セリエAでは、今シーズン前半戦の最終戦となる第19節を前に、ユヴェントスが前経営陣の不正により15ポイントはく奪の処分を受けて10位へと後退し、大きな波紋が広がった。前節ではナポリに1-5と完敗したマッシミリアーノ・アッレグリのチームだったが、クラブを取り巻く厳しい状況に反発心を示し、アタランタと3-3の白熱のシーソーゲームを演じた。
10位からの再出発に奮起したユーヴェ
まずはアタランタOBのジャンパオロ・パッツィーニ氏が、ユヴェントス対アタランタについて『ダゾーン・イタリア』の「Sunday Night Square」で見解を示した。
「もしかしたらアタランタの方が少しだけ引き分けに満足しているかもしれない。美しいゴールやプレーがいくつも生まれ、最高に素晴らしい試合だった。両チームともに最後まで勝利を目指して戦っていた。特に(アンヘル)ディ・マリアと(アデモラ)ルックマンは並外れたプレーを見せた」
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ステファノ・ボルギ記者も躍動した2選手を称えつつ、ユヴェントスがこの試合で見せた闘志に注目した。
「ユヴェントスは現状に反発しようという意欲が強く感じられた。おそらく前半は間違いなく今シーズン最高の試合だったと言える。最もインテンシティが高く、激しい闘志が感じられた試合だったように思う。一方、アタランタとっては、チームの現状を証明する試合になった。今シーズンは移行期間のはずだったが、もはやいつも通りのアタランタだ」
続いてユーヴェOBのバルザーリも古巣のパフォーマンスを分析した。
「素晴らしいチームスピリットで、前へ進もうという意欲が強く感じられた。だが開始直後の失点をすぐさま取り返そうと前のめりになり過ぎており、ホームでの3失点はそのせいかもしれない。アタランタは再びスペクタクルなプレーを見せ始めた。前線の3人は優れたクオリティを示していたね。おそらく両チームともに勝利を狙えただけに、満足していないのではないだろうか」
ユーヴェは今後カップ戦に比重?
番組には、『Gazzetta dello Sport』のアンドレア・ディ・カーロ副編集長もゲスト出演。自身の見解を示した。
「ユーヴェは反発心を示し、本物の試合を見せた。これまでの他の試合よりも優れたパフォーマンスだったように感じる。今日のスタジアム内の雰囲気はいつもとは異なった。アッレグリがダニーロのゴールに歓喜していたが、今シーズン初めてのことだろう。ユーヴェから『この試合に負けたくない』という気持ちが伝わってきた。3-3の引き分けは妥当な結果かもしれない」
イタリア紙の記者は、さらにユーヴェの今後を見据えつつ、勝ち点はく奪により選手の起用法に影響が出ると予測。「これまではカップ戦で若手選手が起用されていたが、これからは逆になるかもしれない。ユーヴェが今シーズン、技術面で良い結果を残すにはカップ戦しかない。リーグ戦は極めて難しい状況だ」と指摘した。
するとバルザーリ氏は「どうなるのかわからない。裁判の結果を待ちたいところだが、覆るのは難しいと? そうなると、ユーヴェにとって恐るべきシナリオが待っているかもしれない」とこぼした。
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不正問題は他のチームにも波及?
番組に出演したスポーツ法の識者であるマッティア・グラッサーニ弁護士は、なぜ、処分の対象がユヴェントスだけであったのかに言及。「今回、見つかった証拠物件がユヴェントスに関するものだけだった」ためであることを解説した。
したがって「他の街の検察が捜査をおこなっている可能性を除外できない。捜査記録が別のタイミングでイタリアサッカー連盟(FIGC)検察局に報告されることは技術的に起こり得る」とし、今後、ユヴェントス以外のチームも処分を受ける可能性が否定できないことを示唆した。
持続不可能だったユヴェントスの財政
ボルギ記者が指摘するように「ユヴェントスの財政は持続不可能なものだった」。資金面で潤沢ではないセリエAのチームが健全な財政を目指すには、若手の育成を主軸とするアタランタのような運営が求められることになる。パッツィーニ氏が見解を示した。
「セリエAのチームに5000万ユーロ(約70億円)のトッププレーヤーを獲得する資金力はない。(フヴィチャ)クヴァラツヘリアや(ラスムス)ホイルンドのような若手選手を獲得して育成するなど、別の方針を模索しなければならない。アイディアがあれば、何かしら素晴らしいものを作り出せるはずだ」
だがユーヴェOBのバルザーリ氏は、古巣において若手主体のチーム作りは不可能であると主張している。
「ユヴェントスは、その伝統や重要性を考えると、毎年、優勝を目指さなければならないチームであり、アタランタのような方針は無理だ。ユヴェントスは順位表の頂点にいなければならないからね。ただユーヴェにはBチームもあるので、そこから(ニコロ)ファジョーリのような若手が台頭し始め、トップチームに招集されている」
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バルザーリ氏が見た苦戦する王者ミラン
続いて話題はスーペルコッパ・イタリアーナでインテルに敗れてタイトルを逃し、公式戦4戦未勝利となったミランに。バルザーリ氏が苦戦するステファノ・ピオリのチームの現状を分析した。
「現在のミランはエネルギーを失ってしまった状態だ。一部の選手を除いてコンディション不足だし、(フィカヨ)トモリや(ピエール)カルルら守備陣には昨シーズンのような自信が感じられず、ミスが散見されている。それにミランの特徴だった活力もない」
「こうした背景があり、ローマ戦の終了間際に1点を奪われると不安定さを露呈してしまった。元のミランに戻るにはメンタル面に取り組まなければならない。ただ正直言って、ミランの昨夏の補強がほとんど実らなかった影響もある。フィジカル面ではそれほど悪くは見えなかったが、昨シーズンのような闘志が感じられない」
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