4試合を残しての"史上最速タイ"優勝だった。
3日に行われた浦和レッズ戦で勝点1を積み上げ、2位との勝点差を「13」に広げた川崎フロンターレは、2年連続となる通算4度目のリーグ制覇を達成した。これで5年で4度目の優勝だ。今季、序盤から圧倒的なパフォーマンスを続け、ここまで公式戦で敗れたのは1試合のみ。26勝7分1敗という成績、そして2位の横浜F・マリノスとの勝点差「13」を考えれば、いかに今年の川崎Fが強かったかがわかるだろう。
ただ、今季の川崎Fが順風満帆なシーズンを送っていたかと言われれば、決してそうではない。
特に東京五輪の前後に、シーズン序盤からチームを牽引していた田中碧と三笘薫が移籍して以降は難しい時期が続いた。特に8月後半から9月前半にかけて苦しんだ。前述の二人の穴を埋め切れず、加えてけが人が続出したことでパフォーマンスが低下。リーグ戦ではアビスパ福岡に今季初の黒星を喫すると、JリーグYBCルヴァンカップ、AFCチャンピオンズリーグと二つの大会では敗退を余儀なくされた。
ここからズルズル落ちていってしまうこともあり得ただろう。まさに、この時期は今年の川崎Fにとってターニングポイントだった。だが、そういう状況に陥っても最後までチャレンジする姿勢を貫けたのは、ブレない指揮官とチームの積み上げてきた底力にある。
勝ち進みながら新しいことにトライする
鬼木達監督は田中碧の移籍後、中央でボールを奪えない状況に「今の形にこだわる必要はないと思っている。ただ、今までの良さを消さない上で、ベストなやり方を探っていきたい」と語り、試行錯誤しながらチームを再度作り上げる。徳島ヴォルティス戦からは橘田健人を積極的に起用。豊富な運動量とボールを奪い取る力を持つ大卒ルーキーを抜擢すると、ここから後半戦のタフで我慢強い戦いを見せる川崎Fが構築されていく。
とりわけ試合に勝ちながら様々なトライをする姿が印象的だった。ダブルボランチの4-3-3や、4-4-2にも挑戦した。首位に立ちながらも、停滞するのではなくさらに前進するためにトライアンドエラーを繰り返した。
最終的には、一人ひとりの個性が発揮される最初の4-3-3に戻ったものの、アンカーはジョアン・シミッチに代わって橘田がスタメンに定着。中盤での奪いどころが増えたことでポゼッションする時間も増え、攻守のバランスが整った。特に守備面で大きな変化が見え、徳島戦以降は複数失点する試合がゼロという安定感を見せた。
また、この指揮官のチャレンジに応えた選手たちからも、近年積み上げてきた適応力の高まりを感じさせた。「ここ数年、様々な経験をしてきたからこそ、どんな状況が起きても対処できるようになっている」とは主将を務める谷口彰悟の言葉。昨年の王者であろうが、首位を走っていようが、さらに向上するために新たな変化に真摯に取り組む。試合に出場している選手だけでなく、なかなか出場機会に恵まれていない選手も、日々の練習からハードに取り組んでいるからこそ、チーム力が高まり、勝利という結果につながったのは間違いない。
優勝決定後、鬼木監督は選手たちを信頼することが大切だと言葉を口にした。
「薫や碧が抜けた後、選手たちがガンガンやっていた勢いが停滞したとき、『少し勢いが足りなくなっても、ここを耐えればまたみんな伸びてくるよ』と話していた。できるだけプレッシャーを与えすぎないように、焦らず自分の中でやってきた。自分は選手を信じていけば、必ず良い結果が生まれると思ってやっています」
チーム全体で掴んだ4度目のリーグ制覇。そこには変化を恐れず、前を向いてチャレンジし続けるチームの姿があった。
文・ 林遼平
埼玉県出身の1987年生まれ。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、フリーランスに転身。サッカー専門新聞「エルゴラッソ」の番記者を経て、現在は様々な媒体で現場の今を伝えている。
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