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【連載】ディノ・ゾフの現代ゴールキーパー論 | イタリアサッカー界の重鎮が登壇「カルチョS級講座」第6回

【連載】ディノ・ゾフの現代ゴールキーパー論 | イタリアサッカー界の重鎮が登壇「カルチョS級講座」第6回(C)Getty Images
【インタビュー】イタリアサッカー界の重鎮がカルチョの魅力や神髄に迫る当連載。第6回は1982年スペイン・ワールドカップの優勝メンバーでもある伝説の守護神、ディノ・ゾフ氏による現代ゴールキーパー論だ。

コーディネーション能力の高い長身GKが増加

私が現役選手としてプレーしていたのは1960~1980年代。もう40年前の話になります。当時と現在の比較はそもそもナンセンスかもしれません。

ですが、大きな変化なら挙げられます。ここ数年でゴールキーパーの大型化がさらに進みました。私は身長182cmほど。これでも当時は大きいほうでしたが、いまや190cmオーバーは当たり前の世界です。

ひと昔前までは身長と身体能力の高さは反比例するイメージがありました。背が高いことが必ずしも武器になったわけでなく、逆に器用さや俊敏さに欠けるとマイナス面が強調されていたように思います。

それこそ10~20年前、サッカーが盛んなイタリアでさえ、190cm近い高身長ならバレーボール、またはバスケットボールといった道に進むのが自然だったほどです。

そんな流れも変わりました。トレーニングなどいろんなことが進化した証しでしょう。190㎝を超えていても、バランス、リズムといったコーディネーション能力の高いゴールキーパーがセリエAで増えました。

一方でまったく変わらないのが、イタリアのゴールキーパーの質の高さです。昔も今も世界トップレベルを維持しています。自信を持ってそう断言します。

今シーズンのセリエAでプレーしているゴールキーパーも優秀な選手ばかり。彼らの実力と同等かそれ以上のゴールキーパーは、世界中を見渡しても3~4名ほどしか浮かびません。

例えば、リヴァプールアリソンは確かに良いゴールキーパーです。ブラジル代表のゴールも守り、UEFAチャンピオンズリーグを制した2018-2019シーズンなどは、私も当時のベストゴールキーパーと評していました。

ただ、今シーズンのパフォーマンスは及第点にほど遠いレベル。3~4人の中に彼の名前は入っていません。

シーズンを通し、安定したプレーを求められるのがゴールキーパーというポジション。世界トップレベルまで上り詰めるには、その安定したパフォーマンスを数年にわたって発揮することが必要です。

セリエAにはインテルのサミル・ハンダノヴィッチ、トリノのサルヴァトーレ・シリグ、ユヴェントスヴォイチェフ・シュチェスニといった安定感抜群の名手がたくさんいます。

2021年1月に43歳となるジャンルイジ・ブッフォンでさえ、ピークはとっくに過ぎたもののまだまだ高いレベルを保っています。

ローマのスペイン人GKパウ・ロペスは個人的に好きなゴールキーパー。37歳のアントニオ・ミランテに定位置を奪われていますが、私の評価はまったく逆ですよ。

ローマ界隈ではポジショニングなど欠点ばかり指摘されていますが、私は彼の高いキャッチング能力など長所を買っています。

パウ・ロペスは間違いなく過小評価されています。ローマは何事にも一喜一憂する独特な街。外国人選手にとってはとくに難しい環境ですが、彼の巻き返しに期待しています。

私が掴んだような成功をドンナルンマにも

ここまで挙げたゴールキーパーはみな経験豊富なベテランですが、若手も負けていませんよ。

喜ばしいことに、ここ数年のセリエAではイタリア出身の、それも将来性豊かな若いゴールキーパーが次々と頭角を現しています。

筆頭株はなんと言っても、ミランジャンルイジ・ドンナルンマでしょう。すでに200試合以上の公式戦出場経験があるのでベテランに思われがちですが、実はまだ21歳。

2020-11-22-donnarumma-milan

順調にスター街道を駆け上がっている印象です。身体、精神力ともに超一流になりえる素質を持っているので、私が掴んだような成功をぜひ彼にも収めてもらいたいものです。

ナポリのアレックス・メレトも私が期待するイタリア人ゴールキーパーです。彼なら輝かしいキャリアを築ける。そう信じて疑いません。

監督のジェンナーロ・ガットゥーゾも同感のはず。32歳のコロンビア代表ダビド・オスピナと交互に起用しているのは、メレトにそれほど重圧を与えたくないという親心からでしょう。メレトはまだ23歳。良い素材なので、今後の成長が楽しみです。

他にはアタランタのピエールルイジ・ゴッリーニも伸びしろが多く、興味深い逸材。ケガが多いのは少し気がかりですが、躍進を遂げているチームにあって確固たる地位を築き上げています。

1-1のドローに終わった12月16日のユヴェントス戦では、クリスティアーノ・ロナウドのPKを止めていましたね。25歳とまさに伸び盛りです。

あとはカリアリのアレッシオ・クラーニョも面白い存在です。26歳の彼の特徴は、驚異的な瞬発力。高い身体能力を生かしたプレーはまさにスペクタクルそのものです。観ていてワクワクします。

「足下の技術が必要」に異論はないが…

将来性豊かな彼らに共通して言えることがあります。優れたハンドリング技術です。

後ろからのビルドアップが攻撃のスタートラインとなりうる近代サッカーでは、「ゴールキーパーもフィールドプレーヤー同様の足元の技術が必要だ」といった論調が目立ちます。

それに何ら異論はありません。ただ、足元の技術ばかりクローズアップされ、それによってゴールキーパーの特性であるハンドリング技術がぼやけてしまうのでは、本末転倒でしかありません。

仮に、あなたが中位または下位のチームでプレーしているゴールキーパーだとします。格上チームとの対戦で、攻め込まれ続ける戦況を頭に思い描いてみてください。

サイドからクロスがどんどん上がってくるでしょう。ゴール前でのフリーキックやコーナーキックといったセットプレーの場面も当然、増えるでしょう。

そんな状況下でもっとも重要になりえる技術とは何か。ハイボールの対処、もっと言えばハイボールに対するキャッチングといったハンドリング技術ほかなりません。

もしペナルティーエリア内に上がってきたクロスをジャンプしてキャッチできれば、そこで相手チームの攻撃はいったん途切れます。逆にキャッチできるボールを弾いてしまえば、相手にボールを拾われ2次攻撃、3次攻撃を許してしまう状況に陥りかねません。

サッカーは流れやリズムが大事なスポーツでもありますから、このちょっとした差がかなり大きいんです。

先ほども言ったように、ゴールキーパーも足元の技術に優れていることに越したことはありません。

ただ、その固定観念に縛られ、ゴールキーパーの本質を見失うことだけはあってはいけません。私はそう強く主張します。

幸い、今のセリエAのゴールキーパーはきちんとした指導を受けているようで、どの選手からもしっかりとしたキャッチング技術が見てとれます。

若い選手はとくにこれからもゴールキーパーの本質をしっかりと心得た上で、順調に育っていってほしいものです。

インタビュー:アルベルト・コスタ
翻訳・構成:垣内一之

訳者プロフィール/1998年にイタリアに移住し、約8年間、中田英寿、中村俊輔、柳沢敦ら日本人選手を中心にセリエAを取材。2006年のドイツ・ワールドカップ後に帰国し、現在は日本代表、Jリーグを中心に取材を続けている。

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