疑惑のシーンは、カタールW杯グループC第3節のポーランドvsアルゼンチンの36分に巻き起こった。
アルゼンチンの攻撃シーンだ。一度はGKに阻まれたボールを拾ったフリアン・アルバレスがクロスを入れると、このボールにリオネル・メッシが反応。一方でポーランドは、守護神のボイチェフ・シュチェスニーがクロスに対し、前に出て処理しようとする。シュチェスニーはボールに触れず、一方のメッシも頭には当てたが、枠に飛ばすことはできなかった。
ただ、リプレイ映像を見ると、シュチェスニーの左手がメッシの顔面にヒット。メッシはシュート後にピッチに倒れ、顔面を抑えて痛がる素振りを見せていた。ここでVARが介入。主審はオンフィールドレビューを行った結果、判定が変わり、アルゼンチンにPKが与えられた。この判定は妥当だったのか議論が行われた。
多くの波紋を呼んだ一連のシーンを平畠啓史氏は、「シュチェスニーの手も反応した流れで、顔に当たってしまったという感じだった」とノーファウルを主張する。
この一戦をスタジアムで現地観戦していた佐藤寿人氏は、「スタジアムの雰囲気がそうさせたなというのを感じた」と主張し、「起きた瞬間は何もザワザワとしせず、そこでメッシが倒れていたことでアルゼンチンのサポーターが立ち上がって文句を言い始めた。そこで少し圧力みたいなものを感じて、主審がVARを見にいく形になった」と現場での雰囲気を伝えた。
その上で「接触があったのはメッシがボールを触れた後。先に触っている以上はGKが来たことで影響を受けていたかと言われれば、決して受けていない。僕がメッシの立場ならファウルを受けたとは思わない」とストライカーの目線で意見を述べた。
一方で鄭大世も、「僕の中ではノーファウル」と主張するが、一方で「こうやってスローで見たらあまり当たっていないように見えるが、実際のスピードだと結構痛いんですよ」と明かす。その上で、PKになった理由を「メッシだからですよ」とキッパリと断言。その上で自身の経験に基づくこんなエピソードも明かした。
「Jリーグでも名前は言いませんけど、名プレイヤーに対してはかなりレフェリングが甘くなる。それは全員選手は思っているけど、絶対に言えない。それを言うと怒られちゃうから。だから現役を引退した今、言うんですけど、それは確実にある」とぶっちゃけ、今回も、「メッシだから会場の雰囲気がファウルじゃないかという騒然とした雰囲気になって、レフェリーもメッシだからやばいなというのが絶対にあります」と断言した。
この爆弾発言を受けて家本氏は「ミット破れてたかな…(笑)」と笑いを誘った上で、この一連のシーンをこう解説した。
「VARの精神としてはっきりと、明白な間違いが大前提としてある。ただ今大会は、これもPK?というのがいくつかある。ただ競技規則上は正しいっちゃ正しい。結果的にGKはボールに触ることができなかった、結構な勢いで相手に対してチャレンジしてしまった、顔という重要な部位にコンタクトしてしまったということを踏まえて、競技規則上は不用意なコンタクトと言える状況。反則と言われることも十分に理解できる」。
また家本氏は、「メッシだからというのを否定はしないが、ポーランド対サウジでも世界的な著名度に関係なく、(PKにしている)事実はある。なので人の影響が絶対ないとは言えないが、有名じゃない選手が同じようなファウルを受けた時に採用しないかと言われると、採用している事実もある」と反論しているが、今大会のVAR適用における基準については、「個人的にはちょっと細か過ぎる」と疑問を呈している。