前節で降格圏のヴェローナと引き分けて10位へと後退したラツィオ。マウリツィオ・サッリは、順位表での再浮上を目指し、首位インテルとの大一番へサプライズ采配を見せた。直近の試合で精彩を欠いていた不動の背番号10番ルイス・アルベルトをスタメンから外し、左インサイドハーフに日本代表MF鎌田大地を据えた。
試合前の予想を覆すサッリの決断には、『ダゾーン・イタリア』の解説陣も驚きを隠せない。スタメンが発表されると、ピッチリポーターのフェデリカ・ジッレ記者は「中盤でビッグニュースがある」と強調。「(ニコロ)ロヴェッラや(マテオ)ゲンドゥージと一緒にプレーするのはカマダだ。インテル戦の左IHにルイス・アルベルトはおらず、ベンチスタートになる」と告げた。
ステファノ・ボルギ記者も、ルイス・アルベルトに代えて鎌田を起用したサッリの選択に見解を示した。
「なかなかの衝撃だ。ルイス・アルベルトは、(セルゲイ)ミリンコヴィッチ=サヴィッチが抜けたラツィオの中盤において継続性を示す存在であり、唯一無二の学長のような存在だ。確かにルイス・アルベルトのコンディションに関する懸念は理解できる」
「一方でカマダのポジションに関しても議論する必要はある。これまでのところ、彼はほとんど実力を披露できていない。ルイス・アルベルトの地盤である左IHでは良いプレーを見せたことがあるが、今日はそのエリアでのプレーになる」
「またサッリは、首位との決定的な一戦において、完全に新選手で構成された中盤で挑むことにも注目したい。今夏の補強の評判はあまりよくなかっただけに、重要なメッセージと言える」
(C)Getty images
鎌田を抜てきしたサッリの意図は?
インテルOBのボルハ・バレロ氏は、デンゼル・ドゥンフリースが不在のインテルの右サイドに目を向けると、インテル右CBヤン・アウレル・ビセックと、マッチアップすることになるマッティア・ザッカーニや鎌田らのエリアを注目ポイントに挙げた。
「インテルがどのように右サイドを固めていくのだろうか。ザッカーニは、サイドに張っていることが多く、そこへカマダが上手く飛び出すとなると、ビセックはしっかりと守備の読みをしなければならない。このエリアの見どころが多くなるはずだ」
ボルギ記者も、スペイン人MFに代わって先発した鎌田とビセックのマッチアップに言及しつつ、サッリの意図を読み解いた。
「ビセックとカマダの間で通常とは異なる戦いがみられるはずだ。ビセックはフィジカルのクオリティを持ち、技術面も改善されたが、純粋な守備という点に関してまだまだ成長しなければならない。カマダはレジスタタイプではなく、ルイス・アルベルトと比較すると、より飛び出しを特徴とする選手だ」
「この采配には、前線の(チーロ)インモービレをサポートするという意味合いもあるように思う。カマダが1トップの位置に飛び出す場面も出てくるだろう。こうした点で通常とは異なる動きがあるのではないか」
『ダゾーン・イタリア』の中継で解説を務めた元インテル指揮官のアンドレア・ストラマッチョーニ氏も、「サッリがルイス・アルベルトをスタメンから外すという重要な技術的決断を下したことは目を引くものだ」と鎌田を先発に抜てきしたことに驚きを示した。
さらにストラマッチョーニ氏は、その決断の裏側を分析。サッリが敵将シモーネ・インザーギの意表を突いたことで「インテルは、(右ウィングバックのマッテオ)ダルミアンとビセックの2人で、これまでになかった(ルイス・アルベルト不在の)この状況に対応しなければならない」と指摘した。
そんなビセックに対し、ラツィオ指揮官はさらなる一手を考えていた。ピッチリポーターのジッレ記者は、試合中、サッリから鎌田に対し、ビセックがボールを保持した際にプレスをかけ、パスコースを封じてボールを奪うように指示を出し続けていたことを伝えており、23歳のドイツ人DFを狙いどころとするプランを立てていたことをうかがわせた。
元インテル指揮官は、ラツィオ指揮官のこの意図に言及。「フェデリカが話していたように、サッリはビセックに対してアグレッシブに行くように求めている。なぜならビセックは、ビルドアップに関して3バックのうちで最も能力が劣るとみられるからね」と結論付けた。
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鎌田らがインテルにとって脅威になるも…
『ダゾーン・イタリア』のダヴィデ・ベルナルディ記者は試合開始前、鎌田のポジションに言及。「カマダは右でプレーするか、左でプレーするかによってパフォーマンスにかなり明確な違いがあるように思う。カマダは左にいれば、ナポリ戦で挙げたようなゴールを決めることもできる」と左IHとしてプレーすることで得点力に期待を寄せた。
鎌田は前半、左サイドでザッカーニやインモービレと連携して攻撃を組み立て、10分にはピッチ中央からミドルを放つシーンも見られたが、アレッサンドロ・バストーニの壁に阻まれた。ストラマッチョーニ氏がこの1プレーを振り返った。
「ラツィオのスタートは素晴らしい。左サイドのザッカーニとカマダの軸がインテルにとって初めての脅威となった。まさにそのカマダは、インモービレに対して(シュートコースを)開けるようにアピールしているように見えた。ただ、上手くボールにミートできなかったがね」
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その後、55分にも鎌田に得点チャンスが訪れた。右サイドのゲンドゥージからエリア内のインモービレにボールが入ると、ラツィオ主将のパスはフェリピ・アンデルソンにパスは合わず、その背後にいた元フランクフルトMFがシュートを放ったが、惜しくも枠をとらえることができなかった。
日本代表MFは、65分にルイス・アルベルトと代わってピッチを退いたが、元インテル指揮官がそのパフォーマンスにやや辛口の評価を下した。「インモービレのポストプレーのシーンでのビッグチャンスを逃したことを踏まえると、合格ラインにほんの少し届かなかったと私は考える。カマダのキックはあまりにひどすぎた」と述べた。
一方、バレロ氏は「前半のカマダは悪くなかった」と日本代表MFに一定の評価を与えたほか、チーム全体のパフォーマンスにも言及。「ラツィオの立ち上がりは非常に良かったように思う。エリア内に侵入し、いくつもチャンスを作り出していた。ただ、インテルのようなゴール前のシニカルさが足りなかった」と述べた。
なおラツィオは、40分にアダム・マルシッチのバックパスのミスからラウタロ・マルティネスに先制点を奪われて劣勢に回ると、66分にはマルクス・テュラムに追加点を許して0-2と敗戦。勝ち点21ポイントのまま足踏みして11位へと後退した。
放送・配信予定
- ラツィオ vs インテル
- 録画配信:DAZN 12/18(月) 22:45~
- キックオフ:2023年12月18日(月)日本時間4:45
- 会場:スタディオ・オリンピコ
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