかみ合った今のミランが、このオフに的確な補強ができれば――。

来シーズンはさらに安定した素晴らしい戦いを見せるだろうね。

インタビュー:アルベルト・コスタ
翻訳・構成:垣内一之

訳者プロフィール/1998年にイタリアに移住し、約8年間、中田英寿、中村俊輔、柳沢敦ら日本人選手を中心にセリエAを取材。2006年のドイツ・ワールドカップ後に帰国し、現在は日本代表、Jリーグを中心に取材を続けている。

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