首位に立つ川崎Fを相手に奪った勝点3は、自分たちの戦いを改めて見つめ直したからこその意義ある勝利だった。
7月以降、湘南はなかなか勝ち星に恵まれていなかった。第20節のガンバ大阪戦に勝利したが、その後も3試合連続で勝利を手にすることができず。敗戦こそ少なかったが、「負けていないという言い方もできるけど、それほど手応えもなかった」とDF杉岡大暉は振り返る。
そして、迎えた第24節の北海道コンサドーレ札幌戦。湘南はホームで無残な敗戦を喫してしまう。立ち上がりからプレッシングが思うようにハマらず、前に出ていく意志も薄い。自分たちが大事にしているプレーを見失うような内容で大敗という結果を余儀なくされてしまった。
頭を抱えるような敗戦だった。一度は離れた下位との差も縮まった。このままでは再び降格圏が近づいてきてしまう。チーム全体に「どうにかしないといけない」という思いが募った。
だからこそ、もう一度、自分たちの戦いを見つめ直すための話し合いの場を設けた。お互いがお互いの思っていることを語り、意見をぶつけ合うことで何をしていかないといけないかを共有した。
「札幌戦は今まで良かったときにできていたことができていなかった。だから、自分たちのやるべきことにもう一回立ち返った」(MF石原広教)。
「あの大敗の時に自分たちを見つめ直さないといけないというのはあったし、順位も降格圏が見えてきたり危機感もあった。みんなそういうところでモチベーションを高めて、もう一度、挑もうという気持ちがあったと思います」(MF茨田陽生)
札幌戦での大敗を経て
(C)J.LEAGUE
その変化は前節の鹿島アントラーズ戦から見えていた。立ち上がりから相手に挑んでいく姿勢を前面に出し、運動量や球際で相手を上回る。先制点を奪われたとしても、そこで引き下がらず、自分たちのプレーを続けることでゴールを目指した。その姿にサポーターも一体となり、勝利こそできなかったが追いついてのドローという結果を得るにつながった。
川崎F戦も同様だった。日程的な面も有利に働いたが、前半からハードワークや運動量といった点で相手を上回りアグレッシブな戦いを披露。セットプレーから先制点を奪われたものの、後半にPKと後方からの崩しで2得点を奪って逆転勝利を飾った。
爽快な勝利。湘南にとって大きな一勝になったことは間違いない。
「本当に鹿島戦から自分たちのベースのところですね。前から行くところ、切り替えを早くする、ポジションを早く取る。そこをしっかりやれたからこそ今回も結果が出たと思う」と杉岡が話せば、アンカーのポジションで抜擢された茨田も、この勝利の意味をしっかりと受け止めている。
「鹿島戦でもインテンシティの高さを見せられたと思うけど、それが自分たちのスタンダードだと思っている。それを継続して出すことができたのが良かった。そこを続けることで、自分たちの良さ、攻撃の良さ、守備の良さが出てくると思う。引き続き、これをベースにやっていかないといけないと改めて思いました」
決して負けることがいいとは言わない。ただ、敗れた時に何を感じて、そこにどう向き合っていくか。敗戦から目を背けるのではなく、自分たちに何が足りていないかに焦点を置いたからこそ、この勝利があったと言える。
今季のリーグ戦も残すは8試合。自分たちのベースを取り戻した湘南は、ここから勝星を積み重ねていくことで残留争いに打ち勝っていく。
文・林遼平
埼玉県出身の1987年生まれ。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、フリーランスに転身。サッカー専門新聞「エルゴラッソ」の番記者を経て、現在は様々な媒体で現場の今を伝えている。
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