今年に入り、公式戦わずか1勝で直近の7試合にわたって勝利から見放されているミラン。セリエA第21節のミラノダービーでは、指揮官のステファノ・ピオリがシステム変更により事態の打開を図ったが、その勇気もむなしく0-1と敗れた。
そんな中、ミラン指揮官が2戦連続でポルトガル代表の逸材FWラファエウ・レオンを先発から外した決断に懐疑的な声も囁かれた。だが『ダゾーン・イタリア』の「Supertele」に出演したOBのマッシモ・アンブロジーニ氏は反論する。
「ミランの前半の姿勢は、レオンがピッチにいたとしても大して変わらなかっただろう。もちろんポルトガル人FWも議題に上がるべきではあるが、フォーメーションよりも、ミランがピッチに臨んだ時のあの姿勢の方が心配だ」
孤立した控えGKタタルシャヌ
番組では、ミランの混乱を象徴するシーンとして、チーム内で孤立する第2GKチプリアン・タタルシャヌの姿に注目した。
ルーマニア人GKは試合開始直後のラウタロ・マルティネスのシュートを阻むなど、素晴らしいパフォーマンスも見せていたが、前半、ボールをキャッチした際に声掛けがなかったことを13歳年下のDFマッテオ・ガッビアに叱責されたほか、後半、エリア内に侵入したロメル・ルカクに対してロングボールが入った際、飛び出さずにチームメート6人から抗議を受けた。
『Gazzetta dello Sport』のアンドレア・ディ・カーロ副編集長は、そんなミランの状況に自身の見解を示した。
「すべてピオリの責任かと言われれば、そういうわけでもないだろう。だが間違いなくミランは自信を失い、ロッカールーム内の何かを失ったように見える。ただ、タタルシャヌには愛着がわいた。チームメートたちが、困難に直面している仲間にプレッシャーを与える姿は見ていてひどいものだ」
「ミランの問題はタタルシャヌ1人ではないだろう。スクデットを獲得した選手たちが昨シーズンを大きく下回るパフォーマンスしか示していない。控えのタタルシャヌは自分なりの努力をしている。それよりもディレクター陣が問題を把握していたのなら、もっと信頼できるGKを補強するべきだった」
続いてチーロ・フェラーラ氏も、ミランの現状を分析。ピオリのチームに小さなミスが散見されることを指摘した。
「現在はやや自信を失っているのだろう。戦術的な観点からもそれがうかがえる。大きなミスというより、小さな不注意が多い。例えばテオ・エルナンデスがボールを回収した場面では、彼は極めて高いレベルの選手であるにもかかわらず、単純なパスミスをし、相手にボールを明け渡している」
「また別のシーンでは、ミランはチーム全体がボールの位置よりも後ろに下がり、中央付近に選手が集中している。それにもかかわらず、インテルは中央でのパスに成功し、その後、サイドにボールを出すと、ミランの選手たちは全員ゴール前に張り付いてしまっている。そこで唯一、ペナルティエリア手前にいた(ニコロ)バレッラがシュートを放つに至っている」
さらにOBのアンブロジーニ氏も、転落が止まらない王者ミランの様子に首をかしげる。
「ミランのブラックアウトの要因は私にもわからない。これほど突然の垂直落下は想像できなかった。このチームは過去の苦境においても、常に自分たちのプレーやアイディア、チームスピリットで乗り切ってきた」
「だが今回のダービーの敗北は心配になる。昨シーズンのスクデット獲得を可能にしたあのクオリティや特徴がすべて影を潜めてしまった。ここから抜け出すのはそう簡単ではない。本当に複雑な状況だ」
(C)Getty images
モウリーニョのローマ出口戦略?
今冬の移籍市場では、ローマの中心選手であるニコロ・ザニオーロが移籍を志願。だがボーンマスから舞い込んだ好条件のオファーを拒否した末、ジョゼ・モウリーニョ指揮下の構想外となり、最終的にトルコの強豪ガラタサライへの移籍を承諾した。ディ・カーロ氏は、イタリア代表MFにとって今シーズン終了までローマに残留するのがベストの選択肢だったと主張する。
「ローマはザニオーロを売却することで、少なくとも現金化し、損害を限定的にとどめることができる。ただ、ザニオーロが期待していたクラブからのオファーは届かなかった。彼にとっては、このままローマでシーズンを終えた方がよかったのではないだろうか。この一連の流れのすべてが馬鹿げている」
続いてアレッサンドロ・アルチャート記者も持論を展開。戦略家モウリーニョが目的を果たすために、不満分子となったザニオーロを犠牲としたとの見解を主張した。
「モウリーニョの場合、すべてが戦略だ。彼はこの後に何が起きるかを予測している。時には物議を醸すこともあるが、ザニオーロのことに関しても、彼には常に目的がある。インテル時代には(マリオ)バロテッリとのこともあったが、最終的に彼はインテルであらゆるタイトルを獲得し、クラブの歴史をつづった」
「ローマでの目標は異なっても、こうした戦略をとっているのではないだろうか。そしてチームのためにザニオーロ1人を犠牲にした」
またディ・カーロ記者は、モウリーニョがトップチームの選手層に苦言を呈するなど、さまざまな不満を訴えていることに注目。ローマ指揮官退任へ向けたストーリーを練っている可能性を指摘した。
「モウリーニョは素晴らしいコミュニケーターだ。彼はローマのトップチームが『11人しかいない』と主張しているが、それは違う。若手もおり、全体的に良いチームだと考える。彼の主張は、行き過ぎた挑発のように見える」
「それにモウリーニョの振る舞いを見ていると、何が目的なのかわからなくなる。もしかしたら、ローマで居心地よく感じていないのかもしれない。さまざまな不満を口にすることで、出口戦略を準備しているのではないかと私は予感してしまう」
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