【開幕特集】湘南ベルマーレの新星、田中聡が掴んだ手応えと自信｜Jリーグ

2021シーズンのJリーグがいよいよ始まる。新型コロナウイルスの影響により、今季も困難なシーズンが予想される。そんな時だからこそ苦境に立ち向かい、人々に希望を与える「2021のヒーローになれ」というテーマのもと、湘南ベルマーレの「今季のヒーロー候補」田中聡に話を聞いた。

自信をつかんだ昨季の川崎フロンターレ戦

ーー昨年は2種登録選手としてリーグ戦17試合に出場しました。どのように振り返っていますか？

新型コロナの影響で試合が過密になったり、ディフェンスラインにけが人が増えたりしたことで、（浮嶋）敏さんも自分のことをユースから知っていたところもあったと思いますけど、そこで自分が使われるようになりました。その中で試合に出ることができて、自分としては「自分のプレーができた」印象は持っています。自分が想像していたものを遥かに超えるすごくいい経験になったと思いますし、自分のスキルアップ、これからのサッカー人生にもつながっていく1年だったと思います。

ーー多くの試合でプレーしたことで得た手応えを教えてください。

攻撃やビルドアップのところはJ1相手にも通用することがわかりました。それに守備のところでも1対1の局面でそんなに抜かれたり、敵わないと思ったりした場面がなかった。戦術のところでかなり難しさを感じることはありましたけど、個人戦術というか、個人のところはやれた実感があります。

ーー自信をつかめた試合はありましたか？

初スタメンで試合に出た川崎フロンターレ戦で、初めて3バックの左をやりました。その時に守備こそ1失点してしまいましたけど、意外と攻撃面でできるところがありました。それらを踏まえて、フロンターレ戦から敏さんの信頼というか、使っても大丈夫だろうと思ってもらえたと思います。

ーーあの試合では川崎FのFW家長昭博選手と対峙していたのを覚えています。

今までテレビなどで見ていて、すごく憧れるというか、Youtubeのプレー集を見ていたりするような雲の上の存在でした。そういう選手と実際にピッチに立って勝負できるのは、モチベーション的にも上がりましたし、興奮しましたね。その中でも、どう対応すればやられないかを試合の前に動画などを見ていましたが、対戦してみてやはり楽しかったです。

ーー昨年、様々な選手と対戦して感じた課題はありますか？

一番は、ディフェンスラインの連携面です。昨年のホーム最終節・大分（トリニータ）戦で2失点してしまいましたが、自分の背後を突かれて失点してしまった。そこの裏のケアやコーチングで伝えなければいけないところが、昨年の自分は全然できていませんでした。DF（石原）広教くん頼みだったところが大きいので、そこは改善していかないといけないと感じています。

ーーユースの先輩である石原選手の存在は大きかったんですね。

昨年はずっと広教くんに声をかけてもらっていて、自分の後ろのカバーを90分通してやってもらっていました。それだけでなく、試合で自分がいいプレーをした時にはすごく褒めてくれたり、集中していなかったら叱ってくれたりと、本当にいろいろしてもらったので広教くんには感謝しています。

ーー今年はどんな成長をしていきたいですか？

昨年は、チームとしても個人としてもなかなか結果を出すことができませんでした。個人としてはとりあえず試合にたくさん出てチームに貢献できるようなプレーをしたいですし、得点やアシストを積み重ねていくことで成長していきたいと思っています。

「結果を出せれば、自分も乗っていける」

ーー迎える開幕戦はサガン鳥栖との対戦となります。鳥栖の印象はいかがですか？

昨年2試合ともに出場していて両方とも引き分けでした。特にアウェイの鳥栖戦では自分のミスから失点してしまって、その悔しさがすごくあります。今年こそは勝ち切って、1年間のいいスタートを切れるようにやっていきたいです。

ーー鳥栖で警戒すべき選手はいますか？

自分の一つ下のDF中野伸哉という左サイドバックの選手は、結構仲が良くて一つ下なのに昨年2アシストを記録して自分より活躍していたので、そこは負けないようにしたいです。昨年は自分もチームにいい結果を残せるようなプレーをしたいと思っていましたけど、なかなかできなかったので、今年こそはという思いがあります。

ーー一方で、自分たちのキーマンとなる選手は？

FW石原直樹選手ですね。練習の時にナオさんが相手のFWにいるとすごく厄介で、本当にやりづらい選手なんです。ポジショニングだけでも困らせてきたり、自分が疲れて息が切れていたらそれを見て自分の背後にガンガン動いてきたり。そういうずる賢さを持っている選手です。得点を取る力もありますし、J1経験も豊富な選手が試合では味方になってくれると考えると、すごく頼もしいです。

ーー開幕戦大事な試合だと思います。勝敗を分けるポイントは？

鳥栖もすごく力があるチームだと思いますけど、ベルマーレも負けていないと思っています。その中で、やはり先制点を取ることが大事になってくると思います。もし自分が出場することになれば、どのポジションで出ても100%の力を出せるようにと思っています。開幕戦は1年のスタートを切る試合なので、すごく結果が大事になってくる。そこは試合に出て、勝って、自分も結果を出せれば、すごく自分も乗っていけると思うので、勝利にこだわってやっていきたいです。

アカデミーの後輩たちに目指してもらえるような選手に

ーー今年のJリーグのキャッチフレーズ「2021のヒーローになれ」。自分にとってのヒーローのような存在はいますか？

小さい頃のヒーローですか……。多くの選手がそうかもしれないですけど、自分は割と日本代表の試合を見に行っていたので、その時に思っていたのはMF本田圭佑選手です。自分のプレースタイルとは全然違いますけど、昔の記憶を掘り下げれば、すごく大事な試合で結果を残している印象が強い。代表でも得点を決めたり、結果をいつも出している選手だったので、小さい頃、サッカーを見ていて常に中心にいるのが本田選手でした。そういう意味ではヒーローという感じだったと思います。

ーーそういう選手は結構目で追ってしまいますよね。

小さい頃はただボールを追っていたので、そこで目立つようなプレーをしていると、その選手に目がいっていました。その時なら本田選手やMF香川真司選手の印象が強いです。

ーー田中選手もここからJリーガーとしての道を歩んでいくことになります。今度は自分がサッカー少年たちのヒーローになっていかないといけないですね。

昨年までユースの選手でしたけど、自分がベルマーレユースに入った時にMF（齊藤）未月くんがトップで試合に出ていて、未月くんと一緒にプレーしたいとすごく思っていました。そこは昨年叶えられてよかったですけど、今度は自分がアカデミーの選手から見られる立場になると思うので、アカデミーのお手本というか、目指してもらえるような選手になっていかなといけないと感じています。

ーーやはりピッチでは“湘南らしさ”を見せなければという思いはありますか？

未月くん、広教くん、MF（柴田）壮介くんにしても、戦うところや走るところはアカデミー出身の選手が得意なところ。先輩たちもそこを武器にしています。自分もそこを貫いてやっていかないといけませんし、そこにプラスアルファ違いを見せていけたらと思います。

ーー最後に新シーズンへの意気込みを教えてください。

今年は昨年と同じで過密日程になりますけど、自分が試合に出られる保証はありません。だからこそ、日頃の練習から全力でプレーしていきたいですし、試合に出た時には結果、ゴールやアシストでチームに貢献したいと思っています。プロ1年目ですけど、今年は勝負の年だと思っています。シーズンが終わった時に、昨年よりいいシーズンだったなと思えるようなシーズンになるように全力でプレーしていきたいと思います。

文・インタビュー　林遼平

埼玉県出身の1987年生まれ。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、フリーランスに転身。サッカー専門新聞「エルゴラッソ」の番記者を経て、現在は様々な媒体で現場の今を伝えている。