優勝争いは「本命PSG・対抗リヨン」
2020-21シーズンのリーグアンが8月21日(日本時間22日)に他国に先駆けて開幕する。
新型コロナウイルスの影響で前代未聞の打ち切りとなった昨シーズンは、トゥールーズとアミアンのリーグドゥ降格が決定。その2部からはRCランスとロリアンが昇格した。なお、今季は交代枠が3から5に増えている。
優勝争いの本命は例年通りパリ・サンジェルマン(PSG)だ。長くチームを支えた看板選手エディンソン・カバーニとチアゴ・シウヴァは去ったが、「今がパリで最高の時だ」と充実感を隠さないネイマールの存在がなにより頼もしい。エースは現在、キャリアの絶頂期にある。
ネイマール、キリアン・ムバッペ、マウロ・イカルディ、アンヘル・ディ・マリアで構成するファンタスティック4の攻撃力は異次元だ。
対抗馬はリヨン。昨季は序盤のつまずきが大きく影響して7位に沈んだが、ユヴェントス、マンチェスター・シティを撃破したCLでポテンシャルを存分に証明した。
メガクラックに成長したウセム・アワールを筆頭に、マックスウェル・コルネ、下部組織出身のマクサンス・カクレなど若手の成長が著しく、チーム力は底上げされている。移籍市場での多少の戦力流出が予想されるが、名物会長ジャン=ミシェル・オラスのやり繰りで大きな戦力ダウンは避けたいところ。
久しぶりにCLの舞台に立つマルセイユは、フロントと対立していた指揮官アンドレ・ヴィラス=ボアスの留任が最大の朗報だろう。選手からの信頼が厚く、勝負強いチームを作った功績は計り知れない。
最大の敵は財政難。換金目的の主力放出は避けられないため、その穴をいかに小さくするかがカギになる。
モナコとボルドーが監督交代で再起へ
監督を交代したチームにも注目が集まる。ボルドー、ニーム、そして前バイエルン・ミュンヘン監督のニコ・コヴァチを急転直下で迎え入れたモナコだ。
オファーは「驚きだった。物事がとても速く進んだんだ」と語ったコヴァチは、「フットボールの哲学は、フランクフルトもバイエルンも異なる。ただ、私はインテンシティの高いフットボールが好きだ」と今後の方向性を示唆している。
フランクフルト時代に長谷部誠のリベロ抜擢などで注目されたコヴァチが、ここ数年低迷するモナコの立て直しに手腕を発揮するはずだ。
フロントと監督の衝突など内紛続きのボルドーは、ジャン=ルイ・ギャセを新監督に招聘した。
かつてPSGでローラン・ブランの右腕を務めたほか、モンペリエやサンテティエンヌを立て直した実績を持つ1953年生まれの老将だ。控えめな人柄と確かな戦術眼で「火消し役」として評価されている。
そもそもボルドーはキャプテンのGKブノワ・コスティル、元アーセナルのDFローラン・コシェルニー、元ガンバ大阪のFWファン・ウィジョら実力者がズラリ。12位に沈んだ昨シーズンからの巻き返しは十分に期待できる。
ヴィエラ率いるニースが台風の目に!?
昨季のPSG戦で弱冠16歳にしてMOMに輝いたエドゥアール・カマヴィンガ擁するレンヌはCLとのハイレベルな両立なるか。また、堅守が売りのスタッド・ランスはクラブ史上初のヨーロッパリーグ(EL)に臨み、パトリック・ヴィエラはニースの監督として初のヨーロッパカップ戦に挑む。
ニースの話題はヴィエラだけではない。オーナー企業であるイギリスの化学会社『イネオス』の意向で積極的な強化を図っており、今夏はウイングのロニー・ロペス(セビージャ)や左SBのアッサンヌ・カマラ(スタッド・ランス)など、リーグアンでの実績を持つタレントを補強。台風の目になる可能性は十分にありそうだ。
日本人選手にも触れておこう。
マルセイユの酒井宏樹は高い守備能力で評価されていたが、昨季は足首のケガを抱えながらのプレーで精彩を欠き、攻撃性能の高いブナ・サールにやや遅れを取った。しかし、リーグ中止後に手術を決断。今季は万全の状態で臨める。
一時移籍報道も出たが、最新の報道では左も可能なユーティリティ性を買われ、残留に傾いているようだ。
ストラスブールの川島永嗣は今季、チャンスが回ってくる可能性が高い。正守護神のマッツ・セルスが7月にアキレス腱を断裂したからだ。
一昨季のクープ・ドゥ・ラ・リーグ優勝に貢献した若手のバングル・カマラというライバルも存在するが、川島は開幕直前のプレシーズンマッチ(ディジョン戦とメス戦)で先発している。37歳のベテランがアルザスの人気クラブのゴールを守ることになりそうだ。
注目はベルギーリーグ得点王のデイヴィッド
コロナの影響で移籍市場の動きは少ないが、注目を集める新加入選手はカナダ代表のFWジョナサン・デイヴィッド。昨季ブレイクしたヴィクター・オシムヘン(今夏にナポリへ)同様にベルギーリーグからリールに加入した経歴もあり、開幕前の段階から話題をさらっている。
ハイチ出身の両親のもとニューヨークで生まれたデイヴィッドは、移住先のカナダでフットボールを始めた。ベルギーリーグのヘントに加入したのは2018年夏で、2年目の昨シーズンに見事リーグ得点王(18ゴール)に輝いている。
オシムヘンは典型的な9番タイプだが、デイヴィッドは10番としても輝ける万能型のFWだ。左サイドからのカットインなどのドリブル、アタッキングサードで逆サイドまで見渡せる広い視野、枠内率3分の2という抜群のシュート精度が長所で、フィニッシャーとしてもパサーとしても期待は大きい。
「FARMERS LEAGUE」
リヨンがCLのマンチェスター・シティ戦で勝利した後、ムバッペはSNSでこう呟いた。
リーグアンは3連覇中の王者PSGの1強リーグとして「FARMERS(=農民)LEAGUE」と揶揄されることが多く、ムバッペはそれを皮肉り、ライバルクラブを賞賛したのだ。CLでのリヨンの躍進は、リーグの価値を高めた。FARMERには才能の種を育て収穫し、素晴らしい作物を出荷する誇りがある。
ぜひあなたの目で、新たな才能を発掘して欲しい。
文・西 達彦
ボイスワークス所属(局アナ経験なし)。Jリーグ・リーグアン(DAZN)ONE(abemaTV)なでしこリーグ(YouTube)マリーンズナイター・高校野球(チバテレ)西武ファームなど実況。趣味は乗り物全般、渋谷系音楽。
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