才能に年齢は関係ない
かつてカルロ・アンチェロッティ率いるミランが輝かしいカルチョを繰り広げていた頃、FWフランチェスコ・カマルダの物語が始まった。ミランがアレシャンドレ・パトやマッシモ・アンブロジーニ、カカのゴールにより3-1でエンポリに勝利した翌日の2008年3月10日、カマルダがこの世に生を受けた。
その15年後、ミランの有望な若手FWがセリエAにおいて15歳260日でデビューを飾り、新記録を樹立するなど、当時は誰も想像しなかったはずだ。
15歳の少年がセリエAのトップチームへの招集を受けたら、どんなことを考えるのだろうか。フランチェスコ・カマルダは、これまでも各年代別カテゴリーを飛び級で昇格することに慣れていたはずだが、セリエAで早くもその答えを見つけたはずだ。
カマルダの歩みは、ミランが負傷続出などによる緊急事態に見舞われたことで、さらに速まった。ピオリは、イタリアサッカー連盟(FIGC)の特例適用を受け、ロンバルディア州地域委員会の承認を得たうえで、フィオレンティーナ戦の招集リストに彼の名を書き加えた。
カマルダのセリエA最年少デビューが懸かったフィオレンティーナ戦の前日、ステファノ・ピオリ監督は若き逸材に対する思いを明かした。
「才能に年齢は関係ない。そしてカマルダは間違いなく才能を持っている。運命は時としてチャンスを呼び込むものだ。若者が落ち着いていられるように、我々が上手くそばにいてやらなければならない。フランチェスコは非常に若いが、非常に成熟していて、我々と一緒に過ごし、チャンスがあれば、チームに貢献できるかもしれないことを喜んでいる」
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神童カマルダの歩んだキャリア
地元では、カルチョを始めてから500ゴール以上を挙げてきたことが語り継がれている。確かにその通りだが、この記録には、個の力が違いを作り出し、7人制の試合やプルチーニ(8~10歳)のカテゴリーに所属したシーズンの得点も含まれていること(1試合あたり5、6得点を記録することもある)を考慮することが重要だ。しかし11人制でプレーを始めてからも、満足のいく結果を残してきた。
2022年にU-15のリーグ戦25試合に出場し、22得点を挙げてミランの優勝に貢献。続いて年代別イタリア代表やU-17のリーグ戦においてもゴールを量産してきた。プリマヴェーラでのデビュー戦となったソルビアテーゼとの親善試合ではドッピエッタをマークしている。
プリマヴェーラ
下部組織出身のイニャツィオ・アバーテが指導するプリマヴェーラ(U-19)において、年上の選手たちとともにプレーすることは、もはやカマルダの日常となっていた。すでに若きセンターフォワードは、“宿命を背負った選手”、“フェノーメノ(規格外の選手)”、“純粋な才能”などと呼ばれ、重要な形容詞で飾り立てられ、偉大なレジェンドとの比較を受けてきた。
こうした野心的にも見える賛辞は、始まったばかりの彼のキャリアに対する期待や評判が膨らんでいく様子を指示しているものと言えるだろう。
今年9月16日、カマルダは、ミランのプリマヴェーラの一員として、サッスオーロ戦でリーグ戦初得点を挙げた。絶妙なタイミングをつかんだ“インザーギらしい”ゴールだった。
一方、UEFAユースリーグでは、ニューカッスルとのヨーロッパデビュー戦でドッピエッタ(1試合2得点)を記録。1点目はまさに本物のCFらしい動きからPKを奪取して決め、2点目は右足でボールをゴール隅に叩き込んだ。11月7日、今度はU-19パリ・サンジェルマン(PSG)を相手に殊勲を見せ、オーバーヘッドで素晴らしいゴールをマークした。
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セリエAへの挑戦
カマルダの名前は、プリマヴェーラへ昇格する以前の数カ月前からすでにファンの間で話題となっていた。これが若者にとってプラスであったのか、マイナスであったのかは分からない。それはのちに明らかとなるだろう。しかしフィオレンティーナ戦におけるトップチームへの初招集は、計画的な成長の過程ではなく、やむを得ない選択でもあった。
すでに、トレントとの親善試合において、トップチームの選手たちに交じってのプレーを経験していたカマルダ。だが当然、セリエAの舞台とはプレッシャーも異なるものだったはずだ。
それでも若者らしく思い切りが良い一方で、野心的でもあるカマルダは、以前からトップチームの練習に参加すると、地に足をつけるという難しい課題をこなしつつ、ジルーのようなカンピオーネ(王者)からプレーの秘訣や動きを学び取ろうとしていた。
そして11月25日のフィオレンティーナ戦において、ミランのトップチームでのチャンスが訪れた。ラファエウ・レオンやオリヴィエ・ジルー、ノア・オカフォーら攻撃陣を欠き、前線の人員がルカ・ヨヴィッチただ一人となる中、ピオリは下部組織からカマルダを招集。83分にヨヴィッチに代えて若き逸材をピッチに送り込んだ。
セリエA史上最年少出場記録となる15歳260日でのデビューとなった。夢が現実となった瞬間だった。
カマルダの特徴
カマルダは、テクニックに加えて強力なシュートや効果的なドリブルのスキルを持った真のFWと言ってよいだろう。また彼は、決してあきらめないハートを持った選手でもある。2018年、ウィーンで行われたミランとバイエルン・ミュンヘンの試合において、開始から15分ほどで足首を負傷し、途中交代を余儀なくされた。
しかし試合終了まで10分となり、チームが2点を追う中、カマルダは監督に対し、自身をピッチへの再び投入するよう要求した。そして若き至宝は、チームへ貢献しようという決意と意欲を、ドッピエッタと1アシストという結果で示したのだった。
フランチェスコ・カマルダには、すでに数年前からスポットライトが当てられてきた。アーリング・ハーランドとの比較は魅力的に映るが、若者はまだ大きく成長し、成熟を遂げる必要があるだろう。ミランのトップチームにおける彼の冒険はまだ始まったばかりだ。
だが、彼の将来は有望と言えるだろう。カカのような伝説に憧れて育ったカマルダがトレントとの親善試合で見せたプレーは、今後、バラ色のキャリアが待っていることを予感させるものでもあった。
カマルダはUCLでプレーできるのか?
わずか15歳でセリエAデビューを果たし、最年少記録を更新したカマルダ。ピオリの攻撃陣の緊急事態下において、UEFAチャンピオンズリーグ(UCL)に出場することはできるのだろうか。残念ながらそれはできない。UEFAの大会でプレーするためには、すでに16歳の誕生日を迎えてプロ契約を結んでいなければならないという条件を満たさなければならないためだ。
UEFAの大会ではFIGCとは異なり、特例が適用されない。ミランは、フランチェスコ・カマルダが16歳を迎える来年3月10日の誕生日を待ち、初めてのプロ契約を結ぶことを目指している。
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