開幕から5試合連続無失点、4勝1分の勝点13で3位につける快進撃。得点は10で失点はゼロ。深刻な決定力不足に苦しみ、7戦勝利無しのスタートとなった昨季とは、実に対照的だ。
それも、若手選手が溌剌とピッチを縦横無尽に駆け回り攻め立てる、見応えのあるサッカーでだ。
変幻自在の3-5-2と独特のビルドアップ
では、昨季までと何が違うのか?
戦術自体が大きく変わったわけではないが、大きく変わったのはフォーメーション。4-3-3や4-4-2で戦っていた昨季から、今季は3-5-2に変更した。この3-5-2もオーソドックスな中盤にダブルボランチとトップ下を配置し、その前に2人の選手を並べるという形ではない。最前線に体を張ってボールキープできるFW2人を置き、中盤にはアンカーとその前に2人のインサイドハーフ、そして両ワイドにウイングバックを配置。最終ラインは3バックの形だ。
こう書くとなんということはないのだが、この3-5-2をベースに、鳥栖は独特のビルドアップを行う。
通常ではアンカーのMF松岡大起が最終ラインまで落ちて、いわゆるダウンスリーの形で攻撃を組み立てる。ボールの出どころとなる松岡をケアされた際は、すかさずGK朴一圭がビルドアップに加わり数的優位を作り出し、時にはインサイドハーフのMF仙頭啓矢やMF樋口雄太も低い位置まで落ちてきてビルドアップに参加。その時、3バックの左を務めるDF中野伸哉はサイドの高い位置で待ち構え、MF小屋松知哉もサイドにポジションを取る。また、相手が前からプレスをかけてきた時には、朴から一気に前線へフィードを送る。
このように鳥栖は相手のプレスを無効化させ、ゴール前まで容易にボールを運び、アタッキングサードに入ればサイドを広く使って攻撃を仕掛けていく。
例えば、第3節・ベガルタ仙台戦の4点目となった樋口のゴール。このゴールは左サイドを駆け上がった中野のクロスから生まれている。仙台は試合途中から3バックにして鳥栖の攻撃を封じようとしたが、それでも対応できなかった。鳥栖のビルドアップが機能し、ゴールへとつながった代表的なシーンである。
選手の配置とハードワークの融合
一方、開幕から5試合連続無失点の守備に目を向けると、攻撃と同じく、守備も数的優位を作るという基本は変わらない。
そこで重要な役割を果たすのが両ウイングバックだ。前線からプレスに行く時は前線や中盤のサポート役を務め、相手の攻撃を受け止める時には5バックを形成。そして、カウンターを受けて一気に背後のスペースを突かれた時には朴が広いエリアをカバーする。ちなみに前述の仙台戦で朴はGKの走行距離歴代1位をマークし、チームも今季トップの走行距離を叩き出している。
選手の配置とハードワークの融合。これが鳥栖の好調の要因にある。
そして忘れてならないのが監督の采配を含めた試合への準備だ。5人も先発メンバーを入れ替えた第5節・柏レイソル戦はそれまで見せたようなスピード感こそなかった。それでも2-0の勝利と堅実に勝ち点3を手中に収めている。
金明輝監督は「個々のキャラクターがあるなかで、同じことをするというのは難しい。彼らがしっかりと自分の良さを出してくれたらいいなというのはありました」と柔軟に采配を振るう。
肝心なのはピッチに立つ選手に何を求め、どんなプレーをさせるか。対戦相手の分析も含め、金監督は常に「いい準備をしたい」と話す。
短期間でチームに落とし込むのは難しいが、昨季から指揮官の下でプレーするFW林大地は「去年から大きく変えたところはありませんが、明輝さんが選手一人ひとりに落とし込んでくれるのでやっていてすごく心強いし、やりがいがあります。それを一人ひとりが感じていることが好調につながっている」と手ごたえを口にする。
ただ、好スタートを切ったからといって監督や選手たちが現状に満足しているわけではない。
「誰一人、現状に満足していない。難しい時期も出てくると思いますけど、そういった中でもブレずにいきたい。当然、微調整はしながらもっと前に進んでいけるようにしたい」。柏戦後、金監督は気を引き締め直した。
今節は5年ぶりとなるアビスパ福岡との『バトル・オブ・九州』。その舞台でも鳥栖が無失点を続ければ、1996年に横浜フリューゲルスが記録した開幕からの6試合連続無失点記録に並ぶことになる。
その進化とともに、記録にも注目したい。
文・荒木英喜
1968年生まれ。熊本県出身。出版社などのアシスタントを経て、フリーランスのライターとして活動。Jリーグや高校サッカーをはじめとするスポーツのほか、音楽関係などの取材・執筆を行う。
サガン鳥栖の試合日程
節 | 日時 | 対戦カード | スタジアム | 配信・放送予定 |
---|---|---|---|---|
1 | 2月27日(土)15:00 | 湘南ベルマーレ A | レモンS | DAZN |
2 | 3月6日(土)15:00 | 浦和レッズ H | 駅スタ | DAZN |
3 | 3月10日(水)19:00 | ベガルタ仙台 H | 駅スタ | DAZN |
4 | 3月14日(日)14:00 | 清水エスパルス A | アイスタ | DAZN 静岡放送 |
5 | 3月17日(水)19:00 | 柏レイソル H | 駅スタ | DAZN |
6 | 3月21日(日)14:00 | アビスパ福岡 H | 駅スタ | DAZN |
7 | 4月2日(金)19:00 | セレッソ大阪 A | ヤンマー | DAZN |
8 | 4月7日(水)19:00 | 川崎フロンターレ A | 等々力 | DAZN |
9 | 4月11日(日)15:00 | 横浜FC H | 駅スタ | DAZN |
10 | 未定 | 名古屋グランパス A | 未定 | DAZN |
11 | 4月24日(土)14:00 | FC東京 A | 味スタ | DAZN |
12 | 5月1日(土)16:00 | 徳島ヴォルティス H | 駅スタ | DAZN |
13 | 5月8日(土)14:00 | サンフレッチェ広島 H | 駅スタ | DAZN |
14 | 5月15日(土)16:00 | 大分トリニータ A | 昭和電ド | DAZN |
15 | 5月22日(土)14:00 | 鹿島アントラーズ H | 駅スタ | DAZN |
16 | 5月26日(水)19:00 | 北海道コンサドーレ札幌 A | 未定 | DAZN |
17 | 5月30日(日)14:00 | ヴィッセル神戸 A | ノエスタ | DAZN |
18 | 6月19日(土)19:00 | ガンバ大阪 H | 駅スタ | DAZN |
19 | 6月23日(水)19:00 | 横浜F・マリノス A | ニッパツ | DAZN |
20 | 6月27日(日)18:00 | 名古屋グランパス H | 駅スタ | DAZN |
21 | 7月3日(土)19:00 | サンフレッチェ広島 A | Eスタ | DAZN |
22 | 7月11日(日)19:00 | セレッソ大阪 H | 駅スタ | DAZN |
23 | 8月9日(月・祝)19:00 | FC東京 H | 駅スタ | DAZN |
24 | 8月14日(土)19:00 | 浦和レッズ A | 浦和駒場 | DAZN |
25 | 8月21日(土)19:00 | 柏レイソル A | 三協F柏 | DAZN |
26 | 8月25日(水)19:00 | 横浜F・マリノス H | 駅スタ | DAZN |
27 | 8月29日(日)19:00 | ベガルタ仙台 A | ユアスタ | DAZN |
28 | 9月11日(土)or 9月12日(日) | 清水エスパルス H | 駅スタ | DAZN |
29 | 9月17日(金) | 大分トリニータ H | 駅スタ | DAZN |
30 | 9月25日(土)or 9月26日(日) | アビスパ福岡 A | ベススタ | DAZN |
31 | 10月2日(土)or 10月3日(日) | 徳島ヴォルティス A | 鳴門大塚 | DAZN |
32 | 10月16日(土)or 10月17日(日) | 湘南ベルマーレ H | 駅スタ | DAZN |
33 | 10月23日(土)or 10月24日(日) | ガンバ大阪 A | パナスタ | DAZN |
34 | 未定 | 川崎フロンターレ H | 未定 | DAZN |
35 | 未定 | 横浜FC A | 未定 | DAZN |
36 | 11月20日(土) | 北海道コンサドーレ札幌 H | 駅スタ | DAZN |
37 | 11月27日(土) | 鹿島アントラーズ A | カシマ | DAZN |
38 | 12月4日(土) | ヴィッセル神戸 H | 駅スタ | DAZN |
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