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ナポリの33年ぶりスクデットとアルゼンチンの36年ぶりW杯優勝をもたらした謎の手「君はなんてことを見逃したんだ」マラドーナの盟友フェラーラ氏が贈る愛の手紙 | セリエA【PR】

CIRO FERRARA
ナポリの33年ぶりスクデットとアルゼンチンの36年ぶりW杯優勝をもたらした謎の手「君はなんてことを見逃したんだ」マラドーナの盟友フェラーラ氏が贈る愛の手紙 | セリエA【PR】(C)Getty images
【欧州・海外サッカーニュース】ルチアーノ・スパレッティ監督率いるナポリが33年ぶり3度目のリーグ優勝を果たし、『DAZN(ダゾーン)イタリア』で解説者を務めるOBのチーロ・フェラーラ氏が元同僚のディエゴ・マラドーナ氏に手紙を捧げた。

ナポリが日本時間5日のウディネーゼ戦で1-1と引き分け、セリエAあと5試合を残してクラブ史上3度目となるスクデットの獲得が決定した。33年前、アッズーリをセリエA王者へと導いたディエゴ・マラドーナ氏は、自身の名前を冠したスタジアムで繰り広げられるショーを天国から見守っていることだろう。

かつて“神の子”とともに2度、スクデットを獲得したOBチーロ・フェラーラ氏は、『ダゾーン・イタリア』のナポリ優勝特番に出演すると、ナポリ市民の代表としてマラドーナ氏への思いを綴った手紙を読み上げた。

Tifosi del Napoli in curva con una bandiera dedicata a Diego Armando Maradona, simbolo della squadra azzurra e della città campanaGetty

毎年、(ナポリが1986-87シーズンに初優勝を決めた)5月10日になると、我々ナポリ市民はスクデットへ敬意を表する。

それがナポリ市民にとってのマナーであり、一人ひとりがこの思いを捧げなければならない。

今シーズンは、とある冒険がスタートした。ディエゴ、休んでいる君の耳にも届いていたはずであり、黙ってはいられなかったはずだ。

クルヴァのナポリのサポーターたちは、このチーム、そしてカンパーニャ州の街の象徴であるディエゴ・マラドーナに捧げる旗を振り続けた。

そして待ちに待った瞬間がやって来た。これは歓喜のざわめきだ。見知らぬ人々と抱き合い、喜びを分かち合うことこそ、歓喜なのだ。窓や路地、広場や噴水の周りでは、また、ナポリの旗がはためいている。歩道も青色で埋め尽くされ、ナポリの路上では、みんなが歓喜の色に染まった。その足取りは、まるでドローンのように空中を浮遊しているかのようだ。

ナポリっ子たちが建物の間に張ったビニールテープは、風に吹かれてタンバリンのような音を立てる。ディエゴ、タンバリンの音を覚えているかい? ナポリ全体がいま、タンムリアータ(ナポリ伝統のダンス)を踊っているようだ。そう、青のタンムリアータをね。

こんなナポリを最後に目にした時から、実に33年もの月日が流れていた。33とはイエス・キリストの象徴でもあり、自己犠牲や絶対的な愛、苦しみや情熱を意味する。ディエゴ、我々がこうして聖界と俗界を一緒くたにしたとしても、君があきれることはないはずだ。君ならナポリの街のことはよく知っているだろうからね。まるで聖人に祈るように、君に祈りを捧げた街だ。

ナポリとは、いつだって思わぬ何かが隠されている。お祭りの日に憂鬱な気分になったり、失望の日に大笑いしたりする。“オ・パエーセ・ド・ソーレ(太陽の国)”にいると思ったら、雨で出迎えてくるような街なんだ。君がユヴェントス戦であの信じられないようなゴールを決めた時も、雨が降り注いでいたね。

Udinese-Napoli, Serie A TIMGetty Images

33年という月日は長かったが、その間、みんなが描いてきた夢の数はそれ以上、幾千、何百万にも及ぶ。夢見ることしかできなかった者もいれば、夢に手が届いた者もいるだろう。すぐに砕けた夢もあれば、まるでシャボン玉のように、突然、はじけて消えた夢もあるだろう。

ナポリは、まるで愛をつなぎとめるかのように、娘を抱きしめるように、おもちゃにしがみつくように、この夢を抱えて離さなかった。

もし君がここにいたら、私には何をすべきなのかがわかる。ディエゴ、いままで一度も言ったことはなかったが、ここ、ポジッリポの君の家で、こう言わざるを得ない。「いったい、君は何ということを見逃したのか」ってね。かつて(ナポリの)ポッジョレアーレ墓地の壁に書かれていたようにね。だが、その翌日、何者かによって「そんなこと、誰が言った?」と書き加えられていた。

確かにその通りだ。いったい誰がそんなことを言ったのだろうか。実はナポリとは、死者と対話する街なんだ。死者は決してナポリから離れない。死者とは、愛の記憶であり、我々につきまとい、変化を与えてくれる。彼らは導き手となる精霊として、別の形で生きている。ナポリの家庭に忍び込み、時には盗みを働く一方、時には何かを与えてくれるナポリの妖精ムナチェッロのようにね。

なあ、ディエゴ、信じるか信じないかは君次第だ。世の中には、説明のつかない謎に包まれた手が存在する。その手は、アルゼンチンを36年ぶりにFIFAワールドカップ(W杯)優勝へと導き、ナポリに33年ぶりのスクデットをもたらした。天国の君を愛する誰かの手の仕業に違いない。

君がいた頃、聖人の名を冠していたこのスタジアムは、現在、君の名前で呼ばれるようになった。一方で、君と一緒に汗を流したパラディーゾ(天国の意味)の古いピッチは放置されてしまった。まるで西部開拓時代の亡霊の街のようだよ。だが本物の“天国”は、そこかしこにある。ディエゴ、君のナポリは、ロケ地巡りや、太陽と海を求めてやってくる観光客であふれ返っているんだ。

だが今夜、人々は、君が描かれたあの壁画を、青に彩られたこの街を見に訪れている。説明のつかない何かを理解しようとしているんだ。愛の記憶が我々に語りかけ、我々を惹きつけて離さない。ディエゴ、このナポリからの手紙を君に捧げたい。

最後にもう一度、ここを見下ろしてほしい。

今夜のパルテノペ(ナポリの別称)ほどに美しいものは存在しない。

文・チーロ・フェラーラ/元イタリア代表DF。ナポリOBで1986-87および1989-90シーズンにディエゴ・マラドーナ氏とともにスクデットを獲得。現在は『ダゾーン・イタリア』で解説者を務める。

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