ディエゴ・マラドーナと言えばナポリ、ナポリと言えばマラドーナと言っても過言ではない。イタリア南部の街の路地を散策していると、自然と街の人々とサッカー史上最強選手の1人であるマラドーナ氏との神聖な関係を感じ取ることができるはずだ。なぜならナポリにとって、マラドーナはピッチの域を超えて誰よりも偉大な存在であったからだ。
世界で最も美しい街の路地で子どもたちが追いかけるサッカーボールを通じ、この街の威信を示すチャンスを与えたマラドーナ。ナポリにおいて“神の子”は、もはや文字通り、信仰の対象となっている。スタジアムのクルヴァに陣取るナポリのサポーターたちも、ナポリの街とチームの象徴であるディエゴ・マラドーナに捧げる旗を掲げている姿が見られる。
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ナポリ名所、マラドーナ壁画
ナポリの街には、マラドーナの像やシャツ、横断幕、絵などあらゆる種類の作品やグッズがあふれる。中でも最も代表的なのがマラドーナを壁面に描いたストリートアートと言えるだろう。もはやマラドーナ壁画は、すべてのサッカーファンにとっての巡礼の地となっている。
マラドーナに捧げられた祭壇は、ナポリ中心部のクアルティエリ・スパニョーリのエマヌエレ・デ・デオ通りにある。1990年にディエゴのアートが描かれてから、現在もナポリの街におけるマラドーナ信仰に火を灯し続けている。
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マラドーナ壁画の作者は?
元アルゼンチン代表の10番を擁するナポリがクラブ史上2度目となるスクデットを獲得した1990年、マリオ・フィラルディがこの作品を描き始めた。1986年まで主将を務めたジュゼッペ・ブルスコロッティから人間性と選手としての偉大さを認められて託された腕章を巻き、アッズーリのユニフォームを身にまとって歴史を刻んだマラドーナ。作品は、その彼がプレーする様子を再現しようとするものだった。
若きマリオ・フィラルディは、クアルティエリ・スパニョーリで三日三晩かけて作品を描き上げた。
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壁画の修復と加筆
2016年、マラドーナ壁画は経年劣化により、修復が必要な状態となっていた。すると地元出身の芸術家サルヴァトーレ・ヨーディチェは、作品に彩色を施して修復し、マラドーナ壁画をよみがえらせた。
2017年、アルゼンチン出身のアーティスト、フランシスコ・バソレッティが、作品の原作者の許可を得たうえで加筆修正し、“神の子”の描写をより写実的なものとした。
スクデットへのカウントダウン
もはやスポーツの枠を超えて信仰の聖地となったマラドーナ壁画は、ナポリの33年ぶり3度目のスクデット獲得を祝福するナポリっ子たちが集結する目的地の1つとなるに違いない。ルチアーノ・スパレッティのチームがスクデットの夢を与え続ける中、ナポリっ子たちは心のクラブの歴史的偉業に歓喜するために、街中へ繰り出す準備を整えつつある。
マラドーナの祭壇周辺では、これまでも数多くの愛のメッセージが届けられている。マラドーナが亡くなった2020年11月25日には、コロナ渦で厳しい時期であったにもかかわらず、多くのナポリっ子たちが足を運び、祈りをささげた。
ナポリと対戦する前日にディエゴの壁画を訪れ、オマージュを捧げる選手らも多い。現在も続くマラドーナとナポリ、ナポリとマラドーナの聖なる絆を感じ取ろうとしているのだ。
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文・ジュゼッペ・アンナルンマ/イタリア人スポーツジャーナリスト
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