勝てば世界、負ければ終幕。シンプルな決戦がやって来た。
15日に開幕したAFC U17アジアカップはグループステージの全日程を消化。いよいよノックアウトステージに突入している。その初戦となる準々決勝は25日と26日に行われ、日本は26日にオーストラリアと対戦する。
「これまでで一番大事な試合になる」
そう言ったのはFW名和田我空(神村学園高)だが、このカードの意味付けは単なる準々決勝ではない。この試合に勝てばアジアの上位4カ国に与えられるU-17W杯の出場資格が与えられるのだ。逆に言えば、ここで負ければ予選敗退。世界大会を目指して準備してきたことが、道半ばで頓挫することとなる。
まさに、「一番大事な試合」だ。
グループステージを乗り越えて決戦へ
(C)AFC
グループステージの戦いも平坦ではなかった。初戦で優勝候補と目されるウズベキスタンと引き分けスタートになったこともそうだが、最大の敵は自分たちのコンディションだった。
「お腹を壊しちゃいました」
このフレーズを何度聞いたことか。第1戦のスターティングオーダーもコンディションの影響で指揮官の当初の構想から修正を余儀なくされたそうで、さらに初戦終了後にも複数の選手が体調不良を訴えることに。第1戦で出場時間の長かった選手ばかりがそうなったことを思うと、疲労で耐性が落ちたところを直撃した形のようだ。このため、ベトナムとの第2戦は最終的に4-0の快勝となったものの、メンバー編成に関しては綱渡りの要素もある采配を強いられていた。
そうやって第2戦を回避した一人である名和田は「海外遠征でお腹を壊したのは初めて」と言う。また、タイの暑さはFW道脇豊(ロアッソ熊本)が「初戦はビックリした」と形容したように、選手たちの想像以上だったようで、肉体的な消耗もかなり大きかった。
こうした流れも踏まえ、森山監督はインドとの第3戦であえて大胆なターンオーバーを敢行。まだ突破も決まっていない状況だったが、「この試合で出し切ってしまったら、絶対に準々決勝以降の試合で力尽きる」と選手を大幅に入れ替えた。ハーフタイムでは次戦での先発が予想される3選手を下げて温存するなど「一種の賭けだった」と認める采配は、結果的に後半の大混乱模様に繋がってしまったが、「選手に責任はない」と指揮官にとって混乱も覚悟の上での用兵だったことを認めている。
対戦相手のオーストラリアは第3戦まで突破が決まらぬ状況でタフな戦いを強いられているが、彼らには「日本が中2日だけれど、彼らは中3日」(森山監督)という優位性がある。このため、第3戦で温存を図ったと言っても、体力面のアドバンテージが生まれているわけではなさそうだ。
ただ、オーストラリアの選手にとってタイの暑さや生活面で感じるストレスの大きさは日本の選手以上に大きいとも考えられ、実際に試合中の様子を観ても適応し切れていない印象は否めない。日本が有利とまでは言わないが、少なくともディスアドバンテージはなさそうだ。
「選手のコンディションが上向いてきた状態で決戦に迎える」(森山監督)ことも間違いない。
押し出したいチームの強み
(C)AFC
「次はW杯を決める大事なゲーム。3試合でグループステージを突破するのと意味合いがまるで違う」
森山監督はそう語りつつ、対戦相手のオーストラリアについてはこう語る。
「3トップが攻め残りしてカウンターを狙ってくるので、そこには気を付けたい」とした上で、17番のFWネストリー・イランクンダを要注意人物として挙げつつ、「相手に合わせて守備の枚数を増やして残すようなことをすると、自分たちの良さを出せなくなってしまう」と、リスクを恐れて後ろ向きなサッカーになることも避けたい考えだ。
「相手がこちらに合わせてくるような形に持ち込みたいし、点の取り合いになっても構わないつもりで試合に入りたい」
積極的に攻めに出る姿勢を貫き、攻撃力というチームの強みを押し出したい考えだ。
また、MF杉浦駿吾(名古屋U-18)はハートの部分を強調する。
「どれだけ準備のところで気持ちを作っていけるか。普段の試合とは日本を背負って戦っていることでの気持ちの違いは強く感じているので、ここからの時間でより高めていきたい」
“世界大会出場権”という明確なモノを懸けての“大事な試合”。タフな攻防になるのは確実で、最後まで目を離せない試合となることだろう。
文・ 川端暁彦
1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開し、現在に至る。
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