スポーツディレクター(SD)として、ローマやラツィオ、ボローニャなどセリエAの各クラブを渡り歩いてきたヴァルテル・サバティーニ氏。2000年以降、イタリア人ディレクターとして唯一、4チーム(ラツィオ、パレルモ、ローマ、インテル)をヨーロッパの舞台へと導いた“勝者のSD”であり、2019年には日本代表DF冨安健洋をシント=トロイデンからボローニャへ引き抜いたことでも知られる。
そんな名ディレクターが『ダゾーン・イタリア』の「Kick off」に出演し、インタビューで語ってくれた。
サレルニターナの奇跡の偉業
サバティーニ氏は、今年1月に残留争い中の最下位サレルニターナのSDに就任。すると半年後、残留請負人のダヴィデ・ニコーラとのタッグにより、絶望的とされていたセリエA残留を奇跡的に勝ち取って見せた。
「偉業はたった1人で達成できるものではない。選手たちや監督、クラブ幹部、そしてサレルノの人々が一丸となって勝ち取ったものだ。私のキャリアにおいても、サレルニターナのセリエA残留は最高の充実感を得ることができた出来事だった」
Getty
ミランとナポリの路線が唯一の道
昨シーズン限りでサレルニターナを離れ、現在はフリーとなっているサバティーニ氏。「次に行くクラブでは、監督としてダニエレ・デ・ロッシを連れていきたい」と語る敏腕SDは、近年、低迷するセリエAについて見解を示した。その打開策として、若手が躍動するナポリやミランの例を指摘した。
「仕事をしていないのは非常につらいが、私はセリエAとセリエAのチームが大好きなんだ。イタリアのカルチョが成長傾向にあることは明らかだ。現在は、順位表で中堅以下のチームも積極的なプレーを見せるようになった。するとチームだけでなく、選手たちも成長できる。こうした勢いがカルチョを救うことになるだろう」
「財政難を抱えるイタリアでは、ナポリやミランのようなやり方が唯一可能な路線だと言える。すなわち無名の若手を発掘し、勇気を出して試合で使っていくことだ。ただし、獲得するだけではダメ。プレーをさせる必要がある」
元サレルニターナSDは、現時点において、セリエAで最も素晴らしいパフォーマンスを見せているチームを問われると、ルチアーノ・スパレッティ率いるナポリを挙げた。
「友人の(パオロ)マルディーニや(フレデリック)マッサーラには悪いが、ナポリがずば抜けて良いパフォーマンスを見せている。縦を狙った攻撃陣のプレーは素晴らしいし、夏の補強も並外れていた。それにものすごい指導力を持ったスパレッティもいる。質と量を兼ね備えた中盤で上手くチームを機能させている」
「また攻撃陣はあらゆる対戦相手のディフェンスラインを崩すことができる。抑え込むことができないコントロール不能な(フヴィチャ)クヴァラツヘリアもいる。ミランも強力なチームだが、ナポリも最後までスクデット争いを繰り広げていけるだけの戦力を持っているはずだ」
(C)Getty Images
“最後の10番”ディバラ
一方、サバティーニ氏の古巣であるローマは、今夏の移籍市場において、フリーの即戦力となるFWパウロ・ディバラを獲得した。
「ディバラはカンピオーネ(王者)だ。なぜ、他のビッグクラブが獲得しようとしなかったのか理解できない。ディバラなら、どこへ行っても活躍できたはずだ。なぜなら彼には打開力があるからだ。0-0などで決まったかに見える試合でさえ、ディバラの1キックで変えることができる」
「彼は『最後の背番号10番』なんて言われているが、私もその通りだと思う。だがカルチョを始めたばかりの少年が目指すのは10番であり、今後も新たな選手が出てくるかもしれない。10番は不滅だからね」
「ディバラは私の選手ではないが、大好きなんだ。表彰式で一緒になったことがあるが、親切で礼儀正しい若者だった。だから彼が出場する時は、良いプレーをしてゴールを挙げて欲しいし、それから特にケガをしないことを願っているよ」
(C)Getty images
ザニオーロの限界を作り出す要因
続いてサバティーニ氏は、今シーズンのセリエAで躍動する若手選手に注目。マルディーニが今夏、ミランに呼び寄せた至宝FWシャルレ・デ・デ・ケーテラーレについて、「彼は破壊者だ。5つ星の補強と言えるだろう」述べたほか、改めてナポリのジョージア代表FWに賛辞を贈った。
「クヴァラツヘリアは、あらゆるクオリティが並外れており、強力な選手だ。特に彼の容赦しない“怒り”は怖さがある。供給されたボールをすべて同じようにさばくこともできる。ナポリの補強は、羨ましいくらいの並外れたものだだった」
さらに自身が今年1月に獲得した元サレルニターナのMFエデルソンにも言及。今夏から新天地アタランタでプレーする23歳MFにエールを送った。
「エデルソンはフィジカルおよび技術的クオリティを持った卓越した選手だ。サレルニターナのセリエA残留における主役の1人であり、大きな成長を見せた。今シーズンは(ジャン・ピエロ)ガスペリーニの下で適応しなければならないが、彼ならできるはずだ」
一方、ローマのMFニコロ・ザニオーロには限界の要因を指摘し、アドバイスを与えた。
「ザニオーロは重要な選手だ。デュエルでのフィジカル勝負を好み、時には度を過ぎることもある。プレー中に力を抜き、リラックスすることを学べば、マークが不可能な選手になるはずだ。ぶつかる相手を求めるような彼のプレースタイルが限界を作り出している」
GETTY
幻に終わったムヒタリアンの獲得
さらに敏腕ディレクターは、過去に獲得してきた選手を振り返ると、自身の“最高の補強”にマルキーニョスを挙げた一方、“獲得が実現せず悔やんだ選手”はMFヘンリク・ムヒタリアンであったことを明かしてくれた。元ローマのディレクターは、代理人ミーノ・ライオラ氏との当時のやり取りを回想した。
「ミーノはある日、ミラノにいた私の所へやって来て、『ムヒタリアンっていう選手を知っているか?』って言うんだ。私は『もちろん知っている。非常に強いアルメニア人選手だ。すぐに獲得したいのでローマに連れてきてくれ』と答えたのだが…」
「彼はさすがにミーノ・ライオラだった。その後、ムヒタリアンを別のクラブへと連れて行った。ブンデスリーガのドルトムントにね。私はこうしてムヒタリアンの獲得を逃したんだ」
Getty
面倒くさい選手だったインテル指揮官
選手時代のシモーネ・インザーギを知る元ラツィオ幹部は、インテル指揮官が当時から指導者としての片りんを見せていたことを明かしつつ、王座奪還を目指すミラノのチームについて自身の見解を示した。
「かつて見たこともないほどの面倒くさい奴だった。ピッチでプレーしていた時からみんなに話しかけて指示を出し、監督の仕事をしようとしていたからね。そして実際に監督に転身した。ラツィオでは素晴らしいカルチョを見せたが、インテルではまた別の仕事を求められている」
「それにラツィオでは、穏やかに過ごすことができたことも重要だった。彼には時間を与える必要があるだろう。おそらく来年1月の移籍市場で補強する必要もある」
(C)Getty images
ユーヴェにスクデットのチャンスは?
最後に元サレルニターナSDは、1カ月にわたって未勝利のまま苦境に立つマッシミリアーノ・アッレグリ指揮下のユヴェントスについて言及。スクデット争いから脱落したと考えるのは時期尚早であると指摘した。
「ユヴェントスにスクデットのチャンスはまだある。ローマが7、8ポイントをリードしていた時、逆転されたこともあるので、今年だって優勝できる可能性はある。いつになるか分からないが(ポール)ポグバや(フェデリコ)キエーザが復帰すれば、競争力を取り戻せるはずだ。それにマックスなら、チームを立て直し、再び歩み始めることができるはずだ。ユヴェントスが脱落したとは思わない方がいい。ユーヴェは戦い続けるだろう」
Getty
関連記事
● ディバラのローマ移籍に恩師アッレグリが太鼓判「彼に適したチーム」その理由は? | セリエA
DAZNについて
DAZNなら好きなスポーツをいつでも、どこでもライブ中継&見逃し配信!今すぐ下の記事をチェックしよう。