敵地で迎えたドイツとの一戦。ピッチには今までと少しばかり違う上田綺世の姿があった。
話を聞けば、これまでとは試合前の心持ちから異なっていた。
「相手のCBが前に強い相手というのはわかっていましたし、ワールドカップのときからフィジカルレベルの高い相手だとわかっていました。その中で、ポジショニングを含めて、今の自分がどのくらい通用するのか正直楽しみでした。そういうモチベーションで迎えられたのが良かったと思います」
そんな思いを胸に抱いて臨んだ試合は、立ち上がりからアントニオ・リュディガーやニクラス・ジューレといったフィジカルに長けたCBを相手に、体をうまく預けてボールをキープすれば、前線からの素早いプレスでボールを回収。自身の武器である鋭い抜け出しにゴールへの嗅覚も相まって、22分には勝ち越しゴールを決めた。
ストライカーとして”得点を取る”というミッションを達成しつつ、現代のフットボールで求められる前線の選手としての役割も全うする。その姿にフェイエノールトでの確かな成長を感じさせた。
「もちろん、僕の武器は動き出しですけど、ああいう相手に長い距離を走って、背後を一発取って点を取るというのはちょっと現実的ではない部分もある。いま、ポストプレーを含めて、そうではないところもチームでトライさせてもらっている。今までの僕のプレースタイルよりもポストプレーしながら高い位置サイドへ展開して、そこから自分のゴール前での動き出しを生かす。加えて、そのポジショニングでああいう得点に繋げるというのが少し形になったのかなと思う」
ここまで日本代表では悔しいことばかりだった。カタールW杯本大会も予選もメンバー入りはしていたが、目に見える結果を残すことができなかった。「正直、自分が何か貢献したり、自分が何かできたという感覚や実感が全く得られなかった。僕はほぼいただけだったんです」と募らせてきた悔しさを口にする。
それでも、新天地で新たなプレースタイルに触れ、日々のトレーニングから積み重ねを欠かさなかったことで、確かな手応えを得るほどに成長している。
「今日の試合は違う感覚というか、違う実感を得られたというのは、自分の中で達成感が多少あります。ただ、やはりその分、悔しさがある。もっとチームを楽にできたし、2-1の時間が長くて、最後タケ(久保建英)を含めてフレッシュな選手がああやってゲームを終わらせてくれましたけど、もっと早く終わらせることができた。前半で決めていれば、チームも僕ももっとスムーズにプレーできたかなと思うと、そこはまだまだFWとして鋭さが足りないというのを痛いほど実感しています」
前半の決定機を決められなかったことを含め、最後には”まだまだ”という言葉が口をついた。前には進んでいる。だけど、もっと前に進める。上田はさらなる”前”だけを見据え、強豪・ドイツに勝利したスタジアムを後にした。
文・林遼平
1987年生まれ、埼玉県出身。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と、憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。
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