U23アジアカップでU-21日本代表が属するグループDを、地元ウズベキスタンの記者は「死のグループ」と称した。
前哨戦となった今年3月のドバイカップにおける上位3チームが同居しているからだ。
優勝したU-21日本代表、準優勝のU-23サウジアラビア代表、3位のU-23UAE代表。
そこにU-23タジキスタン代表を加えた4チームによって争われたが、終わってみれば下馬評どおり、日本とサウジアラビアが2勝1分で「死のグループ」を突破した。
UAEとの初戦は2-1、優勝候補のサウジアラビアとの第2戦は0-0、タジキスタンとの最終戦は3-0。サウジアラビアが初戦でタジキスタンを5-0と下したため得失点差で2位に回ったが、及第点の内容だった。
「23人でこの大会を勝ち切ります」
チームを率いる大岩剛監督はそう宣言したように、グループステージの3試合で23人の登録選手中、GK佐々木雅士を除く22選手を起用し、総力戦の姿勢を明確にした。
UAE戦では、公式戦からしばらく遠ざかり試合勘に問題のあった欧州組のMF斉藤光毅とDFチェイス・アンリを、「やらないとコンディションは上がらない」との理由であえてスタメン起用。斉藤は前半で交代、チェイスは失点に絡んでしまったが、思惑どおりサウジアラビア戦では復調し、ふたりとも合格ラインのプレーを披露した。
サウジアラビア戦ではスタメンを3人しか入れ替えなかったが、タジキスタン戦ではターンオーバーを採用し、スタメンを10人変更。1、2戦目で出番がなく、「結果で見返したいと思う」と意気込んでいたMF松木玖生が先制ゴールを決めるなど、メンバー変更による戦力ダウンを大きく感じさせることはなかった。
その松木に加え、UAE戦ではエースストライカーのFW細谷真大、攻撃の軸であるMF鈴木唯人、タジキスタン戦では唯一の大学生であるFW佐藤恵允、「和製ハーランド」こと身長188cmのFW中島大嘉と、取るべき人がゴールをマークしているのもいい。
とりわけタジキスタン戦の終了数秒前に、中島が大会初ゴールを決めた意味は大きい。「大会の得点王になって、この大会の主役となって、スーパーヒーローとして帰国する」とうそぶくムードメーカーの一撃は、攻撃陣に大きな刺激を与えたに違いない。
3試合で感じられたチームの強み
(C)2022 Asian Football Confederation (AFC)
グループステージの3試合では、選手たちの戦術理解度の高さ、臨機応変さも見てとれた。
サウジアラビアとの第2戦を迎えるにあたり、大岩監督は「もっとボールを保持しなければ勝てない」と分析し、2-1と勝利したUAE戦から選手の立ち位置を変えた。4-3-3から4-4-2に変更した上で、2ボランチを組むMF山本理仁とMF藤田譲瑠チマのどちらかがボール保持の際、状況に応じてセンターバックの脇に降り、ビルドアップを安定させることでボールを前進させていった。
こうした臨機応変さは、藤田や山本、鈴木唯、MF松岡大起といったポリバレントな能力を持った選手によって生まれている。「ミーティングでみんなと話し合ったところで、うまくやれたと思います」と藤田は手応えを覗かせた。
第2戦が終了した時点で出場機会を得られていない選手もいたが、チームの雰囲気がすこぶるいいこともこのチームの魅力だ。試合翌日のサブ組だけのトレーニングも笑顔と活気に溢れている。大岩監督が「悔しい気持ちを良い方向に持っていけば、チームとして全体がグッと上がる」と檄を飛ばす一方で、所属クラブで試合経験を積んでいる選手が少なくないことも理由のひとつだろう。レギュラー、あるいは準レギュラーの立場で公式戦のピッチに立ち、責任を背負ってプレーしているため、チームに貢献する意味をほとんどの選手が理解しているのだ。
「ポジションを取り返したいけど、たとえベンチスタートになってもいい準備をして、チャンスが来たときにチームを勝たせられるプレーをしたい」
センターバックのレギュラーと目されながら、1、2戦目は控えに回ったDF馬場晴也はキャプテンマークを巻いたタジキスタン戦後、決勝トーナメントでの巻き返しを誓いながら、チームへの貢献を強調した。
準々決勝の相手は、U-23韓国代表となった。
マジョルカでMF久保建英とチームメイトだったMFイ・ガンイン、グラスホッパーでプレーするスピードスターのFWチョン・サンビン、清水エスパルス所属の長身FWオ・セフンなど、好タレントを擁するチームだ。
グループステージではU-23ベトナム代表と1-1のドローを演じるなど、本調子ではなかったが、サウジアラビアと並ぶ優勝候補の一角。日本戦ともなれば、120%の力で挑んでくるに違いない。チームを率いるのが、古き良き日韓ライバル時代にエースストライカーとして活躍したファン・ソンホンなのだから、なおさらだ。
東京五輪代表は18年のアジア大会決勝で、リオ五輪代表は14年のアジア大会準々決勝で、いずれも当時2歳上のU-23韓国代表に敗れている。2世代続けてチームの立ち上げ直後に洗礼を浴びたが、その実力差がその後の成長の指針となったのは間違いない。
とはいえ、大岩監督は「経験を積みに来たわけではない。優勝を目指している」ときっぱり断言する。
勝負強く、まとまりがあり、現時点で好チームに仕上がっている印象だが、韓国戦こそ真価が問われるゲームとなる。「僕たちが目指しているのは、もっと先」(松木)と言うなら、こんなところでライバルに屈するわけにはいかない。
文・飯尾篤史
1975年生まれ。東京都出身。明治大学を卒業後、週刊サッカーダイジェストを経て2012年からフリーランスに。10年、14年、18年W杯、16年リオ五輪などを現地で取材。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』、『残心 中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』などがある。
AFC U-23アジアカップ 試合日程(全試合DAZNが独占配信)
準々決勝
日時 | 試合 |
---|---|
6月11日(土)22:00 | オーストラリア vs トルクメニスタン |
6月12日(日)1:00 | ウズベキスタン vs イラク |
6月12日(日)22:00 | 韓国 vs 日本 |
6月13日(月)1:00 | サウジアラビア vs ベトナム |
2022年6月15日(水)~6月16日(木)
3位決定戦
2022年6月18日(土)
決勝
2022年6月19日(日)
関連コンテンツ
『THE PREVIEW -AFC U23アジアカップ 2022-』
未来につながる今を視点に、「いつか日本がワールドカップで優勝するための5つの事」をテーマに、出演者が厳しい意見も交えながら激論を繰り広げます。また、番組内では、チームを率いる大岩剛監督、松木玖生選手(FC東京)などのインタビューもたっぷりとお届けします。
MC:野村明弘
出演:水沼貴史、福西崇史、飯尾篤史(スポーツライター)
『やべっちスタジアム』
毎週日曜日23時~配信中
5月29日(日)の配信では、今大会を大特集します。番組ではU23アジアカップで日本が初めて優勝を果たした2016年カタール大会の決勝の模様もプレイバック。注目選手もたっぷりと紹介します。大会期間中の配信でも、日本戦を中心にたっぷりと試合の情報をお届けします。
MC:矢部浩之、アシスタント:黒木ひかり、解説:中田浩二(5月29日)
『内田篤人のFOOTBALL TIME』
毎週木曜日配信中
今大会を特集した企画を配信予定。
『Jリーグプレビューショー』
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明治安田生命J1リーグのスコア予想はもちろん、5月は今大会の企画も配信中。DAZN独占選手インタビューから、クイズ形式などで大会を紹介します。
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#11 配信中 出演:坪井慶介 DAZN独占インタビュー 松木玖生(FC東京)
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#14 5月26日配信 出演:佐藤寿人 DAZN独占インタビュー 大岩剛監督
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