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【コラム】スールシャールの限界を感じた一年。この男の成長なくして多くは望めない | 粕谷秀樹のNOT忖度

【コラム】スールシャールの限界を感じた一年。この男の成長なくして多くは望めない | 粕谷秀樹のNOT忖度DAZN
【欧州・海外サッカー コラム】プレミアリーグで2位、ヨーロッパリーグで準優勝に終わったマンチェスター・ユナイテッドの2020-21シーズン総括だ。粕谷秀樹氏がオーレ・グンナー・スールシャール監督に「限界を感じた」理由とは?

なんという結末だろうか──。

2020-21シーズンのヨーロッパリーグ(EL)決勝はPK戦に突入。しかも10人ずつが蹴ってひとりも失敗せず、ビッグゲームの決着が両チームのGKに委ねられるとは、ハリウッドの名脚本家でも思い描けない展開になった。

そしてビジャレアルのへロニモ・ルッリはみずから決め、マンチェスター・ユナイテッドのダビド・デ・ヘアがグラウンダーで狙ったPKを、ものの見事にストップした。

ビジャレアル、ヨーロッパタイトル初戴冠!

さて、ユナイテッドである。勝つべき試合内容だった。ビジャレアルには申し訳ないが、勝ってしかるべき相手である。29分に先行を許したとはいえ、ビジャレアルの枠内シュートはその1本のみ。ユナイテッドはつねに主導権を握り、相手陣でプレーする時間が非常に長かった。なにしろPK戦を迎えるまで、デ・ヘアは仕事をする機会がほとんどなかった。

ユナイテッドのオーレ・グンナー・スールシャール監督は、延長戦やPK戦を想定し、ゲームプランを組み立てていたとは思えない。あくまでも90分で決着をつけるようなプレー強度であり、時間が経つに連れてユナイテッドの足色が鈍くなっていったのは当然だった。

しかも信頼の表れか、もしくは控えを信用していないのか、決して調子の良くなかったマーカス・ラッシュフォードをPK戦まで使い続けた。一対一で勝てず、ボールコントロールがずれ、決定機では痛恨のキックミス(ラストパスを配したブルーノ・フェルナンデスはオフサイドだったかもしれない)を犯した選手を、だ。

ラッシュフォードにこだわった理由が見当たらない。そもそも彼は、肩や足首に故障を抱え、万全のコンディションにはほど遠かったはずだ。

また、スールシャールは試合の流れがつかめていないのか、1回目の選手交代は延長前半の10分。遅すぎる。試合終了間際のフアン・マタ、アレックス・テレスの投入もPK戦のためとはいえ、あまりにもバタバタしていた。

一方、ビジャレアルのウナイ・エメリ監督は60分から88分までに4回の選手交代を敢行。フレッシュな選手を加え、プレー強度を維持する配慮が感じられた。

マルシャル重用による"大罪"

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EL決勝に限らず、スールシャールは特定の選手に固執する傾向がある。戦術はB・フェルナンデスありきで、今シーズンは点が取れなくても、プレスをかけなくても、パスをもらえないと不貞腐れても、なぜかアントニー・マルシャルを起用してきた。

その結果、マタやダニエル・ジェイムズ、ドニー・ファン・デ・ベークは、マッチフィットネスを整えられなかった。これは監督の"大罪"といって差し支えない。

多くの選手と良好な関係を構築し、プレミアリーグで2位、ヨーロッパリーグも準優勝。2020-21シーズンは及第点だ。来シーズンも続投するのだろう。ただし、リヴァプールにアクシデントが続出していなかったら、2位を確保できただろうか。チャンピオンズリーグのグループステージ敗退を、重い事実として捉えるべきではないのだろうか。

スールシャールの限界を感じた一年でもある。

EL決勝終了後、B・フェルナンデスは悔し涙に暮れていた。カバーニは一点をジッと見つめ、感情をコントロールしているように映った。敗れたのだから当然だ。ヘラヘラしているような奴は闘う資格がない。

「フェルナンデスとカバーニにはグッと来るものがあった。あのふたりは負けるのが大嫌いで、今回もかなり傷ついていると思う。でも、笑っている連中を何人も見た。いいチームになったもんだよ」(ポール・スコールズ)

「残酷かもしれないが、準優勝で満足しちゃいけないんだよ」(リオ・ファーディナンド)

OBから厳しい言葉が相次いでる。栄華を知る彼らにとって、試合終了後に談笑していた何人かの選手が腹立たしかったのだろう。スコールズの「いいチームになったもんだよ」は、強烈すぎる皮肉である。

ロジャーズを引き抜けるのなら…

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OBの発言を踏まえると、スールシャールは選手に優しすぎるのかもしれない。負けても平然としているようなタイプは、叱責しても構わない。モルデ、カーディフ、ユナイテッドと、シニアチームを率いるようになってから10年が経過したのだから、飴と鞭を使い分けてもいい頃だ。

そして上層部は、特定の選手に依存している事実を問わなければならない。マンチェスター・シティのペップ・グアルディオラ監督、リヴァプールのユルゲン・クロップ監督、チェルシーのトーマス・トゥヘル監督などと伍す力があるのか、検討しなければならない。戦術の幅は、レスターを率いるブレンダン・ロジャーズ監督の方がはるかに広い。

「失意から得るものは数多くあり、今回の結果はいい教訓になる。まだ望む場所には到達できてないレベルであることを、つくづく思い知らされた」

EL決勝後の記者会見で、スールシャールも落胆の色を隠さなかった。準決勝で敗れた昨シーズンも、似たようなニュアンスの発言だった。この男が成長しないかぎり、ドルトムントのジェイドン・サンチョを獲得しようが、ハリー・マグァイアの相棒としてトップクラスのセンターバックが加入しようが、多くは望めそうにない。

レアル・マドリードのジネディーヌ・ジダン監督が退陣するという。インテルのアントニオ・コンテ監督はクラブ側と話し合った末、現行の契約を今シーズン限りで解除した。あるいはロジャーズを引き抜けるのなら、ユナイテッドはきっときっと強くなる。

文・粕谷秀樹

1994年、日本スポーツ企画出版社刊の『ワールドサッカーダイジェスト』編集長に就任。その後、同社の編集局次長を務め、01年に独立。以降、プレミアリーグやチャンピオンズリーグ、情報番組、さらに月平均15本のコラムでも、エッジの利いた発信を続ける。東京・下北沢生まれ。

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