6月3日のUAE戦から15日間に及んだU-21日本代表のAFC U23アジアカップは、オーストラリアに対して3発快勝の3位という成績で幕を閉じた。
この結果、2年後のパリ五輪予選の組分けにおける「ポッド1」という成果を得たが、それ以上に大きな収穫がある。
「我々のスタイル、コンセプトを高めるうえで貴重な6試合だった」
大会終了後、大岩剛監督はそう振り返った。24年のパリ五輪を目指す大岩ジャパンが立ち上げられたのは今年3月。産声をあげたばかりのチームにとって、約3週間にわたる長期合宿を行えたことこそが、何よりの成果だった。
若き日本代表は、U-23UAE代表に2-1、U-23サウジアラビア代表と0-0、U-23タジキスタン代表に3-0、U-23韓国代表に3-0、U-21ウズベキスタン代表に0-2、U-23オーストラリア代表に3-0と、6試合を戦い抜いた。
チームコンセプトのひとつが、ボールを保持して主導権を握ること。すべてのゲームで相手を入念に分析し、ビルドアップの形やプレッシングの形をいくつか準備し、ゲームを優位に進めていくことを試みた。その際、ピッチ上で選手自身が臨機応変に判断して戦う姿勢もよかった。
もちろん、「まだまだ簡単にマイボールを手放してしまうところがある」と指揮官が指摘したように、課題は決して少なくないが、「自分たちのやりたいサッカーがはっきり見えてきた部分が多かった」と言うMF鈴木唯人の言葉にはうなずけた。
指標となる韓国戦、教訓にすべきウズベキスタン戦
(C)2022 Asian Football Confederation (AFC)
そのハイライトとなったのが、準々決勝の韓国戦だった。
韓国はグループステージから布陣とポジションを変えてきたものの、「プランBまで用意していたなかで、選手たちが臨機応変にやってくれた」と大岩監督。2ボランチのMF藤田譲瑠チマとMF山本理仁が縦関係になりながら、ひとりがビルドアップのヘルプに向かってボールをスムーズに動かす。ときにロングボールで相手の背後を狙って揺さぶった。
鈴木唯が直接FKを決めて先制すると、前半は日本が5つの決定機を作ったのに対して韓国は0。後半は反撃を許したが、FW細谷真大と鈴木唯が決めて突き放す。コンタクトプレーでピッチ上に倒れ込むのは、韓国の選手ばかり。試合内容でも闘う姿勢においてもライバルを上回り、大岩ジャパンの今後の指標となるゲームだった。キャプテンの藤田は「相手のレベルは高かったけど、チームとしてやるべきことがしっかりできた」と胸を張った。
反対に、教訓としなければならないのが、ウズベキスタンとの準決勝だ。
立ち上がりからチーム全体の動きが鈍く、まったく主導権を握れない。それまでの4試合の好ゲームが嘘のように、何もできないまま2ゴールを叩き込まれ、あっけなく敗れてしまった。「油断したとか、調子に乗ったとかはないんですけど、ミスが続いてリズムを作れなかった」と藤田は嘆いた。
開催地のタシケントは、日中40度に迫るほどの猛暑だった。しかも大会は2日の試合間隔で進む。それだけでも負担が大きいのに、ウズベキスタン戦ではMF三戸舜介が出場停止。さらに4選手に新型コロナウイルス陽性反応が出て、18人のメンバーでやり繰りしなければならないという不運の影響はあっただろう。
その一方で、コロナ禍によって約2年半、国際試合を行えていない世代だけに、経験不足は否めない。悪いなら悪いなりにどう耐えていくのか。どうやってチェンジ・オブ・ペースを試みるのか。その際、誰がリーダーシップを執るのか……。鈴木唯が悔やむ。
「0-1になっても、それ以上失点しないという考えでやらないといけなかったのに、そうした試合運びができなかった。本当にまだまだ経験が浅いんだなと思い知らされました」
とはいえ、チームメイトだけでなく、コーチングスタッフまでもがコンディション不良で離脱していく特異な状況のなか、酷暑のウズベキスタンで若き日本代表が力強く、したたかなゲームを演じてきたことは間違いない。
アジアの大会に出場したのは初めてだったにもかかわらず、3ゴールをマークした鈴木唯は「フィジカルコンタクトのところは負けてなかったし、攻撃でも守備でも強度高く続けられた。今大会は自信になることが多かった」と振り返った。
プレーメーカーとして存在感を発揮した山本は「攻撃も守備も十分戦えた印象がある。今日(オーストラリア戦)もゴールに絡む仕事ができたので、充実した大会でした。タフな大会でしたけど、間違いなく今後につながる」と笑顔を見せた。
一方、先発出場は1試合で、1ゴールにとどまったストライカーのFW中島大嘉は険しい表情をのぞかせた。
「この試合(オーストラリア戦)で本気でハットトリックをして得点王になることを狙っていたので、1点も決められず、チームに貢献できずに交代したのは悔しくて、不甲斐ない。どんなチーム、どんな試合、どんな状況でも結果を出せる選手にならないといけない」
今大会で得た自信も悔しさもすべて所属クラブに持ち帰り、今後の成長の糧にしたとき、初めて酷暑のウズベキスタンでの経験に、大きな意味が生まれる。
3位決定戦翌日の19日もタシケントで過ごした彼らは、20日の便で帰国の途につく。国内組の多くは週末のJリーグのピッチに立つはずだ。どれだけ逞しくなって帰って来たか、その目で確認してもらいたい。
文・飯尾篤史
1975年生まれ。東京都出身。明治大学を卒業後、週刊サッカーダイジェストを経て2012年からフリーランスに。10年、14年、18年W杯、16年リオ五輪などを現地で取材。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』、『残心 中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』などがある。
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2022年3月7日に初のトレーニングを行った若き日本代表は、2024年に開催されるパリ五輪を目指すチームとなる。3月にはドバイカップに参加し、優勝を飾るなど、素晴らしいスタートを切ってみせた。そんなチームが6月に迎えるのがU-23アジアカップ。6月1日に開幕する大会で日本はグループDに入り、初戦でUAE、第2戦でサウジアラビア、第3戦でタジキスタンと対戦する。この大会を勝ったところで五輪の出場権が決まるわけではないが、チームを強化していく上でも重要な戦いになることは間違いない。新たな若き日本代表の奮闘に期待だ。
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