現在、『ダゾーン・イタリア』で解説者を務めるマトリ氏は、現役時代にセリエAを舞台に活躍。ラツィオでリーグ戦22試合に出場して4ゴールをマークしたほか、ミランにおいても16試合で1ゴールを記録している。またラツィオの一員として臨んだヨーロッパリーグ(UEL)では2得点を挙げているほか、ミランではチャンピオンズリーグ(UCL)出場経験も持つ。
そんなラツィオとミランをよく知る元イタリア代表FWが、今週末に直接対決を迎える古巣について語ってくれた。
下部組織を過ごしたミラノへのほろ苦い復帰
シーズン中のチームの成績は、サポーターの行動にも大きく影響するものだ。残念ながら私がミランに復帰した6カ月間というのは、あまり恵まれたシーズンとは言えなかった。あの年(2013-14シーズン)はUCL予選への出場権を獲得し、大きな熱気に包まれていた。だがその後、1月に指揮官の(マッシミリアーノ)アッレグリを解任されたシーズンでもある。
私が加入した時のサポーターの反応は不思議なものだった。移籍が決まる前から、「マトリ、ノー・グラッツィエ(結構です)」と書かれた横断幕が掲げられていたが、サンシーロで行われたミラン対PSVの試合前のお披露目では、あれは私個人に対する反対ではなかったとの主旨を説明された。サポーターたちは、前線よりも中盤や守備陣の補強をするべきだと考えていたようなんだ。だがこうしたことは、大きな影響を与えるものだ。
だからこそシーズン中の成績は、選手にも大きな影響を与えることになる。正直言って、私は上手く受け止められなかった。ミランは大好きなクラブだったので、復帰することは私の夢だった。大きな期待を膨らませて古巣に戻ったが、私はそれに見合う実力も示すことができなかった。
対照的なラツィオでの歓待
ラツィオでのデビュー戦は最高だった。私は(2015年9月の)ウディネーゼ戦の試合終了30分前に(アントニオ)カンドレーヴァに代わってピッチに入ると、ドッピエッタ(1試合2得点)を記録して、2-0の勝利に貢献したんだ。驚くような一日だったよ。
私がラツィオに加入したのは、チームが0-4でキエーヴォに敗れた直後とあり、最高の名刺代わりになった。正しいスタートを切ることができれば、その後の勢いも変わってくる。あの頃、過ごした日々には愛着を感じている。
ミランもラツィオもサポーターは非常に熱気がある。だがラツィオのファンの方が、終わったばかりの試合について話をしたり、次戦を話題にしたりと、毎日24時間、絶えず試合と向き合っているように思う。ミラノでは、特に試合前夜が盛り上がる。またローマの街では、ラツィオとローマの間のライバル意識が日頃から感じられる。どちらの順位が上かを比較し、絶えず間接的なダービーが繰り広げられている。
古巣での特別な出会い
ミラノでは、(クリスティアン)ブロッキとの素晴らしい思い出がある。当時、17歳だった私のことを可愛がってくれて、トップチームにも連れて行ってくれた。私を信頼してくれたことをありがたく思っている。
あの頃のミランに入り、イタリアのカルチョを代表するバンディエラである(パオロ)マルディーニを間近で見られたなんて、特別な体験だった。私にとって今でも記念碑のような存在であり、唯一、畏敬の念を抱いている人物だと思う。
ラツィオでは、(イグリ)ターレとのやり取りを思い出す。まだ加入して間もない頃、練習中に彼がやって来て、「君が引退した時は私の下で働いて欲しい」って声を掛けてくれた。実際、私が現役引退を迎えた時、最初に連絡をくれたのがターレだった。
彼ほどの優秀なディレクターから気に入ってもらえるなんて本当にうれしかった。ピッチ外での私の人間的な価値を評価してくれたのだろう。ラツィオでプレーしたことは素晴らしい経験だったし、私の成長につながったと思っている。
OBが見た今季のミランとラツィオ、直接対決の行方は?
(マウリツィオ)サッリは、ラツィオを自身のプレースタイルへと変えることに成功した。ルイス・アルベルトや(セルゲイ)ミリンコヴィッチ=サヴィッチを見ても、サッリのアイディアが定着しているのが分かる。チームは現在、サッリの頭の中でコントロールされていると言えるだろう。
(チーロ)インモービレも変化に適応し、相変わらずゴールを挙げて決定力を示している。4バックもそうだし、ラツィオでは今シーズン、多くの変化があった。だからこそ現在の順位を見ても、今シーズンの成績は前向きにとらえるべきだろう。
一方、ミランについては、若手選手の評価を高めた(ステファノ)ピオリの手腕は並外れていたと言える。昨シーズン、議論の的となっていた(サンドロ)トナーリは主力へと成長し、(ラファエウ)レオンも覚醒した。若手選手たちの再評価を行ったことが実りをもたらし、リーグ首位まで浮上することができたと言える。
彼らがクオリティを発揮できたのは、ピオリが穏やかな雰囲気を作り出したおかげでもある。だがこの若者たちも、最高のシーズンの担い手だ。 (C)Getty images
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