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【コラム】約10年ぶりの代表復帰。怪我を乗り越え、絶望から這い上がってきた宮市亮がピッチを駆ける | サッカー日本代表

【コラム】約10年ぶりの代表復帰。怪我を乗り越え、絶望から這い上がってきた宮市亮がピッチを駆ける | サッカー日本代表DAZN
【日本代表・コラム】長らく怪我に悩まされ、日本へと戦いの場を変えたFW宮市亮は、横浜FMの地で一歩一歩前に進みながら復活を遂げた。そして今回、約10年の時を経て日本代表に復帰。EAFF E-1サッカー選手権では、サポーターの前でどんなプレーを見せてくれるのだろうか。
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EAFF E-1サッカー選手権決勝大会に向けた日本代表メンバー発表の場で、最も大きな“サプライズ”だったのは横浜F・マリノスに所属するFW宮市亮の招集ではないだろうか。

アルベルト・ザッケローニ監督時代の2012年5月に代表デビューを飾った際、宮市は19歳だった。だが、その年に2キャップを記録して以降は日本代表から遠ざかり、それから約10年の月日が経った。そんな宮市が今回、久しぶりの代表入り。世界を見渡しても、やはり10年のブランクを空けて代表に復帰するのは異例中の異例だ。

宮市にとっては苦難の10年間だった。度重なる負傷に苦しめられ、足首、肩、両ひざ、筋肉系など身体のあちこちに傷を負った。特に両ひざの前十字じん帯断裂は彼のキャリアに大きな影を落とし、それゆえにヨーロッパで長くプレーしながら、“終わった”選手と思われていた側面もあったはずだ。

日本に復帰した2021シーズンの後半戦も受難が続いた。

横浜FM加入後、初めてベンチ入りした2021年8月6日のガンバ大阪戦では、Jリーグデビューが期待されながらウォーミングアップ中に負傷してピッチに立てず。その後、復活に向けたチャンスを与えられた9月5日のJエリートリーグ・清水エスパルス戦では、前半のうちにイエローカード2枚を受けて退場処分に。なかなかきっかけをつかめないまま、Jリーグでは途中出場2試合41分間のプレーに終わった。

それでも、不屈の男はモチベーションを失うことはなかった。出番が少ない中でも地道に努力を続け、再び輝くための準備を重ねた。すると、2022シーズンに入って状況が劇的に変わる。

転機となった神戸戦

転機となったのは、Jリーグ初先発となった今年3月2日のヴィッセル神戸戦だ。宮市は「結果こそ出なかったですけど、自分なりのパフォーマンスを出すことができて、あそこがターニングポイントになったのは間違いない」と振り返る。右ウイングに入ったトリコロールの背番号17は、キレのあるプレーを披露して加入後最長となる62分間出場。この試合を境に出場機会が増え、4月末には自身初挑戦となったAFCチャンピオンズリーグ(ACL)グループステージ突破にも貢献し、徐々にチーム内で重要な存在となっていっく。

日本代表のカタールワールドカップ(W杯)出場が決まった3月末の時点では「自分は代表よりマリノスでのポジションを確立できていないので、まだまだやることがあると思います。まずはマリノスで活躍することを意識してやっていきたい」と、再びサムライブルーのユニフォームを纏う未来を描くことができていなかった。

ただ、少しずつ手応えが着実に成果となって現れてきたのがACLから帰国した後に行われた浦和レッズ戦だ。

「僕のストロングは左サイド」と語っていた通り、リーグ戦で初めて左ウイングとして先発起用された宮市は、別次元の躍動を見せる。この日の出来に関してはケヴィン・マスカット監督も「リョウはここまで本当にハードワークし続けて、手を抜かず、いつでもいい状態でパフォーマンスしてくれていた」と宮市のパフォーマンスを絶賛するほどで、19分にはカットインからのピンポイントクロスでFWアンデルソン・ロペスのゴールをお膳立て。30分にはロペスからパスを受けてドリブルに移り、カットインして難易度の高いコントロールシュートをゴール右隅に決めた。

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「自分が中に行ったり、縦に行ったりすることで対面する相手も迷うと思います。得点した場面も、中に行くか外に行くかという(選択肢のある)プレーでした」と自ら振り返るように、左ウィングでは右サイドに比べて「仕掛ける」プレーの幅が広くなる。また、ゴール前へ鋭角に入っていった際には右サイドからのクロスに得意な右足で合わせることもでき、主にFW水沼宏太のクロスなど右サイドからのチャンスメイクが多くなるマリノスにおいて、アシストでもゴールでも目に見える結果を出しやすい環境が整った。

現状はベンチスタートの試合も多いが、7月2日の清水エスパルス戦と7月6日のサンフレッチェ広島戦で途中出場から2試合連続ゴールを記録したことからもコンディションの良さや得点感覚が鋭くなっているのがわかる。後半の残り少ない時間帯から出てくる17番は対戦相手にとって脅威以外の何物でもない。短い時間でも結果を残せる勝負強さや、爆発的なスピードという宮市にしかない武器の復活が、森保一監督に日本代表招集を決断させたのだろう。

「勇気づけられるようなプレーを」

2022_7_18_jleague_miyaichi(C)J.LEAGUE

膝に3度目の大怪我を負った2020年当時、「ドイツでこのまま手術したら『もしかしたら引退しないといけないかもしれない』と言われた。契約も切れる時期だったので、このままキャリアが終わってしまうんじゃないかという時があった」という絶望のどん底から這い上がれたからこそ、宮市の日本代表に対する思いや責任感は強い。

「サッカー選手としてこれだけ怪我をしたのは決して誇れることではなく、むしろ恥ずかしいくらいの負傷歴なんですけど、こうしてサッカー選手としてできているのも周りの皆さんの声援やポジティブな言葉があってこそ。それに対する感謝の姿勢は、サッカー選手なのでピッチの上で見せていくしかない。アスリート、小中学生、高校生の方で怪我に苦しんで、今サッカーができていない人も多いと思うんですけど、リハビリをし続けることでいつか報われる日が必ずくると思います。苦しい時もあると思いますけど、引退宣告されたくらいの選手が日本代表に返り咲くチャンスも続けていれば必ずある。そういう方々を勇気づけられるようなプレーをしていきたいと思います」

地に足をつけて少しずつ前に進んできた29歳は、ようやく本来の姿を取り戻した。10年ぶりとなる日本代表のピッチで宮市が芝を強く蹴った時、チームはゴールに向かって一気に加速する。

「自分に満足できなくて野心を持ちすぎた」ことで、緊張しすぎてファーストプレーで転んだA代表デビュー戦とは違う。

「自分のためよりチームのために何ができるかが何よりも大事。(試合に)出る、出ないに関係なく、このチームでE-1を勝ち取るために自分ができることを最大限にしたいと思います」

文・ 舩木渉 

1994年生まれ、神奈川県出身。早稲田大学スポーツ科学部卒業。大学1年次から取材・執筆を開始し、現在はフリーランスとして活動する。単なるスポーツにとどまらないサッカーの力を世間に伝えるべく、国内を中心に海外まで幅広くカバーする。

宮市亮プレー集

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