今年8月のロベルト・マンチーニ監督の電撃辞任を受け、翌月から元ナポリ指揮官ルチアーノ・スパレッティの下で再出発した欧州王者イタリア。直後に行われたEURO2024予選グループC第5節で因縁の北マケドニアと1-1と引き分けて苦戦したうえ、代表選手によるサッカー賭博問題も発生するなど暗雲が漂ったが、グループC最終節を終えて2位で出場権を確保した。
予選敗退の悪夢は終わったが…
前回のEUROで優勝を飾ったものの、直近のFIFAワールドカップ(W杯)では2大会連続で出場権を逃し、辛酸をなめたアッズーリ。そんな強豪国の薄氷を踏むEURO2024出場決定に、イタリア紙『Gazzetta dello Sport』は「悪夢の終わり」と歓喜した。
イタリア紙は、「2018年ロシアW杯や2022年カタールW杯のようにはならず、ようやく悪夢のプレーオフから解放された」と反応。「堅固なスウェーデンや90分間でたった1回のチャンスで我々を突き落とした北マケドニアはいない。イタリアは、正面のゲートからEUROへ足を踏み入れることができた」と綴った。
こうして「イタリアは、ドイツで行われるEURO2024において、2021年にウェンブリースタジアムで獲得したタイトルの防衛を目指すことができるのは確実」となり、「スパレッティ新監督は、自身のキャリアにおいて最も名誉ある冒険に挑める」。しかし、その道のりは険しい。
なぜならアッズーリは、前回大会の覇者であるにもかかわらず、予選での獲得ポイントは14と「大きく苦戦して2位にたどりついた」ことで、EUROの組み合わせ抽選のポット分けで最下層の第4ポットに入ることになったためだ。だが「それはパラドックスではない」とイタリア紙は解説。「EUROはかねてより、王者が出場権を得られるわけではなく、ピッチにおいてパスを獲得しなければならない」からだ。
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最弱者のポットへ転落した元エリートのW杯優勝国
イタリア紙も「当然、我々はドイツ大会における優勝候補ではない」と認め、「ゼロから再出発しなければならない」との見解を示しているが、「イタリアがEUROにおいて、またW杯においても、これほどの底辺に位置したことは、かつてない」のも事実だ。「これはワールドサッカーのエリート集団から脱落したことを認めなければならないサイン、屈服のサインなのかもしれない」とイタリアのカルチョの凋落を指摘した。
1等車や2等車にチケットは高額である一方、3等車での旅は「痛みと不安」が伴うものだ。それが「4等車での旅となれば、とんでもないことだ」とイタリア紙は主張。「我々は最弱者ポットへと真っ逆さまに突き落とされてしまった」と現状を悲観している。「W杯で4度の優勝を経験し、長らく第1ポットの定期券を保持していた我々のプライドが傷つけられた“痛み”」と、「12月2日の抽選会でどんなグループに入るのかを考えることの“不安”」があると強調した。
イタリア紙は続けた。「みんなは、W杯優勝国であるスペインやフランス、イングランド、ドイツなどとともに、橋の上で踊れるほどだと考えていたはずだが、最もレベルの低いチームと共に、プレーオフを勝ち残ったチームと共に旅をしなければならない」と現状を描写。「現王者として君臨し、立派な服装で4等車の車両に乗るイタリアはみんなの目に異質に映るだろう」と述べた。
それでも「乗車の際にミスがあったわけでもなく、陰謀があったわけでもないのは明らかだ。我々はこのすべてに値した」と転落した欧州王者の現実を受け入れるべきであるとの姿勢を見せた。
さらに近年におけるイタリア人選手の実力の低下に言及。今年のバロンドール候補は、ニコロ・バレッラただ1人であったうえ、昨シーズンは、インテルがUEFAチャンピオンズリーグで準優勝を飾ったが、「外国人選手による貢献が決定的だった」などと主張した。
したがって「このような背景でマンチーニが2021年にEUROで優勝したのは奇跡に値する」ものであり、優勝後のマネージメントに失敗して「すべてが壊れ、哀れな辞任に至った」前任者からチームを引き継いだスパレッティが「墜落まで1メートルの位置で機首を引き上げ、ドイツへと導いた」ことは、「極めて優秀だった」と分析した。
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第4ポットからの逆転は?
来月の抽選会で第4ポットに入ることで、「フランスやイングランド、ポルトガルやスペインと、スパレッティの道中には、いくつもの強豪」が立ちはだかり、「グループステージからビッグスターと対戦することは不可避」であるとみられる。しかしイタリア紙は、理想的な組み合わせを「ベルギー、アルバニア、スロヴェニア」とリストアップし、前向きな見通しも立てている。
「2006年W杯も、1982年W杯も、EURO2020も我々は優勝候補ではなかった。イタリアの優勝は、ほぼ常に下馬評に対するカウンター攻撃から生まれた」と指摘。「イタリアは常に、チームスピリットや結束、組織力やクオリティで勝利を収めてきた」うえ、「スパレッティはすでに伝統に革新を加えることができることを示してきた」ことから、開幕を迎える来年6月までの成長に期待を寄せた。「運命のプレゼントよりも、自らを信じるべきだ。我々4等車の乗客であっても、EURO2024で乾杯できるはずだ」と締めくくった。
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