P...IOLI(ピオリ)
セリエA開幕時のミランの目標は、数カ月前に獲得したばかりのセリエA王者のタイトルを守ることだった。だが連覇とは、優勝するよりも難しいものだ。
今シーズンの補強は大当たりせず、シーズン終了後、オーナーであるレッドバード・キャピタル・パートナーズのジェリー・カルディナーレ氏は、パオロ・マルディーニTD(テクニカルディレクター)とフレデリック・マッサーラSD(スポーツディレクター)に別れを告げる決断を下した。こうしてミランの歴史の一部がミラノを去った。
今年1月の恐ろしいほどのミランの迷走ぶりは、選手たちの自尊心に傷跡を残した。UEFAチャンピオンズリーグ(UCL)およびリーグ戦でナポリに勝利を収めたものの、約20年ぶりのUCL準決勝の舞台では、インテルを相手に不完全燃焼となり、敗退に終わった。
必要な補強を得ることなく、UCLベスト4とリーグ戦4位の成績を残したステファノ・ピオリは、今後も指揮官の座にとどまることになる。来シーズンも彼を中心に再スタートを切ることになるだろう。
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Q...UAGLIARELLA(クアリャレッラ)
40歳のファビオ・クアリャレッラは、 リーグ戦通算182ゴールをマークし、涙の中でセリエAでの物語を締めくくった。限りない才能で並外れたキャリアを築いたクアリャレッラ。袖を通したすべてのユニフォームに対する愛情を示してきたが、世界で最も美しいユニフォームを誇るサンプドリアにおいて、その最高潮に達した。
ジェノヴァのクラブがドラマチックなシーズンを過ごす中、カピターノは古巣ナポリのスタディオ・ディエゴ・アルマンド・マラドーナで行われた最終節でまたしてもゴールを決め、ファンを感動で包んだ。ナポリ出身のFWがウォーミングアップを開始してからピッチを去るまでの間、スタジアム全体が、彼に愛情を注ぎ、彼がカルチョに残してきた功績のすべてをリスペクトしているようだった。
クアリャレッラは、降格したサンプドリアとともに、セリエBで再スタートを切ることに意欲を見せている。
R...OMA(ローマ)
UEFAヨーロッパ・カンファレンスリーグを制覇した翌年、ジョゼ・モウリーニョ率いるローマは、再び欧州カップ戦の決勝の舞台に立った。だが今年は、UEFAヨーロッパリーグのトロフィーの前に、セビージャが立ちはだかった。
パウロ・ディバラは歯を食いしばって先発出場を果たしたが、90分間を戦うことはできなかった。延長戦でも決着がつかず、長時間にわたった試合はPK戦で勝負がついた。つらい失望を味わうことになったが、胸を張るべき敗戦だった。
昨年12月にFIFAワールドカップ(W杯)カタール2022で世界王者に戴冠したディバラに対し、ネマニャ・マティッチが投げかけた「これがフットボールだ」との言葉には、ローマのサポーターが抱く感動と同様に、何か不滅のものが感じられた。
S...PEZIA(スペツィア)
ヴィンチェンツォ・イタリアーノおよびチアゴ・モッタ指揮下において、2シーズン連続でセリエA残留に成功していたスペツィアだが、来シーズンは再びセリエBへと戻ることになった。それもシーズンを通して常に下位だったヴェローナとのプレーオフに敗れ、最も苦々しいセリエB降格となった。
その清算をしなければならないのは、おそらく過度な野心によりルカ・ゴッティを解任したオーナーのプラテク一族だろう。スペツィアは2月中旬まで、降格圏と7ポイントの差を維持していたが、レオナルド・センプリチへの指揮官交代という思い切った選択に出た結果、ミラン戦では勝利を収めたが、その後は下降をたどり、最も重要なPOへ9人の選手を欠く中で臨まなければならなくなった。
T...ORINO(トリノ)
イヴァン・ユリッチ率いるトリノは、昨シーズンと同様に10位でフィニッシュしたが、前年と比較し、3ポイント多く獲得しただけでなく、新たな収穫もあった。チームは今年1月以降、完成へと近づき、中でもDFアレッサンドロ・ブオンジョルノやFWアントニオ・サナブリアは、チームの付加価値へと成長した。
イタリア代表でもデビューを飾った前者は、カリスマ性を持った守備のリーダーとなり、後者は、セリエAで初めて2ケタ得点をマークした。
トリノは今シーズン、最も誤審に泣かされたチームでもあったが、シーズン終盤のアウェーでの4試合をクリーンシートで勝利を収め、クラブ史上初の成績を収めた。ユリッチは来シーズンへ向けて、主力の大量流出を望んでいないはずだが、今夏のメルカートの動向が多くを語ることになるだろう。Getty Images
V...ENOM VICARIO(ヴェノム・ヴィカーリオ)
エンポリで活躍した26歳GKグリエルモ・ヴィカーリオは、今夏の移籍市場を賑わせるホットな名前となるかもしれない。勤勉で才能にあふれ、継続的にパフォーマンスを示したエンポリGKは、ビッグクラブへとステップアップする運命にあるはずだ。
彼に限らず、模範となるべきイタリア人GKが本当に多く戻ってきた。ヴェローナを降格の危機から救ったロレンツォ・モンティポや、ナポリのアレックス・メレト、ラツィオのイヴァン・プロヴェデル、モンツァのミケーレ・ディ・グレゴーリオ、レッチェのヴラディミーロ・ファルコーネらがスーパーヒーローの活躍を見せた。
W…INNER(勝者)
最終節よりも1カ月早い5月4日にウディネで33年ぶりの悲願のスクデット獲得を決めたナポリ。だが、クラブの歴史を刻む3度目のリーグ優勝を祝うお祭りは、ナポリ市内で終わりそうもない。情熱的なナポリの街は、夏の間も熱狂に包まれるだろう。Getty Images
X(バツ)
今シーズンの落第者を振り返ってみよう。まずは、前経営陣によるスキャンダルに見舞われたユヴェントス。勝ち点剥奪などの処分は、マッシミリアーノ・アッレグリのチームのシーズン全体を揺るがすことになった。
続いてミランの昨夏の補強の目玉であるシャルレ・デ・ケーテラーレ。パオロ・マルディーニは、彼の移籍金をはるかに上回る代償を払うことになった。さらにローマでリーグ戦無得点に終わったアンドレア・ベロッティも落第。また、ガブリエレ・チョッフィやマルコ・ジャンパオロ、マッシミリアーノ・アルヴィーニ、ゴッティ、ダヴィデ・ニコーラら指揮官勢も不合格と言えるだろう。
スポーツに対する情熱とは無縁の人種差別がスタジアム内においてあまりにも多く発生したことにも“バツ”をつけるべきだろう。ドゥシャン・ヴラホヴィッチやロメル・ルカク、ユリッチらが人種差別の矛先となった。
Z...LATAN(ズラタン)
“神”ことズラタン・イブラヒモヴィッチとの別れは、驚きであり、感動であった。ミランはホームで行われた最終節でヴェローナに勝利を収めたが、スポットライトが向けられた先はズラタンだった。サンシーロのサポーターが歌うチャントに見送られ、41歳のイブラヒモヴィッチは、カルチョに別れを告げた。
ミランFWは、周囲に多くを与えた一方で、幸せや愛情を受け取った。だが、またいつかどこかで、彼の姿を目にするはずだ。Getty
文・マリア・ピア・ベルトラン/ダゾーン・イタリア記者&フィールドプロデューサー
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