見事な一撃であった。
58分、ペナルティエリア内右でパスを受けると小野のテクニックがさく裂。寄せてきた相手をスルリとかわし、得意の左足を迷いなく振り抜いた。次の瞬間、きれいな弧を描いたボールがゴールに吸い込まれていった。
「トラップの時点で相手が来ていることが分かっていたので、誘ってかわしたら自分の得意な形だった。シュートの前のプレーで決まった印象があります。右(の位置)で持ったらファーサイドを見る習慣が常にあって、体を開いて持ったときにコースがすぐに見えたので迷わずに打ちました」
ただ、試合後はゴールの喜びよりも勝てなかったことへの悔しさが上回った。チームはまたしても得点直後のクロスから決められる“お決まりのパターン”で失点し勝点2を逃した。そのことに小野は「全員が声をかけてやろうとはしていたけど、連続しているのでまぐれではないと思う。そこは強く受け止めないといけない」と危機感をにじませ、「勝点3を取れるゲームでしたし、取らないといけないゲームだったと思うので本当に悔しい」と無念さを口にした。
今季でプロ3年目。大宮のアカデミーで育ち、明治大学を経由して帰ってきたレフティーにはプロ1年目、2年目にはなかった責任感が芽生えている。
「去年までは自分の評価を気にしていたけど、いまはチームのために何ができるか、勝たせるためにどうするべきか、チームのことを考えることが本当に増えた」
いま、チームは少しずつ見えてきている光を頼りにもがいている最中だ。結果が出ない状況に選手、スタッフ全員が頭を悩ませながらも「やっていることは間違っていない」とブレずに踏ん張っている。
そこでチームを勝たせるために必死な小野が口にしたのは主体性。結果が出れば流れに乗れそうな状況まで来ているからこそ、ここから突き抜けていくためには「最後の部分で自分たちが変わらないといけない」と発破をかける。
3連敗となった前節・FC町田ゼルビア戦では試合後に目に涙を浮かべ、連敗は止まったが勝ち切れなかった今節・東京V戦では天を見上げた。ホームに首位のアルビレックス新潟を迎える次節は変わった姿を見せる打ってつけの舞台。責任を背負う41番に笑顔が宿る瞬間が待ち遠しい。
小野雅史(1996年8月9日生まれ)
年度 | チーム | Div | 得点 | 出場 |
---|---|---|---|---|
2021 | 大宮 | J2 | 2 | 7 |
2020 | 大宮 | J2 | 3 | 35 |
2019 | 大宮 | J2 | 0 | 2 |
文・須賀大輔
1991年生まれ、埼玉県出身。学生時代にサッカー専門新聞『ELGOLAZO』でアルバイトとして経験を積み、2016年からフリーライターとして活動。現在、ELGOLAZOではFC東京と大宮アルディージャの担当記者を務めている。
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