【コラム】もはや三笘薫の代わりではない。6戦6発の中村敬斗が披露したチーム随一の決定力 ｜ AFCアジアカップカタール2023

日本は初戦特有の雰囲気もあって難しい試合を強いられていた。11分に南野拓実のゴールで先制したものの、そこからギアが上がらず、逆にセットプレーから2失点。45分に南野が再びゴールを奪い試合を振り出しに戻したが、前半のうちに逆転するか、しないかでは大きく状況が異なるような展開だった。

そんな中、迎えた前半のアディショナルタイム。南野からボールを受けた中村は、中央へとカットインすると鋭く右足を振り抜いた。

「パスをもらった時に、振ろうかなと思っていた。力を入れ過ぎないで、重心を乗せて。体に染みついているものを出した」

綺麗な弧を描いたシュートは、見事にゴール右へと吸い込まれた。これで中村としては6戦6発。チーム随一の高い決定力をしっかりと示して見せた。

「練習はしてきたけど、打てばいいというものではないので、最近は量より質を考えている。頭の中で軌道を描くのが本当に大事。ああいうシュートを決められて良かった」

初招集となった昨年の3月と比べ、中村の立ち位置は結果を残し続けることによって大きく変化してきたと言っていい。当時は三笘薫との競争の中で「まだ比較対象ではない。ライバルという感覚もない」と口にしていたが、ピッチに立った試合では確かな自身の存在感を発揮。右で作って、左の中村が仕留める形が構築され、今では三笘の座を脅かすほどの活躍を見せている。

その根底には、やはり当時から語っていた強い意志がある。

「安牌なプレーをしてミスをしないようにするよりは、ミスになったとしても何かトライしていきたい」​​

結果への執着がプレーに現れている。「自分自身、打ったら入るみたいな感覚はない。今日みたいなゴールは代表ではなかった。5試合5ゴールはこぼれ球か味方のクロス。本当にラッキーだった」と本人は言うが、ゴール前の嗅覚や確かなシュート技術が無ければ、簡単にゴールは生まれない。結果を残して代表に生き残っていこうとする思いが、ゴールへと結実しているのである。

今大会、エースの一人として期待される三笘薫は、いつ復帰できるかわからない。だからこそ、彼が欠場する中、中村が結果を残し続ければスタメンの座を奪う可能性だってあるだろう。

「三笘選手が復帰しても、しなくても自分のやることは変わらない。出るか出ないかは監督が決めること。出たときに自分のベストパフォーマンスを出せればいい」

”三笘の代わり”ではなく、正真正銘のレギュラーを掴むためにーー。中村敬斗はさらなるゴールを求めて次の戦いに挑んでいく。

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