今季を迎えるにあたり、町野修斗には思うところがあった。
「去年は自分の目標より全然点を取ることができず、結果を残せなかったことが悔しかった。J1で試合に出るのは今年2年目。今年こそ2ケタ(得点を)取りたい」
湘南に加入した昨季、町野は1年を通してコンスタントに出場を重ねた。2トップの一角に入り、背後へ抜けてボールを引き出せば、間でキープして味方の押し上げを促し、得意のターンを交えて攻撃を前向きに活性化させる。ハイプレスやプレスバックなど守備にも献身し、ときにロングスローやプレイスキックも任されるなど担うタスクは幅広い。4ゴール4アシストという数字以上の貢献がそのプレーには認められた。
それでも、結果に対する希求は強い。「僕が決めていたらたくさん勝点を取れているのに」――自身の目標に届かず、チームも16位にとどまった昨季の反省を踏まえ、シーズンオフには自らキャンプを張って自主トレを行ない、またトレーナーにアドバイスを求めながら筋力の向上にも努めた。効果のほどはすぐに表れ、曰く、「自信が付いて、練習でも落ち着いてプレーできるようになっていた」と振り返る。
そうした準備のもとに臨んだ今季は、開幕当初からフィーリングがよかったという。実際、手応えは結果にも繋がり、第2節・サガン鳥栖戦でさっそく今季初得点を決めると、第4節・京都サンガF.C.戦でも巧みなトラップでマークをかわし、ゴールを射抜いた。
安定したパフォーマンスの背景には、初めてシーズンを通してJ1を戦った昨季の経験もあるようだ。「力の入れどころが分かってきた」とあるとき町野は語っている。
「常に全力でプレーしているけど、全力の仕方の違いというか、力を溜めておくところと、ゴール前やカウンターなど力を発揮するところの使い分けが分かってきた気がします」
目覚ましい活躍とともに欠かせないチームとしての歩み
(C)J.LEAGUE
ただ、早々にゴールを挙げ、悪くないスタートを切った一方で、ほんの2カ月前にはまだFWとして注目を集めるほどの数字を残してはいなかった。逆に言えば、町野の代表初選出は、この短期間で放ったインパクトがいかに強烈だったかを物語っている。
皮切りは第14節・ヴィッセル神戸戦だった。こぼれ球に詰め、また自らのボール奪取をゴールに結んで勝利に貢献すると、続く川崎フロンターレ戦でもセットプレーとカウンターから2得点を挙げて連勝に寄与した。翌節のセレッソ大阪戦は0-2で敗れるも、第17節・FC東京戦と第18節・京都戦で再び連続ゴールを仕留め、チームを勝利へと導いた。5試合で6得点を叩き出し、J1得点ランクでも計8得点と、日本人ではFW上田綺世に次ぐ2位に躍り出たのだった。
目覚ましい活躍にはもうひとつ、チームとしての歩みも欠かせまい。プレシーズンから仲間と日々弛まず取り組んでいる「繋がり」は試合を重ねるごとに増し、くだんの京都戦のゴールシーン然り、個々の動き出しや献身が有機的に絡み合い、相手を崩す場面や得点の可能性を高める形が数多く作り出されている。
だからこそ町野は言うのだ。「ひとりでサッカーをしているわけではないので、みんなに感謝しながらやりたいと思っている」と。
「全力でぶつかっていきたい」
去る13日、EAFF E-1サッカー選手権2022決勝大会に臨む日本代表が発表された。代表初選出に寄せたコメントもまた、らしい。
「湘南で積み上げてきたものを、すべて発揮してこようと思っています。これまで自分に関わってくれた方々に感謝の気持ちを忘れず、自分らしくプレーしようと思います」
第19節・名古屋グランパス戦で見舞われたケガも大事に至らずに済んだようだ。大会前最後となる先日のアビスパ福岡戦ではスタメンに名を連ね、試合後には、「レベルの高い選手がたくさんいるなかで自分がどれだけできるか。全力でぶつかっていきたい。気持ちとしては楽しみのほうが強いです」と声を弾ませた。
経験の一つひとつを糧に辿り着いた町野修斗の新たな挑戦、キックオフはまもなくだ。
文・隈元大吾
湘南ベルマーレに軸足を置いて取材執筆。サッカー専門誌や一般誌等に寄稿するほか、オフィシャルハンドブックやマッチデイプログラムなどクラブの刊行物の執筆に携わる。著書に『監督・曺貴裁の指導論~選手を伸ばす30のエピソード』(産業能率大学出版部)など。
町野修斗プレー集
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