FIFAワールドカップ(W杯)カタール2022は佳境を迎え、現地時間9日、優勝候補の南米の強豪2カ国が準々決勝の舞台に立った。両チームともに引き分けのまま、PK戦までもつれこんだが、リオネル・メッシを擁するアルゼンチンがオランダに勝利を収めた一方、ネイマールがけん引するブラジルは、前回大会の準優勝国クロアチアを前に涙を呑んだ。
そんなカタールW杯について、『ダゾーン・イタリア』の解説陣が、W杯特番「Night Cup」の中で見解を示した。オラツィオ・アッコマンド記者は「熱狂的な一日だった」と振り返ると、ステファノ・ボルギ記者も自身の見解を示した。
「ブラジルが敗退し、アルゼンチンは勝ち残ったが信じられないほどに苦しむなど、ものすごい準々決勝の2試合だった。1チームが勝利を手にしたように見えたところで、真逆の展開になったり、メンタル面の要素がカギになるかと見えたら、別の要素が決定力を示したりした。本当にあらゆることが起きた」
オランダの魔術師と半神半人のメッシ
ボルギ記者はまず、オランダ対アルゼンチンを分析した。アルゼンチンが前半のうちに先制に成功し、さらに後半、メッシのPKで追加点を挙げて試合を決めたかに見えたが、途中出場したヴァウト・ヴェフホルストが終盤にドッピエッタ(1試合2得点)をマークして2-2で延長戦へと持ち込んだ。
「オランダが試合を振り出しに戻せたのは、またしてもベンチに座る魔術師(ルイ)ファン・ハールのおかげだ。そして前線を目がけたロングボールを駆使したことも正解だった。アルゼンチンはこれに驚き、しり込みしたように見えた」
「ヴェフホルストのインパクトもすごかったが、後半アディショナルタイムのあのフリーキックは、オランダ勢にしかできない。あれを蹴ろうとする冷酷さはオランダ勢にしかない。ただ、その冷酷さがPK戦では見られなかった」
カタールW杯はメッシの大会
73分にPKを沈めてW杯で通算10得点目を記録した35歳のメッシ。本人は、今回が最後のW杯となることを示唆しているが、ボルギ記者はカタール大会が“メッシのW杯”であると確信している。
「今回はメッシのW杯だ。彼のプレーももちろんのことだが、ピッチへ入る姿や、疲れた時、怒った時、笑った時、チームをけん引している時の表情からも伝わってくる。PKを決めた後、ゴール裏のファンの目の前で両手を広げた時に見せたあの眼差し。これはメッシのW杯なんだ! 彼自身も自分の大会であると感じているはずだ」
「また、同時代に一緒にプレーする同僚たちにとってもアイドルのような存在だ。リサンドロ・マルティネスがやって来てキスをしたり、(ロドリゴ)デ・パウルがボールを手渡したり、そんな様子は、アキレスと古代ギリシャの人々のように見える。メッシは不死身の半神半人のようであり、栄光へ導いてくれることをチームメートたちは分かっているのだろう」
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ブラジルは敗退に値しなかった
続いてボルギ記者は、クロアチア対ブラジルを振り返り、自身の見解を示した。ブラジルは敗退に値しなかったと指摘する一方で、クロアチアも勝利にふさわしかったとし、両チームを称えた。
「ブラジルは勝っているように見えた。結果は期待外れだったかもしれないが、パフォーマンスが期待外れだったとは思えない。ただ、ブラジルは敗退にふさわしくなかった一方で、クロアチアは、チームスピリットや組織力、さらには細部で見せたクオリティにおいて、準決勝進出にふさわしかった。繰り返すが、技術面で考えれば、ブラジルは期待外れのパフォーマンスで敗退したわけではない。常に良いパフォーマンスを見せていただけに、ネイマールのことを思うと残念だ」
するとイタリア人記者は、これまでセレソンで輝かしい活躍を見せることができなかった背番号10番の悲運を語り出した。
「キャリアを振り返れば、ネイマールは物議を醸す態度をとったこともあったかもしれない。だが、代表において幸運に恵まれていたとは言えないはずだ。母国開催の(2014年)W杯では重傷を負い、コパ・アメリカ(2019)ではブラジルが優勝を飾ったが、彼はケガで不在だった」
「今回のW杯においても再びケガをしたし、この敗退だ。ネイマールはこれまで、ブラジルにおいて決定的な役割を担えなかったとして責められてきたが、今日は、極めて重要で素晴らしいゴールを挙げ、決定的な仕事をした。ところが彼の責任ではないが、ブラジルは敗退してしまった」
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過小評価されてきたGKの躍動
ボルギ記者は、この試合のMVPにクロアチア代表の守護神ドミニク・リヴァコヴィッチを選出。日本戦でもPK戦で大活躍を見せたディナモ・ザグレブのGKに賛辞を贈った。
「リヴァコヴィッチは120分間で11本のシュートを防いだが、そのうち7本はエリア内からのシュートだった。リヴァコヴィッチはまたしても表紙を飾る人物となったが、これは格別にうれしく思う。長年にわたって高いレベルのプレーを見せてきたが、過小評価されてきたGKだと考える」
得点王はエムバペに?
最後に『ダゾーン・イタリア』の解説者は、今大会の得点王を予想した。現地時間の12月9日時点で、5ゴールを挙げたフランス代表のキリアン・エムバペが首位に立ち、4ゴールのアルゼンチン代表メッシが背後から追いかける。ボルギ記者は2人のうちのどちらがタイトルを制するかを問われると、フランス代表FWを挙げた。
「エムバペはまだ準々決勝をプレーしていない時点で1ゴールのリードがある。エムバペには抗えない。メッシはチームをけん引し、アシストでも何でもできるが、エムバペの方がよりストライカーと言える。どちらかを選ぶなら私はエムバペを選択する」
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