川崎Fは30得点と持ち前の攻撃力を遺憾なく発揮しここまで無敗。対する名古屋は直近でリーグ新記録となる9試合連続無失点と堅守を見せている。この「ホコ×タテ」対決を前に、堅守名古屋の鍵を握るMF稲垣祥に話を聞いた。
川崎F相手には120%の執念が必要
――ここまで12試合で9勝2分1敗、失点3という成績です。チームとして手応えを感じているのではないでしょうか?
去年からやってきたベースがあって、それをピッチ上でみんなが共有しながらサッカーができていることが大きいと思います。そこに新戦力も加わりましたが、その選手たちがグランパスのサッカーを理解し、それを体現するために相当な努力をしながらやってくれています。それがいい方向に向いている要因だと思います。
――その中で川崎Fとの首位攻防戦です。昨季のホーム戦では“ウノゼロ”で勝利しましたが、素晴らしいゴールが決まりましたね。
僕もあのゴールは、去年のベストゴールだと思っています。全員がボールに絡み、幅も使いながら、選手それぞれの特長を出したことがあのゴールにつながりました。あそこで得点できたことで、自分たちのゲームの進め方が定まりましたし、進めやすくなったという印象があります。後半は押し込まれる時間が続きましたが、粘り強さやみんなの執念みたいなものがピッチに乗り移って守り切れた感じがします。
――最後まで耐えられた戦術や技術的な要因は?
あの時点でも、自分たちの守備の形を持っていたし、基本的に危ないところをどうやって抑えるのか、みんなで共有が出来ていました。ただ川崎Fさんはそれだけで守り切れる相手ではないので、プラスアルファで120%の執念が必要でした。
(今回も)もちろん先制したいし、リードを保った状態でゲームを進めたいですが、それは相手も同じこと。すべてうまくいくという事はないので、自分たちがどの時間帯でどういう振舞いをするべきなのか、しっかり対応しながらゲームを進めていきたい。対応力が勝負ですね。
ボールを持つこともカギ
――川崎の攻撃力についてはどう感じていますか?
川崎Fはやっぱり攻撃力があって得点力があって、得点を取れる選手が数多くいますよね。他のチームと違うのは、“ここを守れば大丈夫”というポイントがなくて、というか、守らないといけないポイントが多すぎて定めきれないところが川崎Fの特長だと思います。Jリーグファンのみなさんも“川崎Fの攻撃”対“名古屋の守備”のところが注目だと思いますけど、裏を返せばそこの逆にも大きな要素があるのかなと。僕たちがどう攻めて、川崎Fがどう守るかも試合の大きなポイントになるのかなと思っています。
――川崎Fに対して攻めるには、高い位置でボールを奪うことが必要そうですね?
それも理想です。去年の(JリーグYBC)ルヴァンカップでも高い位置で奪ってからゴールを取れています。でも、全部そうやっていても、全部はハマらない。川崎Fはすぐにボールを回収したいチームで、ボールを持たれることをすごく嫌うチームだと思うので、そこも自分たちがやるべきサッカーのカギになるのかなと思っています。
そういった時間を作れるということは、自分たちに流れが向いているということなので、ポイントの一つですね。でも実は紙一重で、川崎Fはそこで引っ掛けてショートカウンターも得点パターンの一つなので、本当に紙一重の攻防になるのかなと思います。
――川崎Fは本当に得点パターンがたくさんあって厄介な相手です。
攻撃の引き出しの多さはリーグナンバーワンだと思いますし、攻撃力が注目されがちですけど、守備も穴がなく、それぞれが持ち場の仕事をしっかりこなしてくる。そういう意味でも簡単な相手じゃないですね。
(ボランチの運動量は)絶対的に必要になってくると思います。相手のシステムに対して噛み合わせ方をボランチとしてはっきりさせてゲームを進めていきたいなと思います。
――話を伺っていると、守備のベースに手応えがある分、しっかり攻めるんだという意識を感じます。
もちろん守備のベースに関しては自信のあるところだし、ミスをしなければ、そう簡単に崩されないと思っているので、そこはある程度計算できます。だけど、その守備を助けるという意味で、攻撃のところでいかにボールを持って、どうやって攻めていくかが大事かなと思います。
――昨季のアウェイ戦ではセットプレーが勝負を分けました。
アウェイだったので、ある程度持たれるのは仕方がないところでしたが、結果はセットプレーが大きなポイントになりました。今回も絶対相手はセットプレーを狙ってくると思うので、そこの駆け引きでも相手を上回りたいです。
(逆に攻撃のセットプレーは)自分としても狙っていますし、相手も相当準備をしてくると思うので、駆け引きのところで負けないようにしたいです。ミドルシュートはたまたま入ってくれているだけですよ。ここ2〜3年でコツを掴んだというか、納得のいく軌道のシュートが打てていたんですが、なかなか決まらなくて。でも今年はたまたま決まってくれているという感じです。
普段やってきたことを出し切る
――稲垣選手は2・3月度の2021明治安田JリーグKONAMI月間MVP(J1)に選ばれたほど好調ですが、川崎FではDFの山根視来選手が好調で注目を集めています。代表でも一緒になりましたが印象は?
山根選手は攻撃参加のタイミングがいいし、上がった時のプレーの質も高い、得点にも絡める。なかなか捕まえるのが難しいイメージがありますね。でも代表で一緒にプレーして、その特長に加えて対人が強いなと感じました。韓国相手の1対1でもがっちり守っていたし、そういう能力も高いなと。やはり素晴らしい選手だと思います。
――山根選手も稲垣選手と同じように、中学時代はユースチームに上がれず、努力を重ねてようやく日本代表に上り詰めました。
そういった意味でも彼がこうやって川崎Fで活躍して、日本代表に入ったことの大変さは分かっているつもりです。僕らにしか伝えられないこともあると思うので、いま悔しい思いをしている子どもたちに夢を与えられたなら嬉しいです。
――その山根選手はどうやったら抑えられると考えていますか?
難しいですね。結局ほとんどの場合、山根選手一人で何かが起こっているわけではなく、上がっていくタイミングが良かったり、ワンツーの抜け出し方がうまかったりと、周りとの関りだと思います。周りの選手も含めた対応をチームとしてやっていきたいです。
でも分断させても左サイドなら三笘(薫)選手が1対1でどんどん仕掛けてくるし、三笘選手がスピードに乗った状態でドリブルをし始めたらそう簡単には止められない。僕らがサポートに行ってあげながら、相手に合わせた対応をしないと守り切れる相手ではないのかなと思います。
――考えなければいけないことが多い試合になりそうです。
そのあたりは、監督が相当準備をして僕らに提示してくれると思います。だからと言って「普段より数多く頭に叩き込まないと」というよりも、特別なことをするのではなく、今までどおり“やってきた準備を全て出せるか”が大事なのかなと思います。
みんなそこには自信を持っているし、チームとしての総合力が試されると思います。今季の自分たちは決して劣っていないと思っているので、自信を持ってこの2連戦を戦いたい。自分たちにもいろいろな引き出しがあると思っているので。
――2連戦ですが、まずは初戦について
2試合という考え方だと、両方持っていかれることになると思うので、まずは次のホーム戦に100%のエネルギーを注ぎこみますし、その試合に向けた最高の準備をしていきたい。2試合目のことやマネジメントは監督に任せて、目の前の試合で全力を尽くすだけです。
まずは自分たちらしく戦いたいし、自分たちが積み上げてきたものをしっかりと出し切りたい。そして、この首位決戦は勝つことによってクラブの価値が高められると思います。注目度も高いですし、クラブの代表として良い結果を出し、グランパスというチームの価値や存在感を高めたいです。
文・斎藤孝一
1965年、愛知県生まれ。テレビカメラマン、ディレクターとして活動後、2017年にスポーツジャーナリストに転身。現在はサッカー新聞エルゴラッソで名古屋・岐阜を担当する他、専門誌などで連載執筆中。
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