クラブ内で育成し、仕上げた若き才能を下部組織から抜てきする時の感覚は、トランプカードの中からジョーカーを引き当てた時と似たような感覚なのかもしれない。トランプのような偶然性はないかもしれないが、これまで信じてきた選手の才能を、まさにこれから満喫しようとする者にとって、電気が走るような感覚は、トランプゲームの時と変わらないはずだ。
だが、いくら強いとはいえ、まだ若い選手に過度な期待を寄せれば、才能を潰してしまうリスクもあるなど、カルチョにおいて方程式は存在しない。そんな中、2008年3月10日生まれの15歳フランチェスコ・カマルダがカルチョのスカラ座で初めての舞台に立つかもしれない。日本時間26日のフィオレンティーナ戦の招集メンバーに名を連ねたカマルダは、もし出場すれば、15歳260日でセリエA最年少出場記録を更新することになる。
カマルダは、常に若くして各年代別カテゴリーを通過して成長のステップを踏み、すでに数年前から周囲を驚かせてきた。UEFAユースリーグでは、今月のパリ・サンジェルマン(PSG)戦においてオーバーヘッド弾をマークする輝きも見せた若き才能に、ミラン指揮官のステファノ・ピオリも、フィオレンティーナ戦の前日会見で言及した。
「才能に年齢は関係ない。そしてカマルダは間違いなく才能を持っている。運命は時としてチャンスを呼び込むものだ。若者が落ち着いていられるように、我々が上手くそばで支えてやらなければならない。フランチェスコは非常に若いが、性格は非常に成熟している。我々と一緒に過ごし、チャンスがあればチームに貢献できるかもしれないことを喜んでいる」
だがイタリアには、カマルダ以外にも光り輝く才能がいる。これから大きな期待を背負うことになるだろう5人の逸材を紹介しよう。
- ルカ・リパーニ
- リッカルド・パガーノ
- ダニエル・サメク
- ガブリエレ・グアリーノ
- ケヴィン・ゼローリ
ルカ・リパーニ…2005年生まれのサッスオーロの若き才能
ルカ・リパーニは、18歳のMFでサッスオーロのプリマヴェーラ(U-19)に所属している。早熟の逸材は、ディフェンスラインの前でのプレーを好み、優れた戦術頭脳を持っている。どのポジションを取るべきか、どのようにして取るべきかを常に把握していて、パーソナリティも持っているだけに、非常に興味深い選手になり得るだろう。彼の争奪戦には、ユヴェントスなど数多くのクラブが参戦したが、サッスオーロが素早く動いた。
サッスオーロに加入する以前は、ジェノアの下部組織で育ったリパーニ。指揮官のアルベルト・ジラルディーノは、彼を非常に気に入っていて、プリマヴェーラのトレーニングを指導していた際、彼に頻繁にアドバイスを行っていた。おそらく、だからこそ、リパーニは攻撃的MFでないにもかかわらず、20試合で5ゴールをマークすることができたのだろう。そのクオリティは、イタリア代表においても目を引くものがあった。リパーニは、U-19イタリア代表の一員として、U-19欧州選手権で優勝を果たした。
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リッカルド・パガーノ…ローマのトッティの宝
リッカルド・パガーノは、ローマのプリマヴェーラに所属するトップ下の選手で、あらゆるプレーで相手の守備ラインに圧力をかけることができる典型的な攻撃のジョーカーだ。ラインの間で非常に上手く動くことができ、ゴール前において準備が整っていないことはほとんどない。
パガーノは、2004年11月28日生まれの18歳。下部組織の若手を常に注意深く見守っているジョゼ・モウリーニョも、すでにパガーノの存在に気づいており、何度かトップチームに帯同させている。今シーズンはプリマヴェーラのリーグ戦4試合で2ゴールをマークしたパガーノ。だが、ポルトガル人指揮官がトップチームで彼に与えた出番はわずかで、我々はまだ彼の才能をほとんど目にしていない。
ローマ最強の背番号10番、フランチェスコ・トッティ氏は、長らく前から自身のスカウト会社を通じてパガーノを担当しており、おそらく彼をいかに成長させていくべきかを理解しているはずだ。パガーノ自身も、トッティ氏から「恐れることなく、自分にできるプレーをするように」と何度も繰り返しアドバイスを受けてきたことを明かしている。
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ダニエル・サメク…レッチェの次世代の新星
まもなくセリエAでお披露目されることになる注目の才能と言えば、レッチェのサメクに他ならない。2004年生まれのチェコ出身の19歳で、素晴らしいフィジカルに加えてテクニックも持ち、中盤のレジスタとして違いを作り出す。昨シーズンは、レッチェのプリマヴェーラで19試合に出場、3アシストを記録し、リーグ優勝に貢献した。
レッチェは2年前、スラヴィア・プラハから100万ユーロ(約1.6億円)でサメクを獲得したが、この移籍金は、パンタレオ・コルヴィーノTD(テクニカルディレクター)の若者に対する大きな信頼の証拠と言えよう。サメクは、すでに母国においてトップチームでデビューしており、UEFAカンファレンスリーグの舞台においても6試合に出場した。
ガブリエレ・グアリーノ…未来のエンポリの壁
イタリア派の守備陣が期待を裏切ることはほとんどない。実りの少ない時期はあるかもしれないが、常に最高の逸材を輩出してきた。その中の1人がエンポリのセンターバック、ガブリエレ・グアリーノだ。2004年4月14日生まれの19歳は、190センチの長身とフィジカルを生かしたプレーをし、空中戦に極めて強い。彼のマークをはがすことは難しいはずだ。今シーズンはトップチームに加わったが、エンポリが困難なシーズンを過ごしていることもあり、まだセリエAでの出場はない。
グアリーノは、U-20イタリア代表でデビューを飾り、アルゼンチンで行われたFIFA U-20ワールドカップ(W杯)に出場して準優勝を飾った。そんな彼は当然、エンポリのプリマヴェーラでロッカールームを共有したトンマーゾ・バルダンツィやヤコポ・ファッツィーニらの足跡をたどることを夢見ている。未来は彼の手中にある。
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ケヴィン・ゼローリ…カマルダを演出するレジスタ
期待されたほど、彼が話題になっていないのは、チーム内にカマルダのような15歳がいるからだろう。だが、ケヴィン・ゼローリは、ミランのプリマヴェーラにおける灯台のような存在だ。2005年1月11日生まれの18歳は中盤でプレーし、特に前線への飛び出しは、まるで彼より5年多く経験を積んだ選手のようだ。すでに自身のクオリティでピオリを釘付けにし、夏の合宿においても、ルメッザーネとの親善試合でゴールを挙げて脚光を浴びた。2列目でもプレーでき、フィジカルと技術的なクオリティが華麗に融合していて、型にはまらない8番の選手と言える。
ミラネッロにおいては、まるでルート・フリットのような髪型で、その外見からも見る者を惹きつける。彼のような選手がミラノの名門クラブで評価されているのは当然と言えるが、実は異なるキャリアを歩む可能性もあった。
優れた身体能力を誇り、カルチョだけでなく、機械体操や武術にも取り組んできたゼローリ。しかし最終的に、転がるボールを追いかけることに夢中になっていった。現在のミランのプリマヴェーラの灯台である彼は、セリエAの舞台を見据えている。
文・フェデリコ・サーラ/『ダゾーン・イタリア』ピッチリポーター、イタリア人ジャーナリスト
放送・配信予定
- ミラン vs フィオレンティーナ
- 配信:DAZN
- キックオフ:2023年11月26日(日)日本時間4:45
- 実況:福田浩大
- 会場:サンシーロ
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