【コラム】レスターがマンチェスター・シティに快勝しても不思議ではない ｜ 粕谷秀樹のNOT忖度 ｜ コミュニティ・シールド

グリーリッシュの初出場は…

現地時間8月5日、マンチェスター・シティがアストンヴィラからジャック・グリーリッシュを獲得した。移籍金はイングランド史上最高額の1億ポンド（約152億円）で、2027年6月までの6年契約。セルヒオ・アグエロ（現バルセロナ）がつけていた10番を託された。好待遇といって差し支えない。

ただ、7日（日本時間8日）に控えるレスターとのコミュニティ・シールドで、いきなりグリーリッシュが出場するとは考えづらい。ピッチに立ったとしても、短い時間に限られるのではないか。そもそも彼に限らず、シティの主力メンバーは欠場する公算が大きい。

なぜなら彼らは昨シーズン、チャンピオンズリーグ（CL）決勝に出場した。しかも大半のレギュラークラスがEURO、コパ・アメリカに参戦したため、まだ十分な休息がとれていない。バッドコンディションの選手に無理強いするはずがないペップ・グアルディオラ監督は、コミュニティ・シールドで若手をテストすると考えられる。

また、シティ加入が噂されるハリー・ケインに関しては、バカンス先のバハマ、フロリダから帰国したばかりで、交渉は進展していないとみるのが妥当だろう。すでにプレミアリーグ開幕節の欠場もほぼ決定しており、戦線復帰を8月下旬に定めて猛トレーニングに励む予定だ。

ところで、ケインの夢は実現するのだろうか。グアルディオラ監督は、「世界最高のフォワードに興味を持たないクラブなど存在しない。われわれも関心がある。すべてはトッテナム次第だ」と語っていた。意味深というべきか、獲得間近を示唆しているかのようでもある。

こうした経緯からも、ケインの心はすでに決まっていると考えるべきだ。

「なにがなんでもシティでプレーする」

イングランドのメディアを見ても、「トッテナムのダニエル・レヴィ会長は最後まで粘るはずだが、渋々移籍を認めるのではないか」との見方が大勢を占めつつある。遅くとも、移籍市場が終了する英国時間31日23時までには決着するということか。

バルセロナ退団が決まったリオネル・メッシについては、かねてより噂のあるシティに新天地を求めるとは思えない。全盛期ならいざ知らず、34歳になって衰えを隠せなくなった。プレー強度の高いプレミアリーグには不似合いだ。グアルディオラ監督のチームプランに入る余地はない。

まして給与総額は年間3500万ユーロ（約45億3000万円）だ。移籍金が発生しないといっても、グリーリッシュの獲得に152億円を費やしたうえ、推定市場価格が180億円前後のケインも獲るとなれば……。メッシを迎えるのは、経済的なリスクが大きすぎる。

 大差で敗れると低迷に直結も

一方、FAカップ覇者としてコミュニティ・シールドに臨むレスターからも、GKカスパー・シュマイケル、DFチャーラル・ソユンジュ、MFユーリ・ティーレマンスなどがEUROに出場した。ただ、シティに比べれば、疲弊している選手の数は少ない。

DFジョニー・エヴァンズ、ジェイムズ・ジャスティン、MFハーヴィー・バーンズなど、昨シーズン終盤に負傷で倒れた選手たちもサマーキャンプで順調に調整しているという。

また、この夏にザルツブルクから加わったパトソン・ダカ（下写真）にも注目だ。ジェイミー・ヴァーディの負担を軽減できるFWで、昨シーズン急成長したケレチ・イヘアナチョなどとともに、コンディションの整っていないシティDF陣を追いつめる可能性は決して低くないはずだ。

残念ながら期待のDFウェズレイ・フォファナは欠場する。4日のテストマッチ（対ビジャレアル）で後方からの悪質なタックルを受け、腓骨を骨折したからだ。ブレンダン・ロジャーズ監督も「しばらくの間は欠場する」と認めている。

しかし、近年のレスターは進境著しい。最終盤に負傷離脱者が相次ぎ、あと一歩まで迫っていたCL出場権を2シーズン連続で逸したものの、試合内容も成績もアーセナルとトッテナムより上。レスターはいわゆるビッグ6の一角を完全に崩した。

万全からほど遠いシティが相手なら、レスターが快勝しても不思議ではない。

コミュニティ・シールドは新シーズンの開幕を告げる、いうなれば “顔見世興行” だ。プレミアリーグの覇権やCL出場権をめぐる争いに大きな影響を及ぼさない。とはいえ、大差で敗れるとスタートに弾みがつかず、序盤の低迷に直結する。

レスターはシティを圧倒し、気持ちよくシーズンを迎えたいところだ。開幕節からのスケジュールはウォルヴァーハンプトン、ウェストハム、ノリッジ、そしてふたたびシティと相まみえる。開幕4連勝、あるか!?

文・粕谷秀樹

1994年、日本スポーツ企画出版社刊の『ワールドサッカーダイジェスト』編集長に就任。その後、同社の編集局次長を務め、01年に独立。以降、プレミアリーグやチャンピオンズリーグ、情報番組、さらに月平均15本のコラムでも、エッジの利いた発信を続ける。東京・下北沢生まれ。