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【コラム】悩めるアーセナルへの緊急提言「覚悟を決めてアルテタに託した方がいい」| 粕谷秀樹のNOT忖度 | プレミアリーグ

【コラム】悩めるアーセナルへの緊急提言「覚悟を決めてアルテタに託した方がいい」| 粕谷秀樹のNOT忖度 | プレミアリーグ(C)Getty Images
【欧州・海外サッカー コラム】プレミアリーグでクラブ史上最悪のスタートを切ったアーセナル。指揮官交代の噂も飛び交う名門に、粕谷氏は「覚悟を決めてアルテタに託した方がいい」と提言する。

今夏は売りより買いを優先

  • ベン・ホワイト:5265万ポンド(約78億9750万円)
  • マルティン・ウーデゴール:3150万ポンド(約47億2500万円)
  • アーロン・ラムズデール:2520万ポンド(約37億8000万円)
  • アルベルト・サンビ・ロコンガ:1575万ポンド(約23億6250万円)
  • ヌノ・タヴァレス:720万ポンド(約10億8000万円)

大盤振る舞いである。今夏の移籍市場に、アーセナルは1億3225万ポンド(約198億3750万円)もの巨額を投入した。

しかし、売りより買いを優先した結果、本稿執筆時点で1億579万ポンド(約158億6850万円)のマイナスだ。ニューカッスルに2646万ポンド(約39億6900万円)で売却したジョー・ウィロックを除き、人員整理は遅々として進んでいない。

市場が最終盤を迎えたいま、売り手も買い手も切羽詰まっている。はたしてアーセナルは、どこまでマイナスを補えるのか。

5000万ポンドを超える高額の移籍金が期待できるタレントはいない。ピエール=エメリク・オーバメヤンとアレクサンドル・ラカゼットは、ふたり合わせて4000万ポンド(約60億円)程度だ。ウィリアンを含めると5000万ポンドに近づくだろう。

もちろんDFのキーラン・ティアニー、ガブリエウ、MFのブカヨ・サカ、エミール・スミス・ロウは非売品である。

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さて、少なからぬメディアとサポーターが、ラムズデールを疑問視している。直近2シーズンで900分以上プレーしたGKのうち、セーブ率はリーグ16位の68.5%だった。首位はエミリアーノ・マルティネス(アストンヴィラ)の75.4%、2位はディーン・ヘンダーソン(マンチェスター・ユナイテッド)の74.9%。彼らだけでなく、ラムズデールのそれは同僚のベルント・レノ(71.6%)にも見劣りする。

闘い方や所属クラブのレベルが違うため、一概には比較できない。セーブ率では胸を張れないものの、276回を記録したセーブ数はリーグ最多である。あくまでもレノがレギュラーで、ラムズデールは二番手なのだから、直近2シーズンのデータは無視すべきかもしれない。

しかも、まだ23歳だ。この年齢のとき、エデルソン(マンチェスター・シティ)はベンフィカのレギュラーをようやく掴みかけ、アリソン(リヴァプール)はローマの控えGKに過ぎなかった。

ただ、レノの去就は依然として微妙であり、本人の気持ちはほぼほぼ移籍に傾いている、との噂がもっぱらだ。推定市場価格は2000万ポンド(約30億4000万円)。前述した収支を合わせるための人材とも考えられ、レノが離脱した場合はラムズデールが一番手になる。ライバルチームのGKに比べると心もとない。

また、彼のキャリアがサポーターの不安を増幅させている。一昨シーズンはボーンマス、昨シーズンはシェフィールド・ユナイテッドと、2シーズン連続でプレミアリーグからの降格を経験しているからだ。

さらに、ラムズデールの推定市場価格が1100万ポンド(約16億5000万円)程度にもかかわらず、なぜ倍以上も支払ったのか。足もとを見られたのか、先行投資としてなら妥当な額なのか。今後の売却やその他の新戦力も含め、アーセナルの強化部門はマネジメント能力を問われることになる。

今季を“リスタート元年” に

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強化部門の不手際が現場に直結したわけでは決してないが、アーセナルは開幕戦からつまずいた。今シーズン、チャンピオンシップから昇格してきたブレントフォードに攻守ともに圧倒され、0-2の苦杯を舐めている。

第2節のチェルシー戦も、同じスコアで屈した。完成度の違いや選手個々のレベル格差まで見せつけられ、シュート数は相手より16本も少ない6本。チアゴ・シウヴァ、エンゴロ・カンテ、ベン・チルウェル、ティモ・ヴェルナーがベンチを温めるヨーロッパ王者に対し、アーセナルは体調不良のホワイト、ガブリエウ、トーマスを起用できなかった。

闘う前から、結果は見えていたのかもしれない。試合終了後、チェルシー・サポーターに「You’re going down」(おまえら降格するぞ)と嘲笑されるほど、アーセナルは無様だった。

ノーゴールで開幕2連敗。アーセナルにとって、クラブ史上最悪のスタートになった。当然、ミケル・アルテタ監督に懐疑的な緯線が投げかけられる。2019年12月の就任以降、公式戦は45勝18分25敗。勝率は5割をわずかに超えた程度だ。厳しく評価されても言い訳できない。

「バカげた失点を繰り返している」(バカリ・サニャ)

「彼らの試合は見る気がしない」(エマヌエル・プチ)

名伯楽アーセン・ヴェンゲルのもと、アーセナルに黄金期を築いたOBたちも怒りと絶望を隠さなかった。

しかし、今シーズンを “リスタート元年” に位置づけられないだろうか。冒頭に挙げた5人の新戦力はいずれも20代前半だ。ティアニーは24歳、ガブリエウは23歳、スミス・ロウは21歳、サカは9月で20歳と若い。

ダヴィ・ルイスが契約満了とともにクラブを去り、オーバメヤン、ラカゼット、ウィリアン、エクトル・ベジェリンも重視されていない現状を踏まえると、アーセナルは完全に “未来志向型” だ。

次節はマンチェスター・シティ戦(日本時間28日20:30)である。勝ち目は薄く、アルテタ解任論のボルテージが高まるに違いないが、彼に代わる妥当な人材がいるのだろうか。アーセナルのキャプテン経験があり、このクラブのDNAを知る彼を長い目で見るべきではないだろうか。

ユヴェントスやチェルシー、インテルなどで成功したアントニオ・コンテはより完成度の高いクラブを求める。エディ・ハウ(元ボーンマス監督)はネームバリューに欠ける。エルネスト・バルベルデ(元バルセロナ監督)は57歳という年齢が新生アーセナルにふさわしくない。

監督の首を挿げ替えるのは簡単だ。ただし、適当な人材が見当たらないのだから、覚悟を決めてアルテタに託した方がいい。あのユルゲン・クロップ(リヴァプール監督)も、一朝一夕にして今日の地位を築いたわけではない。

文・粕谷秀樹

1994年、日本スポーツ企画出版社刊の『ワールドサッカーダイジェスト』編集長に就任。その後、同社の編集局次長を務め、01年に独立。以降、プレミアリーグやチャンピオンズリーグ、情報番組、さらに月平均15本のコラムでも、エッジの利いた発信を続ける。東京・下北沢生まれ。

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